パキスタンの日本研究専門家 アジアの政治情勢を語る

 

日本の北東アジア政策を研究するために今年5月に来日した基金フェローのパキスタン出身ルフラー・マンギ教授(Dr. Lutfullah Mangi)が6月8日、基金本部で研究発表(一般公開)を行なった。

マンギ教授が来日したのは、教科書問題、日本の国連常任理事国入りの問題をきっかけに中国で反日感情が高まり、中国各地でデモが続発した直後の5月初旬。

教授は、日中間の対立について「1972年の国交回復以来、最悪の状態(”at the lowest ebb of the political scale”)」 にあるという見方を示した。日中両国とも大国として台頭しつつあり、国際的に影響力を持ちたいという野心があり「小泉総理は、アジア地域で積極的な役割を果たそうと決めたかに見える」と述べた。

また、教授は、こうした緊張の高まりにも関わらず、日中関係の根底には安定した状況があり、対立は主に認識の違いによるものであると語り、両国は冷戦時代のメンタリティから脱却し、相互の不信感や誤解を取り払うべきである、と政治的努力の必要性を訴えた。

さらに「私の意見では」と断ったうえで、「日本は(中国に)17-18回も謝罪しているので、(さらに)繰り返すべきではないだろう」と述べた。

一方、カシミール地域を巡り紛争の絶えなかったインドとパキスタンの、緊張緩和に向けた最近の動きについては、流血の戦いはもうたくさん(”Enough is enough”)という思いが背景にあると述べた。近隣の中国が、経済成長を背景に国際的影響力を増すなかで、(カネのかかる)国境を巡る対立を続けるよりも”give and take”の対策をとるほうがよいという思いが両国にあるのだろうと、分析した。

そのほか、「9.11同時多発テロ事件」以降、テロリスト問題解決にむけにアメリカとパキスタンは協力関係にあるが、それは「信頼できる同盟」関係ではないこと、中国とインドが近づきつつあること、パキスタンと中国の関係はかつてほど緊密ではないことなど、参加者の質問に答えつつ、最近のアジア情勢についても触れた。

パキスタンにおける日本研究と日本観

マンギ博士は、パキスタンのシンド大学国際関係学部教授、北東・東南アジア地域研究センター長を兼任し、主に日本政治や国際関係論を教えている。シンド大学はパキスタンの国家政策により北東アジア研究を任されており、教授は同国で日本研究を行なう数少ない研究者の一人。「何とかパキスタン初の『日本研究学部』を作りたいのだが」とご自身の夢も語った。

教授によると、パキスタン人の日本への関心は低いという。パキスタンが関心を持つ対象国としては、隣国インド、アラブ諸国、そしてアメリカであり、日本はその外にある、と残念そうに語った(パキスタンで、トヨタ車はいたるところで走っているにもかかわらず)。その背景には、国の予算の多くが軍事に費やされ、教育には1%以下しか向けられないこともあるという。

「日本は大国なのに、アメリカやイギリスのように、ラジオ局Voice of America (VoA)やBBCのような自国のニュースを伝えるメディアを(パキスタンで)もっていない。ブリティッシュ・カウンシルのような文化機関のように、積極的に文化普及をしてはどうか」と、日本研究を盛んにするための提言を述べ発表会を終えた。
(情報センター発)

 

 

 

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