日本文化を海外に伝える 翻訳家・乾侑美子さんの本

漢字の絵本シリーズの表紙写真
左より:漢字の絵本シリーズ「雨のしずく」「月のえくぼ」「こわい山やさしい山」
飯島太千雄・乾侑美子著 1995年小学館刊

ジャパンファウンデーションは、世界18カ国に19事務所を擁する海外ネットワークを形成しています。そのうち18事務所はライブラリーを備えており、現地の日本研究者、日本文化に興味を持つ人々に役立てられています。

日本のことを外国の人たちに知ってほしいという願いを持ちつづけておられる翻訳者の乾侑美子さんは、ご自身が翻訳者として関わられた本を、このたび各地のライブラリーに寄贈してくださいました。

『般若心経の歴史と祈りの美学』2005年、清林寺刊
ローマ日本文化会館、ケルン日本文化会館、バンコク日本文化センター、ニューデリー事務所、ロサンゼルス事務所、ロンドン事務所、ブダペスト事務所およびライブラリーでご覧いただけます。

『春の日や 庭に雀の砂あひて』1999年、偕成社刊
ローマ日本文化会館、ケルン日本文化会館、ジャカルタ日本文化センター、シドニー日本文化センター、サンパウロ日本文化センター、マニラ事務所、ロンドン日本文化センター、ロサンゼルス事務所、カイロ事務所、関西国際センターでご覧いただけます。

『般若心経の歴史と祈りの美学』の表紙画像
飯島 太千雄著;乾侑美子訳 清林寺 2005/10出版

乾侑美子さんご自身から、メッセージをいただきました。

シアトルとベルリンで、娘二人を公立小学校に通わせたことがあります。その時、どちらの学校でも、「子どもたちに日本の絵本を読み聞かせてほしい」とご注文を受けました。「日本人の友だちができたので、子どもたちが日本のことを知りたがっているから」と。そんなことが私にできるかしら、と困り果てましたが、シアトルでは、幸運なことに図書室の先生が、"In a Spring Garden"という俳句の絵本があることを教えてくださいましたので、みんなでこの本(注1)を読みました。ベルリンではこの手は使えず、日本のことを外国の人たちに知っていただけるような絵本がほしいと、切実に思いました。

この願いはやがて、日本の文字の美しさを伝える絵本を作りたいという夢に発展し、私はひそかにこの夢を十年もあたためていましたが、ある時思いがけない幸運に恵まれて、『漢字の絵本』3冊(注2)を作っていただくことができました。漢字という、四千年前に生まれた文字が、現代もなお生き生きと使われ続けている――これはとてもすばらしいこと、世界中でこんな文字を持っている国は中国と日本だけだそうです。そのすばらしさを、見るだけで納得させてくるのですから、絵本の力はとても大きいと思いました。

また、最近、これは子どもの本ではありませんが、『漢字の絵本』を作ってくださった書道史の飯島太千雄先生が、装飾経についての本をお書きになり、この本を作るお手伝いをすることが出来ました。『般若心経の歴史と祈りの美学』(注3)と題されたこの本は、日本の美の頂点の一つである装飾経――お経の文字を書き写し、それをみ仏に捧げるために美しく飾ったもの――を世界に紹介するために書かれました。図版も美しいものがふんだんに使われて、日本人の祈りの心がどのような美に昇華したか、外国の方にも分っていただけるように工夫されています。各地のジャパン・ファウンデーションの図書室に置いていただいてありますので、お手にとってみてくださいますようお願いします。

『春の日や 庭に雀の砂あひて』の表紙画像
原書名:IN A SPRING GARDEN
リチャード・ルイス /
エズラ・ジャック・キーツ著
乾 侑美子訳 偕成社 1999-06出版

注1 『ゆきのひ』でコールデコット賞を受けた絵本作家エズラ・ジャック・キーツが、英訳された一茶や蕪村などの句に絵をつけています。(邦訳『春の日や 庭に雀の砂あひて』1999年、偕成社刊)

注2 山、月、雨という三つの漢字に一冊ずつを当て、それぞれ『こわい山 やさしい山』『雨のしずく』『月のえくぼ』と題しました。中国の金文・甲骨文から王羲之、空海、嵯峨天皇や良寛の書まで、四千年の歴史の中で
ほんとうに書かれた文字だけを集めて作られた絵本です。(1995年・小学館刊・絶版)

注3 2005年、清林寺刊。

乾侑美子略歴
東京生まれ。家庭文庫活動を経て、主に英独の児童書の研究、翻訳に従事。著書に写経の古寺巡礼』(NHK出版刊)『漢字の絵本』(飯島太千雄との共著、上記)、訳書にベッテルハイム『昔話の魔力』(評論社刊)、ハウフ『冷たい心臓‐ハウフ童話集』(福音館刊)、グリム『1812初版グリム童話集』(小学館)、飯島太千雄『般若心経の歴史と祈りの美学』(上記)など。

*ジャパンファウンデーションの各ライブラリーでは、日本理解や日本研究に資する図書・資料、日本語教材などを中心に、蔵書の選定・収集をおこなっています。ご寄贈のお申し出については、収集方針やスペースの都合により、対応できないこともありますので、ご寄贈をお考えの場合には、まずライブラリーにご相談いただければ幸いです。

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