あなたはひとりじゃない 日韓NPO交流事業

 

「育て上げ」ネット事務所で担当者から説明を聞き、熱心にメモを取る韓国側参加者の写真

「育て上げ」ネット事務所で担当者から説明を聞き、熱心にメモを取る韓国側参加者

進学・就職と、多くの若者が新しいスタートを切る春。しかしその陰で、働くことが不安、やりたいことが見つけられない、コミュニケーションが苦手といった若者の存在が社会問題となっています。ニート・ひきこもりと呼ばれる若者たち。彼らはやる気がまったくないわけではなく、いろいろな理由で一歩踏み出すことができないでいます。

お隣の韓国でも社会の急激な変化に伴い、若者の失業が問題になっています。まだ日本ほどではありませんが、「朝起きられない」「ゲーム中毒で家族とのコミュニケーションがとれない」というひきこもりに似た事例も増えつつあるそうです。

ジャパンファウンデーションの文化事業部・市民青少年交流課では2007年3月、このような若者の就労支援を行っている韓国のNPO団体から7名の専門家を招き、同じような活動をしている日本の団体を訪問して、意見交換を行う事業を実施しました。


最初の訪問先は立川にあるNPO法人「育て上げ」ネットでした。ここでは「経済的自立」と「社会参加」を目標に、さまざまな形のサポートを実施しています。
http://www.sodateage.net/

「育て上げ」ネットの事務所にはまんが本がずらっと並んでいます。人付き合いの苦手な若者が、共通の課題を持つことで人の中に入っていくことができるようにという配慮です。


韓国の専門家は、今回の来日に備えて日本の社会状況を詳しくリサーチし、しっかりと事前準備をしていました。そのため、「育て上げ」ネットに対する彼らの質問は、非常に具体的でした。

例えば、プログラムに参加した若者の満足度、プログラム終了後の経済的自立達成度合い、職業体験プログラムのインフラをどのように獲得しているか、心理・情緒面でのケアをどうしているかなど、今回の交流事業を、自分たちの仕事に役立てようという韓国側参加者の強い意気込みが感じられました。

「育て上げ」ネットに通っている若者の話を聞きたいという韓国側の強い要望で、かつて「利用者」としてここに通い、今ではスタッフとして若者を支援している青年に登場してもらって経験談を聞くひとこまもありました。

 

たちかわ若者サポートステーションで体験談を 熱心に聞く参加者の写真

たちかわ若者サポートステーションで体験談を 熱心に聞く参加者

日本側も、韓国の団体がどのように行政と関わっているか、企業との連携をどのように行っているかなどに興味をもち、有益な情報交換の場となっていました。グローバルに展開する企業が増えている昨今、若者就労支援に興味を持ってくれる企業の情報は大切です。韓国の成功事例が日本の成功に結びつく可能性、またその逆の可能性が大いにあるだろうと感じさせられました。

「育て上げ」ネットの工藤代表は
「韓国でも日本でも、親の期待に応えようろする子どもは多い。しかし、そのプレッシャーが大きすぎて、引きこもりやニート状態に陥ることに繋がる。また親の方でも社会の目を気にするあまり、社会に適応できない子どもを持っていることを恥じ、外部との接触を断って孤立してしまう。この問題は日本と韓国に特徴的な問題であり、両国が情報を共有して協力することには大きな意義がある。」
と話し、一同が納得していました。

またひきこもりになって時間が経過すればするほど解決が難しくなるので、学校を卒業する前に手を打つのが効果的。そのためには学校に働きかけて、働くことの必要性や意義を見出すための教育プログラムを提供していくことが大切という点で、日本側と韓国側の意見が一致していました。

韓国の青年失業ネットワーキングセンター“希望庁”のセンター長を務めているジュさんの言葉が印象に残りました。

「日本と韓国で、このようにスタッフ同士で共通の問題を話し合うだけでなく、悩んでいる若者同士が直接会う機会ができれば、悩んでいるのは自分たちだけじゃないと励まされるのではないかと思います。親には心を開いて話せないような場合でも、一緒に旅行したり、時間を共に過ごすことができたら、若者同士心が通じると思うのです。」

