学界のサポーターという仕事

 

ボストンの風景写真1

2004年11月2日。アメリカ大統領選挙の投票日の朝、私はボストンにいました。その日は、就職して初めての海外出張の旅程半ばで、ボストンの大学に所属する研究者を訪ねた翌日でした。この出張の目的のひとつは、私が所属する日米センター(CGP)の今後のプログラム開発にむけた情報収集のために、アメリカの社会科学系の研究者がどのような学外資金を必要としているのかを探ることでした。

CGPは、そのミッションとして、「日米両国の共同による世界への貢献」そして「日米関係の緊密化」を掲げています。知的交流課では、そのような高次のミッションを実現するため、大学や研究機関所属の日米の研究者が相手国との国際共同研究を行う際に、その研究活動費を支援する一般公募助成事業を運営しています。また、自主企画による各種セミナー・シンポジウムの開催も行っています。

CGPでは、これらの事業の実施の際に、「研究者へのサポート」という視点を取り入れています。例えば、アメリカの大学に所属する研究者は、大学への永年勤務ポスト(Tenure)を獲得するためには通常1冊、厳しい大学では2冊の単著の学術図書を、レビュープロセス(査読体制)のある出版社から出版している必要があります。そうすると、Ph.D.を取得してから数年以内の研究者は、大学で助教授など教職をもちながら、それに加えて図書出版のための調査・資料収集・分析・論文推敲などを行わなければなりません。このようなときに、大学の教職を休んで、その間の給与にあたる金額を、外部の団体から助成金として得られれば、どんなによいでしょう。そうすれば、研究に集中でき、より質の高い出版物を執筆することができ、ひいてはより卓越した研究者となる可能性が大きくなるわけです。大学のなかにも、サバティカルといって一時的に一定期間大学での職務を離れられる制度はありますが、それにはある程度の勤続年数が必要で、若い研究者にそのようなチャンスはほとんどないのが現実です。このような場面では、資金的な支援が求められています。

また、ある研究者は、日本の安全保障研究者を招き、自身の研究内容を発表するセミナーを日本で開催したい、と考えていました。このようなときには、CGPではたびたび国際セミナーを開催している経験から、どのような人たちに案内状を出すべきか、またどのような段取りで当日進めたらよいか、どのような時間帯なら日本の研究者は出席しやすいかなどを、微力ながら助言することも可能です。これなどは非金銭的な支援の一例と言えるでしょう。

したがって、私たちに求められるサポートの仕事とは、このようなニーズを見つけ出し、それに見合った機会や情報を提供することだと考えられます。私はJFに就職した時に、それ以前は学生だったのが、突然、研究者と対等に仕事をする非常に大変な仕事を受け持つことになり、立場が一変したと感じたものでした。しかし、実は学生から「学界のサポーター」への立場の移行は、実はあまり大きなジャンプではないことに気づきました。なぜなら、研究者の置かれている立場を知ることが、サポートにとって不可欠であり、学生のうちは無意識のうちに研究者に非常に近い場所からその日常を見ているからです。

大学職員、財団関係者、各種交流団体スタッフといったいわば「学界のサポーター」という仕事は、日本ではまだまだ認知されていないように感じます。この仕事の醍醐味をより多くの方々にお伝えできればと思います。

 

ボストンの風景写真2

追記:この選挙当日は朝はボストンで起床、早朝の便でワシントンDCへ行き、そこでも数件のインタビューを行い、夜の便でNYへ戻る旅程となっていて、期せずして選挙当日に米国東海岸の主要3都市をめぐることとなりました。皮肉なことに、9.11テロ事件以降、アメリカの空港はかつてないほど安全になっています。マンハッタンも深夜に1人で出歩いていても少し気をつければ東京と同じ程度の安心感を得ることができました。夜NYに戻ってから深夜近くになって、選挙開票速報を行っているCNNの公開スタジオを訪ねました。

 

 

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