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文化・芸術を通した世界への貢献 Arts and Cultural Exchange

文化・芸術を通した世界への貢献の画像

演劇の国際共同制作

将来的な交流の深化を見据えて数年にわたり他国と共同で制作に取り組むことは、互いをより深く理解し合うことに繋がります。2012年には過去数年がかりで他国と共同で制作にあたってきた演劇を完成させ、国内外で披露しました。

「能と昆劇による The Spirits Play 霊戯『記憶、場所、対話』」プロジェクト

 2012年10月に東京とシンガポールで、座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワークとの共催によって、『記憶、場所、対話』を上演しました。2年前に日本と中国が始めたこの共同制作の試みは、現代演劇の演出家、佐藤信氏(座・高円寺(東京)芸術監督)とダニー・ユン氏(進念・二十面體(香港)芸術総監督)の共同演出のもと、シンガポールの劇作家の作品を日中両国の伝統演劇の担い手たちと現代劇の俳優たちが共演するというものです。

 東京では、早稲田大学演劇博物館と連携して「日中伝統演劇の現在と未来を考えるシンポジウム『能の体、昆劇の体』」を公演にあわせて開催し、学術面でのアプローチを加えた深いレベルでの演劇交流が行われました。また12月には、中国・南京の江蘇省演芸集団昆劇院主催「朱鷺フェスティバル2012」において、ワークショップやレクチャー・討論会などの形でプロジェクトを実現させ、日中関係に翳りがみえた時期での開催にもかかわらず、地に足のついた芸術交流となりました。3都市合計で2千人を超える観客が、その一体感を共有しました。参照

「能と昆劇によるThe Spirits Play霊戯『記憶、場所、対話』」プロジェクト ©Johnny Au

「トロイアの女たち」イスラエル公演

 2012年12月末から2013年1月初めにかけて、テルアビブのカメリ・シアターにおいて、日本・イスラエル外交関係樹立60周年を記念する、蜷川幸雄氏演出によるギリシャ悲劇「トロイアの女たち」が上演されました。この作品は、イスラエルのユダヤ系、アラブ系、そして日本という3つの異なる文化圏の俳優が出演する意欲的な試みとして、東京芸術劇場、カメリ・シアターと共同で3年がかりで取り組んできたものです。日本とイスラエル双方でのワークショップなど2年間の準備を経て行われた舞台稽古では、俳優それぞれが自らの経験や歴史に裏づけされた動きや表現を生み出し、異なる文化と歴史がぶつかりあう、刺激に満ちた協働作業が続きました。コロスが日本語、ヘブライ語、アラビア語で物語を語るという独自の演出によるこの舞台には、イスラエルでも公演前から高い関心が寄せられ、多くの人々が劇場に足を運びました。特に王妃ヘカベを演じた白石加代子氏の演技はイスラエルの観客を圧倒する迫力で、会場から惜しみない拍手が贈られました。公演は日本でも話題となり、イスラエルで好感をもって迎えられたこと、そしてこの共同制作が意欲的で意義深い試みであることが、新聞やテレビなどで報じられました。参照

「トロイアの女たち」イスラエル公演 ©宮内勝

専門家間のネットワークづくり

日米学芸員交流

 2008年より、米国の美術館からキュレーター等を招へいし日本の美術やアーティストを紹介するプロジェクトを実施してきました。5年目に当たる2012年度は、全米の有力美術館、大学等から写真専門のキュレーター、研究者など9名を招き、日本の写真や写真家を広く紹介するとともに、専門家同士の意見交換の場として、公開シンポジウムを開催しました。写真という存在が再び問い直され、さまざまな技術的実験が行なわれた1960年代後半から70年代という興味深い時代を主題に、両国の専門家による有益な議論が交わされました。

 5年にわたる学芸員交流プロジェクトの成果として、来日したキュレーターの企画による日本あるいは日本人アーティストを紹介する展覧会が米国で開催されるなど、ネットワークが広がっています。

学芸員交流の成果「Omnilogue : Your Voice is Mine」展

 2007年から2012年まで継続的に実施した東南アジアの若手キュレーター日本招へいプログラムの成果が、展覧会として実を結んでいます。プログラム参加者たちが同世代の日本のキュレーターと共に調査と対話を重ね、共同で日本現代美術展を企画し、2011年以降、オーストラリア、インド、シンガポールで展覧会を実施しました。

 2013年1月から3カ月間、シンガポール国立大学美術館で開催した「Omnilogue : Your Voice is Mine」展は、日本とシンガポールの4人のキュレーターが6人の日本人作家を選んだものです。シンガポールと日本の歴史的関係、多民族都市国家シンガポール固有の文脈、会場の常設展を踏まえた展示方法など、さまざまな課題に挑戦しました。

