メキシコ人と読書

 

2004年11月にメキシコ第2の都市であるグアダラハラにおいて「グアダラハラ国際図書展」が開催された。同図書展は毎年開催されていて、基金は一年おきに出版文化国際交流会と共同で出展している。11月27日のオープニングには、ガルシア・マルケス、カルロス・フエンテス、フアン・ゴイティソロといったスペイン語圏の大物作家やスペインの文化大臣らが参加し、当国のテレビや新聞等のメディアでも大きく取り上げられた。毎年開催される大規模な図書展だが、昨年は中南米やアメリカを中心とした出展社数は合わせて1600近くに上り、期間中の来場者は約46万人に上った。

この数字だけを見ると、メキシコはラテンアメリカ出版界の中心地であり文学の盛んな国とも思える。しかし、こちらでは、実はメキシコ人はあまり本を読まないとよく耳にする。

この点に関係した記事が、米紙『The Christian Science Monitor』のインターネット版(2005年2月16日付)に掲載された。記事によれば、メキシコでは本は3000部売れればベストセラーと言われ、この10年間で書店の数は40%も減少し、2001年から2004年までの間に10%の出版社が廃業したとい(メキシコ出版協会の集計)。

ユネスコの調査では、メキシコ人が一年間に読む本の数は平均するとわずか 2冊。メキシコで出版される図書の点数は、人口ではメキシコの3分の1ほどのアルゼンチンよりも毎年2000点も少ない。メキシコの識字率は、政府の向上に向けた努力もあり現在では90%以上に達しているが、読書振興のための 政策はいまだ効果を上げていない。記事はまた、「メキシコでは読書を好むという文化がない」、「多くのメキシコ人にとって、本屋はまったく縁のない場所だ」といった専門家の声も紹介している。

確かにメキシコでは、カフェでも地下鉄の中でも本を読んでいる人の姿を見 かけることは少ない。メキシコ人が読書をしない原因の一つとしては、学校 教育において読書が奨励されていないことが挙げられている。また、時間を過ごすのであれば一人で本を読むよりも人とのつきあいを重視する習慣や、 テレビや映画など、よりビジュアルなメディアを好む性向もあるのであろう。

さらに、メキシコの図書の価格は他の物価と比べるとかなり割高に見える。新刊の単行本の値段は日本とそれほど変わらない水準であり、文学作品では 100ペソ台から200ペソ台(1000円から2000円)が中心である。メキシコの所得水準を考えれば、経済的な面からも本に親しめる人々は限られてくるだろう。

国際的に活躍する著名なメキシコ人作家もいるが、彼らはおそらくメキシコ国内のマーケットが小さいことから国際的に活動する必要性もあったのではなかろうか。もちろんメキシコの新聞の文化欄には書評欄もあり、文学について論じるテレビ番組もあることはある。しかし、様々な要因のためにメキシコにおいては一般の人々が読書に親しむという状況はいまだ実現していないようである。日本の文学作品もスペイン語で出版されているが、こうした読書をめぐる環境の中では、一部の国において見られるような村上春樹をはじめとした日本の作家のブームや、日本の文学に対して幅広く関心が持たれるといった状況まで辿りつくのはなかなか難しそうである。
(メキシコ事務所発)

 

 

 

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