料理と漫画で本格的日韓食文化に親しむ 韓日文化交流の現場で

「会話と食事」は相互理解の要

私は昨年5月、国際交流基金ソウル日本文化センター(The Japan Foundation, Seoul)
に着任した。1970年代後半から約30年、4回の韓国駐在を含め日本と韓国を往来し、主として国際ビジネスの現場から韓日関係を継続してウォッチして来たが、最近つくづくと「会話と食事」が両国の相互理解・相互信頼関係増進の【要】ではないかと感じている。私自身元来が日本の総合商社マンであり、「会話と食事」が趣味でもある。昨年着任早々の8月にソウルで交通事故にあい、この両方を禁じられた2ヶ月の間は、本当にもどかしい毎日であった。

さて、投資・貿易といった商談の場でも、文化・学術交流の場でも、2~3時間経てば必ずCoffee Breakがあり、半日経てば通常当事者間で会食・パーティーが開催される。それらは決して「単なる気分転換」だけが目的ではなく、重要な本商談・本交流そのものの一部であると思う。本商談・本交流では表に出ず、世話役に徹していた人たちも参加して、会話と食事が行われる。そこでは相互理解のための「言葉」や「通訳」の重要性が再認識され、更に双方の「立場や考え方」の違いも、関係者に幅広く再認識される。様々な話題が飛び交い、双方の伝統文化・大衆文化・企業文化・生活文化などの経験が、コミュニケーションの基本となって彩を添える。そして食事が進むにつれ、互いに楽しみながら食文化の違いにも気づき、新鮮な疑問や関心が投げかけられる。

会場案内板の写真

「料理と漫画で本格的日韓食文化に親しむ」の会場案内板
韓国でのイベントタイトルは、「日本の『Mr.寿司王』韓国の『食客』に会いにいく」

韓日食文化交流での新たな発見

今年2月、国際交流基金ではソウルにおいて「韓日食文化交流」をテーマとし、日本料理講演会・料理講習会・韓日料理漫画家対談・料理漫画原画展示会・料理漫画映画やTVドラマ上映会など、一連のイベントを実施した。
料理、すなわち「食文化」は、人類誕生と同時に始まり発展してきた文化であり、民族・地域によって明らかな差がある。韓国と日本は地理的に隣国同士であり、様々な面で類似点・共通点を持っているが、互いに全く異なる点も持っている。食文化もまさに、その両面を持っていると言える。韓国や日本で犬や鯨の肉を食べるのは、世界的に見て例外かも知れないが、それもまた伝統として受け継がれて来た現実である。 今回の「食文化」イベントを主催したことで、私には2つの驚きと関心が生まれた。

辻調日本料理主任教授と畑耕一郎先生の写真

韓国の料理関係者に包丁さばきを披露する辻調日本料理主任教授・畑耕一郎先生(右)

微妙な味のわかる韓国人

1つは韓国人の味覚である。
今回、日本最大の料理学校である辻調理師専門学校(辻調)から、講師の先生方を招聘した。同校には外国からの留学生も多く、奨学金制度もあるとのことだが、その留学生の8割以上が韓国からと聞いて驚いた。更に驚いたのは、講習会をお願いした川本徹也先生から
「日本人を含む全学生の中で、微妙な味の違いが判別できるのは間違いなく韓国人です。」
という話を聞いた時だ。
私自身は長年韓国料理を食べて来た経験から、辛い韓国料理の味の中に甘いとも何とも言えない味の深さを感じていた。韓国料理は辛いだけと一般的に言われがちだが、今回のイベントを通じて私の味覚に、少しでも客観的なデータの裏づけが出来たのかもしれないと内心嬉しく思った。

キムチチゲとキムチの写真

寺沢氏を感激させたキムチチゲとキムチ
「ここのチゲは本当に旨かった。キムチもはじめて旨いと思った。」と寺沢氏

親子・兄妹の情が寺沢漫画人気の秘密

2つ目の関心は、韓日の受け止め方の違いである。
今回料理をテーマとした人気漫画『将太の寿司(韓国語翻訳出版名:Mr.寿司王)』、『ミスター味っ子(同:Mr.Macchan)』、『喰いタン(同:絶対味覚・食探偵)』などのヒットを契機に、韓日両国で固定的なファンを持つ漫画家の寺沢大介先生を招聘した。
先生の記者会見を聞いて驚いたことは、日本の少年漫画週刊誌に連載された『将太の寿司』は、「正義の主人公」が対立する相手に勝つ構図で人気を博した。ところが韓国では、同じ漫画『Mr.寿司王』の人気の秘密は、「親子の情」、「兄妹の情」だという。これを聞いて寺沢先生自身も驚かれたそうだ。
更に会見のあとで、「KTの李容璟(イ・ヨンギョン)社長が、漫画『Mr.寿司王』を全役員に読むよう指示することになったのはどうしてですか」とお尋ねすると、先生からは「顧客満足だったそうです」との意外な返事がかえってきて更に驚いた。李社長は社内の会議で「漫画の主人公が顧客の口に合わせるため、ゆるぎない成長を試みたように、われわれも顧客の求めるものを見出すため引き続き成長しなければならない」と檄を飛ばしたという。こんなところでも食文化と企業文化がつながっていたのだ。極めて興味深い話である。


交流とは相手に対する互いの【関心】が第一歩であると思う。また交流とは商談同様、互いに立場や違いを認識し、尊重することにより、現実の溝を埋める【継続の努力】でもある。そして一旦合意・達成・理解の【感動】が生まれれば、心の交流・信頼感に繋がる。それは時間がかかってもいつか必ず【蘇る】ものであり、互いの関係が確固たるものになっていくと確信している。


私は現在このように韓日文化交流の現場に身を置くことができて大変嬉しく感じている。そして、多面的な文化交流、多層的な人的交流という真の韓日交流が一層発展していくよう、ソウル日本文化センターの「役割」や「場」を更に考え、活用していきたいと考えている。 


本稿はKorea Foundationkoreana】日本語版 Summer, 2007掲載予定記事を編集したものです。Korea Foundationの了解を得て転載させていただきました。




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