コンドルズ旋風と共に

公演の写真1

JFサポーターズクラブ会員の澤野理絵さんは、英国留学中の2006年10月より2007年2月まで、ジャパンファウンデーション・ロンドン事務所でインターンをされていました。帰国された澤野さんに、インターンの立場からロンドンでのコンドルズ公演の模様を報告していただきました。

ロンドンで暮らしていると、伝統的な文化と新しい文化が共存していることが実感できます。その上で、他の国の文化を受け入れているという懐の深さが感じられるのです。日本の食やアートに出会える機会も多くありますが、そのほとんどは国際交流基金を始め、日本の団体がサポートしていました。このような、文化を伝え合うこと、その繰り返しの先に真の相互理解があると信じて、自分もその活動をサポートしたいと思い、私はロンドンに事務所がある国際交流基金の扉を叩きました。国際交流基金でインターンシップをさせて頂くことは、英国留学を決めた時から心に秘めていた希望でしたが、縁あって受け入れて下さることになり、大変幸運であったと感謝しています。

日本の文化と言っても幅広いですが、特に自分の専攻分野である舞台芸術への関心が強く、「コンドルズ」のロンドン公演をサポートさせて頂いたことは最も印象に残る経験でした。その時の事をインターンの立場から報告させて頂きたいと思います。

英国ではTime Outという週刊雑誌でエンターテイメントの情報を網羅できるようになっており、映画、舞台、音楽、ダンス、あらゆるジャンルにスポットを当てています。その雑誌で、コンドルズの「Jupiter Conquest of the Galaxy」は「ダンス」のコーナーで紹介されました。前の公演の写真つきの比較的大きな紹介記事で、Time Outでの注目度が伺えました。このTime Outを始め、その他のメディアでも、アメリカ公演の時にNew York Timesが評した「Japan's Monty Python」というフレーズがよく引用されていました。モンティパイソンは70年代から現在まで人気のある英国のコメディグループであり、英国人にとってはとてもわかりやすい宣伝だったと思います。ちょうどこの頃ロンドンではモンティパイソンのコメディを基にした「SPAMALOT」というミュージカルがブロードウェイから逆輸入され、子供から大人までその舞台を楽しんでおり、その街に「CONDORS」がやってきたのは偶然でありながら、必然のようなものを感じました。

会場はLilian Baylis Theatreという所で、ダンスを専門とするSadler’s Wellsの管轄の劇場でした。Sadler’s Wells Theatreは日本から来た「歌舞伎」を上演したり、日本人女性をモデルにした「マダムバタフライ」のバレエを上演したり、日本への関心が強い劇場だという印象があります。そして今回のLilian Baylis Theatreでの「コンドルズ」の上演。嬉しかったのは、在英の日本人のお客様ばかりでなく、英国人のお客様のほうがむしろ多かったということです。

公演の写真2

コンドルズの皆さんはそれぞれ忙しいスケジュールをぬって渡英されており、全員が揃ったのは公演直前のことでした。そんな中で、作品が現地の言葉やネタを盛り込みながら作られていったのが衝撃的でした。直前に作られた部分もまるで前から用意してあったかのように輝くのですから、その即興性と集中力に感動致しました。主宰の近藤さんの言葉からもその魅力を覗いた気がします。

みんなそれぞれにキャラクターと役割があって、自分は「振り付け」と「構成」を担当している、という感じだね。全員が「本番」に向けて個人的に上げていく、それがコンドルズのスタイルかな。

そうなのです。全ての場面それぞれに皆さんのキャラクターが生かされていてぶつかっていない。それでいて小さくまとまらずそれぞれが刺激的な存在であり続けているのです。私はサポートする立場にありながら、一人の観客としてコンドルズのその魅力に惹きつけられました。海外公演をいくつも成功させてきたその魅力は、ジャンルにはまらない、刺激的で、良い意味で異質な「存在感」なのではないかと思いました。

作品は海外公演に向けて特別に作り直すことはないそうです。ただ、それまでの作品の切り貼りのような構成なので無意識で普遍的なものを選んでいるかもしれない、と近藤さんは語っていらっしゃいました。それでは日本国内の公演と海外での公演の何が違うのか。それを聞くとこう答えて下さいました。

まず言葉。それが一番の違いで、他は大きく変えているつもりはないんだよね。あとは今回できなかったけれど、今までの海外公演では現地で映像を撮ってそれを本番に使ったりして。小さい国なんかだと観に来てくれた人が映ったりしていてすごく面白かったね。日本にいると「コンドルズ」という名前で観に来てくれる人が多くて、それはそれで嬉しいことなんだけど、常に新しい刺激を与えたいし、与えられたいから、そういう意味で海外の公演は反応が素直で新しく、処女作を上演するような気持ちになれてとても良いね。常に変化している、常に新作であり続ける、それが理想かな。

常に変化していたい、その気持ちこそが次への原動力にもなり、多くの人の心を惹き付けているのだと思いました。しかし、振付や構成を机の上で考えたことはない、と言う近藤さん。想像力の源は、と聞くと飲み屋だと仰っていましたが、メンバーとの話の中で作品が生まれるというのもとてもよくわかる気がしました。なぜなら、皆さんの面白さは舞台を降りてもそのままだったからです。

公演の写真3

皆さんにとって「コンドルズ」とは何か。そう聞くとこう答えて下さいました。

  • 上質な暇つぶし(近藤さん)
  • アグレッシブな体験をし続けること(石渕さん)
  • いろんなところに連れて行ってくれる機会に遭遇できるのだ(山本さん)
  • ロックンロールの価値観を体現する場(勝山さん)
  • 激しい遊び場(小林さん
  • 人生の趣味(橋爪さん)
  • 終わらない部活動(高橋さん)

皆さんをとてもよく表している言葉だと思いました。

国際交流基金の立場は、金銭的なサポートと運営のサポートであり、アーティストを過度に売り込んだり、過度に迎合したりはしません。それでも魅力は十分に伝わるのです。中立の立場はそうでなければならない、と学ぶことが出来ました。また、気持ちの良いサポートというのはそこに必ず好意があって、その好意がある限り、一度限りの縁ではないと思いました。国境をまたいでもその心に違いはないのだと感じます。

「英国の地方を公演で回ってみたい」と語っていたコンドルズ。今度英国に来る時は色々な街を回るのかもしれません。そんな勢いのある「コンドルズ旋風」はロンドンの街に刺激を与えて新たな土地へと向っていきました。その旋風と共に私の中の文化交流に対する想いもより高くなびいています。

東京学芸大学4年 澤野理絵

ページトップへ戻る