タイの最新映画事情


ジャパンファウンデーション海外長期研修員として
タイのチェラロンコーン大学大学院に在籍中の吉岡職員より、映画情報が届きました。
2007年新春の話題作を2本ご紹介します。


『ナレスワン大王』『ファイナル・スコア』ポスター画像

ナレスワン大王 ©Prommitr Production /
ファイナル・スコア ©GmmThai Hub

『ナレスワン大王(仮邦題)』三部作
(英題:King Naresuan

絢爛豪華な歴史超大作 タイの歴代興行成績更新か
タイ・アユタヤ時代のヒーローを描いたスケールの大きい話題作。
第一部と第二部公開。

『ファイナル・スコア(仮邦題)』(英題:Final Score
タイ版ドラゴン桜 ?!
大学受験を控えた高校生の365日を追った異色のドキュメンタリー。
親との葛藤、先生へのプチ反抗、淡い恋。そして迎える合格発表の日。
見ているあなたも一緒に、ハラハラ、ドキドキ。

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『ナレスワン大王(仮邦題)』三部作(英題:King Naresuan

歴史超大作による2007年幕開け
吉岡 憲彦(よしおか のりひこ)


年末から年始にかけて、首都バンコクにおける連続爆弾テロ事件(死者3名、負傷者39名以上)で幕を開けた2007年のタイは、その後もテロの注意喚起が断続的になされるなか、映画界においては、タイのアユタヤ時代の英雄を描いた歴史超大作トリロジー『ナレスワン大王(仮邦題)』(英題:King Naresuan)の第一部と第二部が1月18日、2月15日と連続して劇場公開され、話題を呼んだ。
(オフィシャルサイト:http://www.kingnaresuanmovie.com/index_eng.php


『ナレスワン大王』の写真1

『ナレスワン大王』より ©Prommitr Production

監督は、ラーマ5世(現国王はラーマ9世)直系の王族監督であるチャトリーチャルーム・ユコン殿下である。日本の映画祭で過去に紹介された作品としては、『ホテルの天使』(74)、『象使い』(89)などがあり、社会派として知られた監督であったが、21世紀に入ってから、ロイヤル・プロジェクト(あるいは国家プロジェクト)による映画制作が目立ち、タイ映画界ではもはや誰も文句の言えない「巨匠」である。

2001年には、やはりアユタヤ時代の女傑を描いた『スリヨータイ王妃(仮邦題)』(英題:The Legend of Suriyothai)を制作し、タイの歴代興行成績ダントツトップとなる約4億8千万バーツ(約15億円/2003年の再劇場公開分も含む)を叩き出し、当時、大きな話題となった。今回の『ナレスワン大王』も、第一部だけで約2億1千万バーツ、第二部公開4日だけで7.7千万バーツの興行収入を記録しており、12月に公開予定の第三部と合わせると、『スリヨータイ王妃』の記録を超えるのは確実である。

通常、タイの映画界にあっては、1億バーツの興行収入をあげたら大成功だと言われている(タイの歴代興行成績第2位の『トム・ヤム・クン!』(05)で約1億8千万バーツ)ので、これらの記録がいかに尋常でないか、また、いかに国をあげたお祭り騒ぎであるかがよくわかる。奇しくもタイ南部を中心とするマレー系ムスリムと仏教徒の対立が激化しているなか、王族監督の演出による歴史映画(ビルマとの戦いを通じて「タイ族」が一致団結するという内容)が、エンターテイメントというオブラートに包まれた形で、メディアという拡声器に誇張された形で、タイ全国に流通し、イベント化されてしまうという現象に、タイにおけるマジョリティの暴力性を感じざるを得ない。


『ナレスワン大王』の写真2

『ナレスワン大王』より ©Prommitr Production

とはいえ、『スリヨータイ王妃』、『ナレスワン大王』とも、多数の専門家による時代考証を経たうえで制作されており、騎馬戦ならぬ騎「象」戦や、豪華絢爛な衣装(シンプルな袈裟も含む)、当時を再現した街の様子や建築様式など、見所の多い映画であることは確かである。ただ、残念なことに、いずれの作品も日本では公開されていない。

覚えていますか? 人生で最も一所懸命だった、あの頃のことを

年明けから『ナレスワン大王』第一部・第二部の話題で持ちきりだったところに、その間隙を縫うように劇場公開され、初週で打ち切られずに数週間奮闘したタイ映画がある。大学受験を控えた高校生の365日を追ったドキュメンタリー『ファイナル・スコア(仮邦題)』(英題:Final Score)のことだ。GTH社による配給で、いわゆる単館公開ではなく、バンコクだけでも40ヶ所以上あるシネマコンプレックスで一斉に公開された。
(オフィシャルサイト(タイ語のみ):http://www.finalscorethemovie.com/

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