Rapt! contemporary art from Japan」第1回公開セミナーレポート

 

南後氏、三浦氏、北田氏の写真

左より、南後氏、三浦氏、北田氏

ベストセラー『下流社会』の著者、三浦展氏をゲストの一人として、「Rapt! contemporary art from Japan 公開セミナー」が開催されました。

これは、日本を伝えるとはどういうことか、「現代日本」をどのようにとらえるのかを考えさせてくれるイベントでした。

まずRapt! contemporary art from Japanについて少しご説明しましょう。これは2006年の日豪交流年にちなんで、オーストラリアで日本現代美術展を開催する企画です。現代美術を通じて『現代の日本』をオーストラリアの人々に紹介するのがその目的です。

Raptとは、「没入、夢中になる」という意味の英語。想像力の飛躍を狙って、展覧会のタイトルに選ばれました。この展覧会には、今までにない新しい試みがたくさんあるのですが、そのなかから、公開セミナーにつながる2点をご紹介しましょう。

第一は、日本の現代美術をオーストラリアに持って行って展示するという従来のやり方ではなく、現代日本のナマの現象を切り取ってオーストラリアに持っていき、現地の人々に「現代の日本」を感じてもらう。つまり現代日本について、日本、オーストラリア双方の視点を持たせた展覧会にしようというのです。

第二は、「現代の日本」を紹介するにあたり、「現代の日本文化とは何か」という問いを立て、造形美術だけでなく、建築、社会学、サブカルチャーにまで視野を拡大して考えていこうとしている点です。

 

南後氏、三浦氏の写真

左より、南後氏、三浦氏

今回のセミナーは、この二点を具体化していくプロセスとして実現しました。モデレーターは社会学者の北田暁大東京大学助教授。ゲストの三浦展氏は、パルコでマーケター(マーケティング専門家)を務めた経歴を持ち、マーケターの観点から、社会の消費動向や、サブカルチャーを研究しています。もうひとりのゲスト南後由和氏は、社会学専攻の大学院生。建築家の有名性やグラフィティの研究で知られています。

★グラフィティをよくご存知ないかたは、こちらをご覧ください。
グラフィティのカラー映像がたくさんあります。
http://10plus1.jp/archives/2005/11/29121410.html

若者、都市、メディアをキーワードに、現代の日本を明らかにしていこうというのが、セミナーの趣旨です。『広告都市・東京』の著書がある北田教授は、1970年代以降、高度消費社会の象徴的存在であった渋谷に「郊外」の論理をあてはめ、自身の渋谷への羨望と幻滅を語りながら、渋谷の変遷を通じて、現代の若者文化に迫る発言をしました。

これを受けて三浦氏は、マーケターの視点からの分析を披露。郊外ショッピングセンターのシンボル的存在であるイオンを軸に、六本木ヒルズはイオン的であると論じ、それと対極にあるのがフリマ(フリーマーケット)を含めたストリートカルチャーであるが、90年代以降、本来カウンターカルチャーであったストリートカルチャーが、体制化してきていることを指摘。現在はパッケージ(エリート)とパッセージ(フリーター)への分化が進んでいるという分析を示しました。

南後氏は、90年代初頭から台頭してきたグラフィティを通して若者文化を論じました。公共物にグラフィティを描く行為は、自分のデータを残すことであり、都市への帰属心、誰かとつながっていたいという若者たちの不安を示すものだと指摘しました。


この公開セミナーは、モデレーター、ゲストを変えて、あと2回行われます。これに加え、オーストラリアと日本のキュレーター(学芸員)との議論や対話、日本人アーティストをオーストラリアに滞在させて作品に結実させるアーティスト・イン・レジデンスプログラム、オーストラリアでのシンポジウムなど、新しい試みが続きます。

この成果が、9月から11月にかけてオーストラリア8会場で開催される展覧会の作品に反映され、カタログに結実することになっています。現代日本がどのような姿をとって現れるのか、楽しみにしたいと思います。

 

 

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