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多様な日本の文化・芸術の海外への紹介 Arts and Cultural Exchange

多様な日本の文化・芸術の海外への紹介の画像

日本・イスラエル外交関係樹立60周年

2012年は日本とイスラエルにとって、外交関係樹立から60周年を迎えた重要な年でした。国際交流基金はこの機会に、イスラエル初の歌舞伎舞踊公演、大型現代美術展「ダブル・ヴィジョン−日本の現代美術」展、蜷川幸雄演出による日本・イスラエル現代演劇共同制作プロジェクト「トロイアの女たち」公演 参照、エルサレム国際映画祭ほか計3カ所での増村保造監督特集上映会、ハイファ国際映画祭における新藤兼人監督特集上映会等、年間を通じてさまざまな事業を多数イスラエル各地で行い、大勢の人々を魅了しました。

歌舞伎舞踊公演

 イスラエル博物館(エルサレム)との共催により、歌舞伎を総合的に紹介する事業を実施しました。同美術館において、「女形」をテーマとする浮世絵コレクション展を2012年7月から4カ月にわたって開催し歌舞伎衣装を紹介した上で、8月末に実施した歌舞伎舞踊の公演は、歌舞伎史上初のイスラエル公演でした。演目は「鷺娘」と「石橋」。女形の中村京蔵氏と立役の尾上松五郎氏による華麗な舞と、総勢8名の長唄、三味線、鳴物の生演奏による本格的な歌舞伎公演が、イスラエル博物館および在テルアビブのダンスの殿堂、スザンヌ・デラール・センターで各2回上演され、満席の観客席は歌舞伎の美に惹き込まれていました。

 公演に加えて行ったレクチャーでは、「歌舞伎の歴史」、「女形の基本」、「音楽と効果音」、「立役の扮装:獅子のできるまで」といったテーマのもと、長唄、三味線、鳴物を用いた歌舞伎音楽の特徴や、衣裳の着付け、化粧の仕方など、日本でも紹介される機会の少ない舞台裏を含めて多角的に紹介し、人々の歌舞伎に対する関心と理解を一層深める機会となりました。

歌舞伎舞踊 イスラエル公演 ©Miah

「ダブル・ヴィジョン−日本現代美術」展

 ハイファ美術館群のティコティン日本美術館とハイファ美術館の2つを会場として、2012年7月から12月まで大規模に開催されました。モスクワからイスラエルに巡回した本展は、1970年代から今日までの日本の現代美術を幅広く紹介するもので、「Reality/Ordinary World」と「Imaginary World/Phantasms」をテーマに、日露両国の若手キュレーターによって企画構成されたものです。国際的にも活躍する著名なアーティストから新進気鋭の若手まで約30人の日本の作家による絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど、現地での新作制作も含めた多彩で示唆に富む作品が一堂に集められました。屋外に設置された、ヤノベケンジ氏による高さ6メートルに及ぶ巨大人物彫刻《サンチャイルド》(2011年)=写真は、ハイファ市内でもひときわ注目を浴びました。

 イスラエルでは未だかつてない規模で日本の現代美術が紹介される貴重な展覧会として話題を呼び、イスラエル国内はもちろん、海外からこの展覧会を目指してハイファを訪れる人も多く、4万人を越える記録的な入場者を集めました。

ハイファ市内に展示された巨大人物彫刻《サンチャイルド》(2011年)

「日本・東ティモール友情と平和の年」
(日本・東ティモール外交関係樹立10周年記念平和年)

ともにつくる音楽の輪 東ティモール音楽公演

 東ティモールには時代によって異なるジャンルの音楽を拠りどころとしてきた歴史があり、音楽が人々のアイデンティティと強く結びついていると言われます。 また、度重なる独立運動の影響もあり15歳以下の人口の割合が非常に高い国でもあります。 こうした事情を踏まえて、外交関係樹立10周年の機会を捉え、これからの東ティモールの未来を担う青少年層に向けて、いずれも日本のみならず海外でも高い訴求力をもつ音楽家たち—廃材打楽器パーカッショニストの山口とも氏、歌手のおおたか静流氏、ヴァイオリン・ビオラ奏者の向島ゆり子氏—から成る特別ユニットによる公演とワークショップを、2012年11月、バウカウとディリの2都市で行いました。

 日本と東ティモールの文化がさまざまな部分で寄り添う場を作り出すことにより二国間の息の長い友好に繋がることを期待し、孤児院や高校、地元アーティスト団体施設などで交流事業を実施しました。ワークショップでは、「すべてのものに可能性がある」というメッセージを込め、現地の廃材を用いて打楽器を一緒につくって演奏。子どもたちの歓声と声援が常に会場中に響き渡りました。また、東ティモールで芸術活動を行う数少ない芸術団体の一つ、「アルテモリス」に所属する打楽器グループ「ハカ」とも、一緒にセッションを行いました。セッションに慣れておらず最初は戸惑った様子の彼らでしたが、音を出すごとにお互いのリズムや呼吸が混ざり合い、演奏者全員が一つになっていく様子は感動的な瞬間でした。日本各地に根付く伝統音楽・民謡や、東日本大震災後に東ティモールから寄せられた支援に対する感謝の意を込めた楽曲、さらには東ティモールの歌謡などを取り上げ、「ハカ」との競演も交えたコンサートは、日本の音楽の紹介に留まることなく、両国で共に音楽の輪を作り上げる公演となりました。

東ティモール音楽公演 ©TOMO OFFICE

日米同盟深化のための日米交流強化—有力美術館における日本美術展

TOKYO 1955-1970:新しい前衛」展

 日米首脳会談に基づくファクト・シート「日米同盟深化のための日米交流強化」(2010年11月)のもと国際交流基金は、2012年より5年間にわたり米国で日本美術を紹介する本格的な展覧会を企画・支援します。2012年11月から3カ月間、ニューヨーク近代美術館(MoMA)との共催により開催した「TOKYO 1955-1970:新しい前衛」展は、この5カ年計画の最初を飾る展覧会でした。

 2012年から2013年にかけては米国の有力美術館で数々の日本現代美術展が開催され、国内外で関心を集めましたが、その中でも40万人が訪れた「TOKYO」展は、ひときわ大きな評判となりました。1955年から1970年という激動期に経済復興を遂げた大都市東京で活躍したさまざまなジャンルのアーティストたちに焦点を当て、日本から出品した百数十点にMoMA所蔵品なども加えて、総作品数は300点に及びます。これまで海外で紹介される機会が少なかった具象的、身体的な表現を積極的に取り上げ、従来と異なる新たな視座を獲得した貴重な展覧会として、米国、日本のみならず海外の多くのメディアの注目を浴びました。参照

 この展覧会開催に合わせて、映画特集上映会「アート・シアター・ギルド(ATG)と日本のアンダーグランド映画 1960-1984年」、戦後日本美術をテーマとしたシンポジウムやパフォーマンスが実施されました。日本の戦後美術に関する論文集『From Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents』の出版への協力も含めて、第二次世界大戦後の日本の文化をより多角的に紹介し、米国の人々のより深い理解を得ることを目指しました。論文集は展覧会カタログとともに、今後の戦後日本美術研究のための重要な礎石となることが期待されます。

ニューヨーク近代美術館と共催した「TOKYO 1955-1970:新しい前衛」展
撮影: Jonathan Muzikar © 2012 The Museum of Modern Art, New York