一歩を踏み出せない若者は、自分の殻に閉じこもって周りを見ることができません。「育て上げ」ネット担当者の話では、他人と一緒にお昼を食べることさえ、彼らにとっては大きな壁になっているそうです。「同じような悩みを抱える若者が、自分の周りにも隣国にもいることを知れば、彼らの心はすっと軽くなるはず」と、その担当者も話していました。

国際文化交流を通じてそれに関わる人々の世界が広がり、自分がひとりではないことを知って元気を出してくれる人たちがいるとしたら、とてもすてきなことだと思います。

韓国側参加者は9日間の日程を終え、母国で生かせるたくさんのことを学んで、笑顔で帰国の途につきました。

 

「育て上げ」ネット代表の工藤さん(右端)に、韓国グループを代表してジュさん(左端)がおみやげを手渡している写真

「育て上げ」ネット代表の工藤さん(右端)に、
韓国グループを代表して
ジュさん(左端)がおみやげを手渡しているところ

韓国側参加者の名前と所属

キム・ヨンソク (財)失業克服国民財団 一緒に働く社会

ジュ・ドッカン 青年失業ネットワーキングセンター”希望庁“

キム・ヒオク ソウル市立青少年職業体験センター

ヤン・ジウン クムトル学校(都市型のオルタナティブスクール)

イ・ウンジョン 蔚山青年失業克服センター

キム・スッキ (社)失業克服富川市民運動本部

ハン・ボクナム 延世大学校江西青少年自活支援館

 

韓国グループが訪問した日本の団体

「育て上げ」ネット(東京都立川市)

若者の社会参加と就労支援を実施。就労支援システムの研究と実践、全国ネットワークの構築、若者・保護者への相談カウンセリング、会員への会報配布やインターネットを利用した情報提供を行う。

 

日本スローワーク協会(大阪府高槻市)

「スローワーク」の考え方に基づき、競争社会に代表されるファスト(FAST)な価値観に替わる「新しい働き方」、「新しい生き方」の実践を目指す。利益追求型でない働き方を提案。社会的起業を通して、実践的に働く場所を作り出す。

 

ヤングジョブスポットOSAKA(大阪府大阪市)

厚生労働省の施策として雇用・能力開発機構が運営する公的機関。「働くこと」「仕事」について考えてみたいと思う若者が集まり、お互いに『仕事』について考え、話し合い、情報交換するフリースペース。各種イベントも実施し、若者の相談にも応じる。

 

私のしごと館(京都府相楽郡)

若者が早い時期から職業に親しみ、自らの職業生活を設計し、将来にわたって充実した職業生活を過ごすことができるよう、様々な職業に関する体験の機会や情報を提供するとともに、必要な相談・援助などを行う。「見る」だけでなく、利用者みずからが「触れて、体験」し、「考え」、「学ぶ」参加型の施設。

 

淡路プラッツ(大阪府大阪市)

不登校・ひきこもり・対人関係が苦手な人達や、就労不安を抱える人たちが集う通所型のフリースペース。それぞれに合った「社会参加」の実現を目指し、自立支援(個別面談、居場所活動、保護者面談)を行う。就労支援プロジェクト(就労実習等)も実施。

 

コトバノアトリエ(東京都文京区)

若者が好きなことを仕事にできる社会環境の創造を目指して活動するNPO団体。作家、ライター、漫画家などのクリエイティブな仕事に就きたいニート・ひきこもり・フリーターの若者を育成・支援・

 

日本国際ワークキャンプセンター NICE(Never-ending International work Camps Exchange)(東京都新宿区)

ニートの若者を対象に、集団生活の中での生活訓練・労働体験などを行う若者自立塾を栃木県で運営するほか、日本や東アジアで国際ワークキャンプを主催すると共に、世界中のワークキャンプへ日本人を派遣。

 

 

 

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