ヴォーカリスト鈴木重子 −3− The Shigeko Suzuki Concert より −人と人との間に橋をかける−

 

鈴木重子さんは、2003年2月、ジャパンファウンデーションから派遣され、フィリピンのマニラ、インドネシアのジャカルタとマカッサルで The Shigeko Suzuki Concert をおこなった。

 

鈴木重子氏の写真1

重子さんは、歌のテクニカルな良さを見せるだけでは交流にならない、それに加えて、歌を通じたコミュニケーションが大切だと考えている。同じ空間を共有することで、わかりあえる事があると信じているからだ。

「外国のことを知るのに、ニュースや本や地図を利用するのと、実際にその国の人が来て話をしたり、コンサートをするのとでは、まったく違うと思うんです。外国の人のカラダを通じて、風土、風物といったものが音に出てくるからです。外国の人がコンサートをやってくれると、その国に行ってみたくなるでしょ。」

重子さんは、歌を通じて人と人との出会いを創りだし、国と国とのかけはしになれないかと、いつも考えている。

幼稚園のとき、人見知りをするはずかしがりやさんだった。
「それなのに、世界中の人と友だちになるというのがその頃の夢だったんです。」

それが今、現実となっている。

「いろんな国に出かけて、もっと暖かく、もっと密度のある交流の場をどんどん創っていきたいと思っています。イデオロギーを超えて、もっと深いレベルで理解しあえるとうれしい。」

海外の公演では、日本にいるとわからないことが理解できると重子さんは言う。
日本では日本人の価値観の枠内で行動するが、海外ではそのような制約が取り払われる。そのかわり、「歌を歌っている私とは、人間とは何ぞや」という根源的なところにたどりつく。

 

鈴木重子氏の写真2

違うもの、異質なものと出会うことにより、違いを超えた深いものが生まれる。
それは海外にいると頭が自由になるから。日本の芸能界で考えていることを忘れてしまえるから。そして相手側も、初めて出会う重子さんに何も期待していない。
そんな両者が出会うとき、お互いを新しい目で見つめることができる。そしてそこから、思いがけない命が生まれてくる。

「既成の価値観をかなぐり捨てないとコミュニケーションがとれないわけですから、海外に出かけることはある意味、とてもこわいことです。いつも不安があります。でもそれを終えたとき、必ず何かをもって帰ることができるんです。」

重子さんは今、国内でも「人と人との間に橋をかける」をテーマに取組んでいることがある。病院、刑務所、高齢者施設、障害者施設を訪れてミニコンサートを開き、そこにいる人たちと一緒に歌うことである。

「人と人との間に橋をかけるにはまず、自分の中で、自分と自分に橋をかけることからはじめなければなりません。自分と自分が仲良しだと、自分と誰かも仲良しになれるんです。」

重子さんには、重圧を背負って司法試験に挑戦しつづけた20代の頃がある。
「自分が自分に優しくしてあげることで、自分はまわりの人にも優しくしてあげられるようになるんだって、これは歌を歌っているうちに思うようになりました。」

聞いてくれる人とコミュニケーションのできる、暖かくて気持ちのよい空間をつくることをめざして、病院のロビーや、少年院の集会室でミニコンサートを開く。みんながよく知っている曲を歌い、そこにいる人たちにも一緒に歌ってもらう。

 

ジャカルタ公演のプログラム表紙の画像

ジャカルタ公演のプログラム表紙

「コンサートの目的は、そこに集う人たちの健康のためであったり、心が楽しくなることなんですが、私自身もとても楽しんでいます。生活感のある空間での音楽はリラックス感があり、ショーアップされたものとはまったく違うんです。その両方をやることで、バランスがとれるんだなと思います。」

ジャカルタの公演ではプログラムで、重子さんのことをHealing voice from Japanと紹介している。

「地球という星がいま、すごく大事な時期にいると思うんです。ここでみんなが助けあって、何とかする方向に行かないと、大変なことになるのではないかと思っています。
自分が自分のためにできることが、自分がまわりのためにできることにつながり、それが、国が国のためにできることにつながっていくのだと思います。

こういう世の中になってほしいというビジョンを私一人でも持つことで、何か変わるかもしれないと思いながら、今、毎日を過ごしています。」

柔らかな口調で静かに語る重子さんは、visionary(心が暖かくなるようなビジョンを人に与えられる人)という言葉が、まさにぴったりである。

 


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-4- 鈴木重子プロフィール

 

 

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