~21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム)~ 文化・社会・宗教において多様性を持つ 東アジアに共同体は成立するのか

 

21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム) 文化・社会・宗教において多様性を持つ 東アジアに共同体は成立するのかのタイトル画像

 

菊地靖氏の写真

菊地靖
早稲田大学
アジア太平洋研究科教授

2007年12月ジャパンファウンデーションは、国際フォーラム「東アジアの異なる文化・社会・宗教間対話」を開催しました。これは「21世紀東アジア青少年大交流計画(Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youths: 頭文字をとってジェネシス【JENESYS】 プログラムと呼びます)」の一環として実施されたものです。この大交流計画は、2007年1月の第2回東アジア首脳会議(EAS)において安倍総理(当時)が提唱し、実現にいたりました。

ASEAN10カ国、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、日本の計16カ国から、将来の活躍が期待される若き知識人たちが日本に集い、10日間を共に過ごして、日本の社会・文化への理解と、参加者同士の対話や理解を深め合いました。

特に2日間にわたる集中討議では、文化間対話、社会間対話、宗教間対話の3つのグループに分かれ、突っ込んだ議論が展開されました。

 

文化・社会・宗教の面から東アジア共同体を考える国際シンポジウム

このフォーラムの締めくくりとして12月17日に「東アジアの異なる文化・社会・宗教間対話」と題する国際シンポジウムが開催されました。早稲田大学小野記念講堂で開催されたこの公開シンポジウムには、会員の皆さんにもご参加いただきました。

 

基調講演「東アジアの交易、安全保障、共同体」

ワン・ガンウー氏の写真

ワン・ガンウー
シンガポール国立大学
東アジア研究所理事長

基調講演をされたシンガポール国立大学東アジア研究所理事長のワン・ガンウー氏は、「東アジアの交易、安全保障、共同体 (Trade, Security and Community in East Asia)」というタイトルで、この地域の歴史をさかのぼった興味深い話をされました。

「東アジアを考える時、キーワードとなるのは『共同体(コミュニティー)』『多様性(ダイバーシティー)』という2つの言葉です。

16世紀の東アジアでは、インド商人が南アジアから東南アジアへという、物の動きをつくり出していました。中国では商人が中心となって交易を行い、政府(明)はそれを管理する役割のみにとどまっていました。さらにはるか西からは、イスラム教徒の商人がやってきて交易を行いました。このように多層的な交易が存在し、この地に新しい文化や宗教がもたらされましたが、その間の摩擦はほとんどなく、非常に平和的な交易が成立していました。

ところがそこにヨーロッパ人が登場すると、情勢は変わってきます。長い距離を旅してくるキリスト教徒の商人は、今までこの地域になかったものを持ち込みました。イスラム教徒に独占されていた東アジアの交易を自分たちの手にいれるため激しい争いが起こり、キリスト教徒とイスラム教徒という対立の構図がもたらされたのです。

こうして宗教的にも文化的にも多様な東アジアが成立していくのですが、兵器が飛躍的に発展し、戦争の意味が変容してきている21世紀の今日、この地域は協力して安全保障に取組んでいかなければなりません。

東アジアの国々は、その多様性を尊重し信頼しあって、共同体的なものを模索していく必要があります。その道は簡単ではありません。多様性の中で、どのような価値観を共有していくか、どうやって調和を見出していくかがいま真剣に問われています。」

ワン・ガンウー氏はこう話されました。

基調講演に続いてコーディネーターの発表があり、午後は16カ国の若手知識人による集中討議の成果が報告されました。

 

16カ国の若手知識人による集中討議報告

集中討議報告の写真1

参加者代表によるグループ別の集中討議報告のようす(1)

文化間対話グループの報告では、東アジアの国々の共通点を探る取組を紹介してくれました。しかしそこで改めて明らかになってきたのは、その多様性です。このような状況を統合していくための提案が、若い世代の視点で数多く出されました。

社会間対話のグループでは、東アジア共同体の必要性への考察からはじまり、それに期待する役割などが報告されました。政治的にも多様な国々を対象とする共同体づくりには、個人レベルを含む様々なレベルでの連帯が重要になることが確認されました。

集中討議報告の写真2

参加者代表によるグループ別の集中討議報告のようす(2)

宗教間対話のグループでは、異なる宗教が排他的に存在するのではなく、その間にまず、共存を可能にする安全なスペースを創り出すことが提案されました。異なる宗教に対する寛容と信頼を地域レベルから醸成することの大切さが提言され、他者への不寛容や極端な主義・主張に固執することは、異なる宗教間の対話を妨げるものだという指摘が行われました。

 

 

 

 

 

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