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「休学のすゝめ」大学を1年間休学して、外国へ行こう

 

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世界を見て、多くの人と出会い、さまざまな価値観を育む


小倉 最近、日本人がとても内向きになっているといわれますね。私は日本人だけが内向きになっているのではなく、先進国の多くが同じような悩みを抱えているのではないかと感じています。


黒川 この10年の変化の中で、日本はかなり特徴的ですね。とくに男性がそうです。


小倉 いわゆる草食系男子ですか。日本の社会が住みやすいから、わざわざ外へ出なくてもいいと思う人が増えているのでしょうか。


黒川 清
黒川 理由づけするのは大人の側でしょう。若い人を外に出さないから、いけないのです。外を見れば、若者はいままでと違った、新しい価値を知る、違う可能性を見る、感じとる、自分の親や上司の考え方に、若者が過保護だという大人たちに、大人は違っていると食ってかかるような人間が増えてくるでしょう。グローバル化はどんどん進んでいます。アジアも急速に変わってきています。大いに若者を励まし、ある程度、無理やりにでも外国へ行かせなくてはだめです。

いま私が考えているのは、福沢諭吉の時代の「学問のすゝめ」ならぬ「休学のすゝめ」です。1年間、学校を休んで、どこか外国へ行こうということです。今年も内定取り消しにするような企業が出ていますが、大学3年で内定を出すような企業の論理に縛られるのはもうやめて、1年間外国へ出よう、人生は長いのだし、同じ会社がこれから20-30年ももつかはわかりません。休学して、留学して勉強してもいいし、広い世界に出かける、仕事を手伝う、友達を作る、困っている人たちと助け合う、やることはいくらでもあります。世界を放浪してもいい。世界を一周してくるのもいい。そうしないと、若い人は日本を外から見る、日本を感じとる機会があまりにも少ないのです。

外から見れば、いかに日本がよい国か感じるかもしれないし、人によっては、訪れた国の現実を目にして、自分が何とかしたいと考える人も出てくるでしょう。大きな、いくつものやりたいことが見えてくる人も多いのです。  

多くの国で国際貢献のNGOが設立されたり、社会起業家による新しい事業が生まれています。その活動をテレビなどで見ていて、参加したいという気持ちはあるのです。しかし、特に男子学生には、そうした「寄り道」が自分の将来に悪い影響を与えるかもしれないという不安を持っているのです。そんな時代は過ぎました。今までの日本は基本的に「単線路線キャリア」(同じ組織で、基本的には年功序列で上に上がっていく、横に動けない)だったのです。世界に、横に広がる「フラット」なグローバル時代、この単線タテ社会構造は価値が薄くなっています。日本社会も複数路線を制度化しないと、将来は危ういですね。

しかし、大学生のときに1年間休学して世界を回れば、日本の現状、世界の現状を見て、多くの人と出会い、さまざまな価値観を育むことができます。出会った人たちとメーリングリストやフェイスブックなどでつながり、世界中に友だちができる。5年、10年後にはビジネスのネットワークが国境を越えてできている。今までの人はそれをやってこなかったから、組織人、組織の肩書以外で外国の人たちと交際ができないのです。  

高校生でもいいのです。たとえば財団法人エイ・エフ・エス(AFS、高校生の交換留学を行う民間団体)がありますが、日本ではどんどん志願者が減っています。しかも75%が女子です。男子は偏差値の高い大学へストレートに入ることが大事だと周囲に思わされている。既成の社会が若い人に夢を与えていないのです。小学生、中学生の段階でも、交換留学でもよいので、ホームステイのプログラムも広げるべきですね。

大学は一年間休学をもっと学生にすすめるべき


小倉 現在、国際交流基金の日中交流センターでは、日中高校生交流プログラムの中の「長期招へいプログラム」として、中国の高校生を招き、約10カ月間のホームステイを行っています。すると、彼ら自身も仲良くなった日本の高校生も世界観がすっかり変わるのです。とてもいいプログラムですが、これにはすごく予算がかかります。


黒川 交換に、日本の子どもを中国へ行かせることも必要ですね。日本のコミュニティにはまだ、外国人を受け入れがたい雰囲気があります。しかし、小学生、中学生の夏休み交換ホームステイなどから始めれば、まだ子どもだから互いの国で受け入れられやすいでしょう。そして、友だちができれば、大学でまた来ようかということになる。それが大事なのです。


小倉 欧米ならよいけれど、韓国や中国などのアジアからは来てもらいたくないというのは、交流した経験が少ないからそういう気持ちになるわけで、まさに悪循環ですね。今まで自信過剰だった日本人が自信を失っているために、元気のいい韓国や中国の人を、何となく敬遠しているのかもしれません。


黒川 本当に仲間として付き合ったことがないからだと思います。大人になってからの付き合いは、組織同士のものがほとんどです。そうではなく、グローバルにフラット化が進んでいくこれからの世界では若い人たちがもっと主役にならなくてはいけません。だからこそ、学生のときに、例えば1年間でもいいので、交流させることが大切なのです。


小倉  具体的にはどうしたらいいのでしょうか。というのは、日本の各大学も世界中の大学とさまざまな連携協定を結び、単位の交換といった土台はかなりできています。ところが、外国から来る人はいても、日本から行く人はいないのが現状です。ある程度は費用の援助も必要なのでしょうか。


黒川 何よりも大学も、教師も積極的にすすめることですが、そうしていないのです。特に有名な大学ほど、研究志向ですから、学部生を外には出さず自分の大学院に来させようとします。無理もないのですが。入ってしまえば、教員の手足になりますから。ですから、むしろ学部のときに1年「休学」はとてもいいことです。


小倉 そのためには、「子ども手当」ならぬ「外国留学手当」が必要でしょうか。少なくとも大学を1年間休学しても授業料を取らないという制度をつくればいいのかもしれません。


黒川 私が考えているのは、「1年間したら帰ってきていいよ」と10万円でもいいから、渡航費だけを渡すことです。国のお金を使うと報告書だとか、いろいろうるさいでしょう。むしろ企業や個人に出してもらうのです。代わりにその奨学金制度の名称には企業名などをつける。10年、20年後、奨学金を受けて自分なりのネットワークをつくった人にとってその企業に対して感謝の気持ちも出てくる。その企業に何かの関わりが生じたとき、「会社にはお世話になりました」というところから話が発展していく。企業にとっては広告としても効果的だし、一種のCSR(企業の社会的責任)活動にもなるでしょう。


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