「国際交流・協力活動入門講座」の読み解き方

草の根交流や、NGONPOのグローバルな連携のコーディネート、
調査研究に携わる毛受氏が国際交流入門書を紹介します。

(財) 日本国際交流センター
チーフ・プログラムオフィサー 毛受敏浩

「草の根の国際交流と国際協力」「国際交流の組織運営とネットワーク」「国際交流・国際協力の実践者たち」の表紙画像

2003年7月にシリーズの初巻である「草の根の国際交流と国際協力」が明石書店から出版されて以来、3年をかけてようやく「国際交流・協力活動入門講座」が完結した。昨年には2冊目の「国際交流の組織運営とネットワーク」、そして今年8月に最終巻となる3冊目「国際交流・国際協力の実践者たち」が出版された。3冊シリーズの書き手は国際交流・協力活動の最前線で活躍する人たち(国際交流基金の複数のスタッフを含む)を中心に30名を超える。

国際交流を盛り上げる本をめざして 
この本のシリーズの刊行を思い立った最大の理由は、国際交流について書かれた本がほとんどなかったということだ。これが国際協力となると話は全く異なる。開発援助やODA、最近では人間の安全保障など、さまざまな議論が展開され、大きな書店に行くと専門書や入門書など、山ほど本が並んでいる。一方国際交流については一部の専門書があるだけで、研究者も数が限られる。国際交流を盛り上げていこうという立場の人間からすると、非常に淋しい状況と言わざるを得ない。そこで本の企画を考えたわけだが、1冊だけ出してもインパクトがない。シリーズ化することで国際交流を多角的に捉えることができるのと同時に、書店でも「国際交流コーナー」ができるきっかけになるのではと考えた。 

国際交流基金にも勤務経験のある榎田勝利教授(愛知淑徳大学)に声を掛け、そして関西国際交流団体協議会の有田典代さんにも入っていただき、3人でそれぞれ分担して本の出版を考えることになった。3名とも現場に近い人間であり、その結果、この3冊はいずれもアカデミックな本というより現場志向の強い本となっている。

国際交流とともに「国際協力」を入れたのにはわけがある。この本の国際交流は草の根交流、市民交流に近い分野を中心に扱っているが、地域社会では国際交流と国際協力の隔たりは小さく、同じアクターが関わっていることも多い。また地域レベルの活動の特徴でもあり長所であるといえるが、交流と協力の両方の要素を持った活動も増えているからだ。

「コミュニティ主導の国際協力・日欧交流プログラム」の写真

2006年夏に筆者が担当した
「コミュニティ主導の国際協力・日欧交流プログラム」では
全国5都市で活発な議論を行った。
来日した英国のメンバーとともにパネルディスカッションに参加。

シリーズ3「国際交流・国際協力の実践者たち」
さて3巻の内容はどうか?最新の「国際交流・国際協力の実践者たち」から見ていこう。この本はタイトルの通り実際に国際交流に携わっている人たちの肉声が納められている。

国連事務次長を務めた明石康氏から若手の市民団体やNGOスタッフまで色とりどりであるが、その人それぞれの国際交流・協力に対する真摯な思いと、場合によっては半生が赤裸々に語られている。日本で国際交流・協力に職業として携わっている人は極めて少数であり職業として十分に確立されていない面も多いだけに、筆者それぞれの仕事に対して抱える思いも深く読み応えがある。国際交流・協力の世界に飛び込みたいと思っている青年、また中高年でじっくり国際交流に取り組みたいと考えている読者には、特に得るところが多いのではないだろうか?

シリーズ2「国際交流の組織運営とネットワーク」
昨年に出版された「国際交流の組織運営とネットワーク」は、国際交流団体としての組織や事業開発について具体的な例が豊富に述べられている。ボランティア育成、ネットワークの形成と活用、事業評価の実務といった項目もあり、より実践的な内容を多く含んでいる。特に7章の先進的組織運営とプログラム開発事例では、姉妹都市交流や在住外国人のための医療通訳制度、高校生の国際ボランティアネットワークなどの具体的な事例が豊富である。またボランティアが単なる協力者ではなく主導者となるように促す組織運営のあり方などが興味深い。すでに国際交流・協力に携わっている人たちにとって実務的なアドバイスが得られると思われる。

シリーズ1「草の根の国際交流と国際協力」
最初の「草の根の国際交流と国際協力」は、国際交流・協力活動の全容を明らかにしようとしたものである。活動の領域として海外との交流、多文化共生、異文化理解の3つの柱を立てている。海外との交流では姉妹都市交流、青少年交流、文化・芸術交流のほか、NGOや自治体の国際協力活動がとりあげられている。多文化共生の分野も同様にNPOと自治体の活動が分けて論じられ、それぞれの歴史的な活動の分析が興味深い。異文化理解も地球市民教育(開発教育)などが完結に整理されている。4章の新課題では国際交流としてITにいかに取り組むか、事業評価の考え方がまとめられている。国際交流の全体像を改めて知りたいと考える読者には最適といえよう。

札幌セミナーの写真

同じく「コミュニティ主導の国際協力・日欧交流プログラム」。 地元の北方圏センターと共催で開催した札幌セミナーの様子。

さらに多くの本を
ただ現時点で振り返ると、まだまだ付け加えるべき分野も多いように感じる。それだけ国際交流・協力は社会に浸透し、その部分だけを切り取ることができないほど人々の暮らしと溶け込んでしまっているといえるかもしれない。

さて、書店に「国際交流コーナー」はできだだろうか?残念ながらまだまだ国際交流の本は少なくコーナーは実現していない。国際交流を盛り上げていくためにも、国際交流基金をはじめいろいろな立場の方々から、国際交流についての書籍が数多く出版されることを期待している。

毛受敏浩(めんじゅとしひろ)氏プロフィール

(財)日本国際交流センター、チーフ・プログラムオフィサー
慶応大学法学部卒。米国エバグリーン州立大学行政管理大学院修士。兵庫県庁に勤務し国際交流を担当後、1988年より日本国際交流センターで草の根交流やNGONPOのグローバルな連携についてコーディネーションと調査研究を担当。慶応大学、静岡文化芸術大学非常勤講師を兼務。全国の国際交流・協力関係者とともに国際交流・協力活動実践者全国会議を企画し実行委員長を務めた。著書に「異文化体験入門」(明石書店、2003)「地球市民ネットワーク」(アルク、1997)等。現在、地球市民賞選考委員(国際交流基金)、姉妹自治体交流表彰審査委員(自治体国際化協会)、Monthly JICA編集委員、草の根技術協力外部有識者(JICA)等。

編集部より

毛受氏は、ジャパンファウンデーション日米センターが発行した
姉妹都市交流ブックレット~あなたの町の国際交流をより元気にするために~
を執筆しておられます。こちらはどなたでも、全内容をPDFファイルでお読みいただくことができます。

姉妹都市交流ブックレットはこちら【PDF:2,286KB】

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