相手を認め、尊敬する心/災害復興の主役は

災害復興の主役は


大津波、ハリケーン・台風に続いて、パキスタンで大地震発生。こうした大災害は、特に貧しい人々の生活を直撃することを考えると心が痛む。今回の地震報道に関して、気になったことがある。四年前インド駐在中に発生した西インド大地震の時も同様に感じたことだ。
メディアは日本を含め外国から派遣されてきた救援チームの活躍にスポットライトをあてがちだ。こうした報道が繰り返されると、震災被害にあった地元の人々は皆、国際社会の救援を待つだけの無力な存在、援助物資を奪い合う無秩序な存在のように見えてくる。しかし、こうした構図には、ある種の先入観が隠されていないか。

実際には大災害に直撃されたとき、真っ先に立ち上がっているのは地元の人々なのである。西インド地震の際も、押しつぶされた建物の下にいる負傷者を救援するために駆け出してきたのは倒壊を免れた家に住む近所の男たちだったし、「コミュニティ・キッチン」と称する炊き出しを始めたのは隣村の主婦たちだった。彼らも地震で負傷したり、家を失った地元の被災者なのだ。

南アジアで長年活動し蓄積を積んだNGO「シャプラニール」は、災害に対して現地事情に詳しい地元のNGOとの連携のもとに実施することを緊急救援の原則にしている。
一人でも多くの命を救い、失われた日常を回復させるためには、国際支援は必要だ。しかし、これからの長い復興への道のりの主役は地元の人々であることを肝に銘じておこう。
(公明新聞10月26日コラム「にしひがし」掲載)

相手を認め、尊敬する心

インド、ケーララ州に伝わる世界最古のパントマイム様式、古典劇クーリヤッタムの来日公演が8月に行われた。クーリヤッタムの最大の特徴は、表情表現の豊かさである。優れた踊り手が目をかっと見開いた時、レーザー光線が発せられたかのような圧力を感じる。まさに神の舞いだ。

人類共通の文化遺産ともいうべきクーリヤッタムであるが、一度は消滅の危機にさらされていた。ところが今回の公演では優れた若い踊り手が育ち、確実にこの演劇様式が新しい世代に引き継がれていることがうかがわれた。公演終了後、演出家のヴェーヌ・ゴパール氏と抱き合って喜びを分かちあった。復興に私たち国際交流基金も関わったからである。

クーリヤッタムの名手の至芸を映像記録に残しつつ、インドやアジア各国の若者を集めて、その哲学、演劇技法を伝授する文化協力プロジェクトに資金援助を行ったのだ。5年前にケーララを訪問した時、85歳の名人は身体、気力の衰え目立ち、もう彼自身が演じることはないのではないか、と地元では囁かれていた。ところがプロジェクトの事前調査のために私がやって来たことを聞いた老名人は、鳥肌がたつほどの見事な演技を披露して、皆を驚かせた。「時代遅れ」とよばれ、顧られなくなっていた彼の芸の価値を、外国の文化交流機関が認めたことで名人は蘇えったのだ。

文化協力において重要なのは金ではない。相手を認め心から尊敬すること。これこそが最大の支援といってよい。(公明新聞9月2日コラム「にしひがし」掲載)

掲載コラム・バックナンバー


ページトップへ戻る