バングラデシュのバンド・ブームとベンガル語論争

 

ダッカのCD・DVDショップの写真

ダッカのCD・DVDショップ

 

特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会
ダッカ事務所長 藤岡恵美子

バングラデシュの都市の若者の間では、今、バンド・ブームである。こちらでそういう言葉が使われているわけではないが、これはブームと言っていいと思う。ここ2~3年ぐらいの間に次々と新しいバンドが現れ、バンバンCDも出されているのだ。この状況には私もかなり驚いている。

アジアの最貧国に数えられ、国家予算の半分強を外国からの援助に頼っているバングラデシュだ。CDプレーヤーを持っていて、新しいCDが出たらすぐ買えるような若者が果たしてどれぐらいいるのかよくわからないが、ダッカのCD・DVDショップでは、欧米のミュージシャンのCDと共にダッカをベースにしたバンドのCDがいくつも並べられている。

こういったバンドは、アンダーグラウンド・バンドとかオルタナティブ・ロック・バンドとか呼ばれているが、べつに反体制的な歌詞があるわけではなく、去っていった恋人への想いや、夢を抱きながら人生の途中で立ち止まってしまった思いなど、普遍的な若者の気持ちを歌った歌がほとんどだ。雨や川がよく出てくるところにベンガルらしさを感じるが、歌詞を英語や日本語に置き換えてみたら、どこのバンドと言っても通用するような、国籍を飛び越えた感じの音楽である。

 

話題のアーチストたちのCDの写真

話題のアーチストCDいろいろ

数あるアングラ・バンドの中で、名実ともにトップを走っているのは、「BLACK」だ。ボーカルのジョン、ギターのジャハン、ベースのミラージ、ドラムスのトニー、ボーカル・キーボード等をこなすタハサンの5人のグループで、ペプシと契約したり、携帯電話最大手のグラミーン・フォーンがティーンエイジャーを狙った新パッケージの宣伝に起用されたり、チッタゴンでのコンサートの帰りにメンバー2人が交通事故にあったりと、何かと話題のグループである。

曲はハードロック調のものからアコースティックなバラードまであり、とくにボーカルのジョンの歌い方に特徴がある。ロック・ボーカリストとしてかなり上手いと思うのだが、よく聴かなければ歌詞がベンガル語であることがわからない。ベンガル語を英語的に変形させているとも言えるし、ベンガル語の歌詞を違和感なくロックに乗せることに成功したとも言える。私は個人的にはこの歌い方がけっこう好きである。

しかし、ここはベンガル語を守ることが独立のきっかけにまでなった国、バングラデシュ。おじさんたちの中には、若者の「英語化した」ベンガル語が許せない人もいるようだ。

英字紙『デイリー・スター』の投書欄では、先月からおじさんと若者の間でロックとベンガル語についての論争が繰り広げられている。おじさんが「最近のアングラ・バンドの若者が歌う歌のベンガル語の発音はまったくひどい。正しいベンガル語を話せないような輩には人前で歌など歌うなと言いたい」と投書すれば、若者は「最近の音楽をまったく理解していない古い世代にとやかく言われたくない」と反論。どこかの国にもあったような論争で、興味深く読んだ。かつて、サザン・オール・スターズが彗星のように現れ、桑田圭介がそれまで聞いたこともない形で日本語を音楽に乗せたときには皆衝撃を受けたものだが、ちょうどあんな感じかな。

 

バングラデシュのバンド情報がわかるウェブサイトはいくつかあるが、開設3年目のお誕生日を最近祝ったAmaderGaan.comがお勧め。 Amader Gaanとは直訳すればOur Music。話題のバンドへのインタビューや、アルバムの批評、音楽視聴コーナーなどがあり、前述のBLACKのビデオクリップ、“Off Beat”もダウンロードできる(ビデオの中でメンバーがやたらとペプシを飲んでいる。)ロケ地は見たところ、ダッカの高級住宅街、ダンモンディのよう。音楽と一緒にダッカの住宅地の風景も楽しめるので、ぜひお試しあれ。

ペプシやグラミーン・フォーンはこういった人気バンドを揃えたコンサートをダッカのみならずチッタゴンなどでも開催し、相当な観客を集めているらしい(なにしろダッカでの会場はスタジアムなのだ)。ペプシのニュー・イヤー・コンサートでは収益の一部が国内の問題に取り組むNGOに寄付されたという。

この国ももう皆が貧しいわけではない。バングラデシュ国内でお金をあるところからないところに流す仕組みを作っていく時だろう。そう書いていたら、今日の新聞に、国内発の携帯電話への音楽配信サービスの広告が。急速に変わりゆくバングラ現代都市文化からは目が離せない。

 

 

 

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