出雲とベツレヘム―音楽のかけはし【3】


Q7. 帰国後のことについてお伺いします。帰国記念コンサートを開催されたとのことですが、出雲の皆さんは今回のベツレヘム訪問をどのように受けとめていらっしゃるご様子でしたか?


木村:「ベツレヘム?…またどういうわけで??」と思われた方もおいでになったようですが、私たちの活動を紹介することで、ベツレヘム、イスラエル、パレスチナ自治区、中東をほんの少しでも身近に感じてもらえ、また関心を持って頂けたと思います。ホールでは現地での写真も多く紹介できたので、砂漠や戦争だけでない景色を感じて頂けたと思います。

一夜明け、朝、ホテルのロビーで一同集合し、朝食をとる時にもっとも感じたのはその静けさでした。ヨーロッパでも同様のようですが、BGMやアナウンスなど、音のない世界が私たちの耳にとって新鮮でした。日本は音が多すぎると思います。その朝食中にゾグビさんがやってきて、1年半ぶりの再会を実現しました。ゾグビさんとは駆け寄り、ハグをし、お互いが目の前にいることを感じる時間でした。
また、国際交流そのものについても関心を持って頂いたようで、どんな形であれ、その人にできる形で国際交流ができるというふうに広がっていくといいなと思います。中には交流を続けてくださいとおっしゃってくださる方もいて、ありがたいと思います。


コンサートのチラシ画像 報告コンサートの写真
コンサートのチラシ 報告コンサート

Q8. 今後もベツレヘムとの交流は続けていかれたいと思っておられますか?また国内で、今回の訪問について伝えていかれるご予定はありますか?


木村:もちろん交流を続けたいと思っています。ベツレヘムの方からも、そういった希望のメールを今でも拝見します。ゾグビさんは具体的な提案もたまにしてくださいますが、ただ実際のところは具体的な予定や約束はたっていません。(各助成金の申請締切もあり、考えなくてはならないところですが…)コンサートについては、改めての予定は今のところありませんが、レッスンやアカデミーの講座の中ではいろいろな場面でエッセンスとして登場することになると思います。

また、ベツレヘム滞在時からメンバーから他の形の交流についての話題も出ていました。例えば、音楽を学ぶ環境を整えるための援助をするものです。まだまだ何ができるかはわかりませんが、ゾグビさんに聞いたところ、ヴァイオリンはあるがチェロが足りない、ということでしたので、何かできるといいなと思いつつ、チェロを送り届けることは大きさからしても難しいかとも思って、今のところうまく進めることができないままでいます。でも何かできればという思いから、実は帰国コンサートでベツレヘム音楽アカデミーへのチャリティーを提案したところ、ちょっとした金額が集まったので、真心がこもったお金を心して使わなければと思っているところです。


ベツレヘム出立前、ゾグビさんとの写真
ベツレヘム出立前、ゾグビさんと

Q9.その他に、ぜひ伝えたいこと、特に感じたこと等、お話しください。


木村:いろいろなことがあった末、実際に訪問できてとてもよかったと思っています。大川さんをはじめ、多くの方にお力添え頂いたからだと、感謝の気持ちでいっぱいです。ゾグビさんを通じて、在イスラエル日本国大使館の岩崎竜司さん、森本七子さんにも助けて頂いたり、本当に人のつながりも感じました。

パレスチナ自治区のベツレヘムから、イスラエル側にあるエルサレムに私たちは観光に行くことができましたが、ベツレヘムに住むクリスチャンでさえ、聖地のエルサレムに行けない現実がつらかったです。すぐそこなのに。隣なのに…。そういう時、一観光客であることを思い知らされました。ゾグビさんはイスラエル側に私たちを迎えに来られませんでしたが、もちろん見送ることもベツレヘム内でしかできませんでした。

一方、入出国時の短い滞在ながら、イスラエルの人々が悪い方たちだと感じたわけではないので、本当に複雑な思いです。ただ、ベツレヘムで良くしてくださった方々とは本当に濃い関係でした。最後の日は、全員がそれぞれ涙を流していました。とにかく、本当に行ってよかったです。実際に体験するってかけがえのないことですね。うまく言えませんけど…。

今回訪問するために中東のことを学べたのは貴重なことでした。世界情勢のニュースとしては地域の名前を聞くものの、長い歴史があるが故の問題が今もなお解決していない結果として起きる事柄についてのニュースであることを、十分ではないながら理解できました。この機会がなければ私たち自身中東のことをここまで調べることは日常ないような気がします。本当に、その地に友人がいるということからその地への関心が高まることはすごいことだなと感じます。他人事ではなくなるので。音楽家としても、ひとりひとりの視野が世界という横軸と、歴史という縦軸に広がる機会となりました。

この数カ月、あらためて報告会やコンサート等はしていませんが自分の周りの方に写真を見てもらったり話を聞いて頂いたりしています。皆さん一様におっしゃるのが、なかなか行けないところですし、危険なイメージがあるからでしょうか、「すごいね!」ということです。でもこうやって話すことが、そして、自分たちの写っている写真を見てもらうことが小さな理解への第一歩かなとも思います。次にいつ出かけることができるのかわかりませんが、心の中に灯火は消さないでいたいなと思います。


ジャパンファウンデーションでは年間約30人の文化人を招へいしております。約2週間の日本滞在中、多くの人々との出会いのお手伝いもしております。今回ご紹介した皆さんは、こうして基金の招へいがきっかけで出会い、その後コミュニケーションを続け、自主的に発展していった例です。

 社会情勢や資金調達等という困難の中「とにかくコミュニケーションを続けることが大切!」という出雲の有志のみなさんの強い意志とゾグビ氏の熱心な想いが、この「出雲とベツレヘム―音楽のかけはし―」の礎となったと確信しています。木村さん、たくさんのすてきなお話をありがとうございました。一つの出会いを大切に育て、心温まる交流を実現させたことに、心より敬意を表します。





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