日米学芸員交流で行われたシンポジウム (IZU PHOTO MUSEUMにて)
日米学芸員交流で行われたシンポジウム (IZU PHOTO MUSEUMにて) (撮影:相川健一)

震災復興への取組み

仙台フィルハーモニー管弦楽団ロシア公演

 仙台フィルは東日本大震災で自ら被災しながら、その直後から数々のチャリティコンサートを行ってきました。震災からちょうど2年となる2013年3月、楽団の総勢120余人がロシアに向けて発ち、モスクワとサンクトペテルブルクで計3回の演奏会を開催しました。震災後にロシアから被災地へ、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団から仙台フィルへと寄せられたさまざまな支援に感謝し、また、被災地が復興へと歩む姿を伝えるコンサートとして、実現したものです。参照1,参照2

 震災の犠牲者への追悼として武満徹の「弦楽のためのレクイエム」、ドヴォルザークが遠く自らの故郷を想って作曲し、震災直後の復興コンサートでも演奏された交響曲「新世界より」、ヴァイオリニストの神尾真由子氏をソリストに迎えたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲などが披露され、パスカル・ヴェロ氏指揮による演奏に、会場に詰め掛けた満員の観客は心を打たれたように聞き入りました。アンコールでの日本の唱歌「故郷」の演奏が終わると、楽団員が支援への感謝の意を伝える横断幕を掲げて歓声に応え、その姿に観客から一層大きな拍手が贈られて、音楽の力で復興に向かって歩む被災地の姿を力強く印象づける舞台となりました。

仙台フィルハーモニー管弦楽団ロシア公演

詩と音楽による交流事業 「南三陸— チリ はるかな友に心寄せて」

 大地震と津波に見舞われた宮城県南三陸町と2010年2月のチリ大地震で被災したコンスティトゥシオン市の高校生たちが、被災経験を振り返って作った詩と物語を交換、詩と物語は歌となり、太平洋を越えた交流が生まれました。

 南三陸町とコンスティトゥシオン市の高校生は、日本とチリ双方のアーティストによるワークショップを重ね、自分たちの国で起きた地震や津波の体験を振り返り、太平洋の彼方で同じ境遇にある同世代に思いを馳せながら、それぞれの気持ちや考えを詩や物語に表現し、交換し合いました。完成した詩や物語は、両国の音楽家の力を借りて2つの歌に昇華されました。

 チリ大地震から3年目となる2013年2月末、日本側のワークショップに協力した東北地方ゆかりの音楽家たちがチリの被災地を訪れ、震災追悼式典で南三陸町の高校生たちの思いが込められた曲『はるかな友に心寄せて』を披露し、現地の高校生たちと交流しました。また、同年3月11日に南三陸町で行われた東日本大震災追悼式には、チリ側のワークショップに協力した国民的歌手、ケコ・ユンゲ氏が参列し、コンスティトゥシオンの高校生たちの物語に基づく曲『太陽より遠くへ』を犠牲者に献歌しました。さらに、両国の音楽家が南三陸町の高校生有志とともに交流コンサートを行い、被災地同士、経験やヴィジョンを共有しました。太平洋を越えて互いに励まし支え合い、復興に向け共に歩む絆を深める契機となりました。

南三陸町での追悼式典で合唱を終え、志津川高校2年4組の生徒を称えるケコ・ユンゲ氏の写真
南三陸町での追悼式典で合唱を終え、志津川高校2年4組の生徒を称えるケコ・ユンゲ氏
(撮影:相川健一)

第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示「ここに、建築は、可能か」

 建築家の伊東豊雄氏の呼びかけにより始まった被災地のためのプロジェクト、陸前高田の「みんなの家」の設計過程を紹介しました。この「みんなの家」は、伊東に加え、若手建築家の乾久美子、藤本壮介、平田晃久、そして写真家の畠山直哉の各氏が被災地での調査と議論を重ねることによって、実現に至ったものです。

 陸前高田市のパノラマ写真が貼りめぐらされた会場内に、津波の被害により枯れてしまった杉の木が多数立てられ、被災前と被災直後の陸前高田市の風景、設計の過程で各建築家により作られた100点を超える建築模型、記録映像、資料などが展示されました。家を失い避難を余儀無くされた被災者が集まって語り合うことのできる場を提供する「みんなの家」のプロジェクトを通して、建築は誰のために、何のために作るのか、という根源的なテーマを投げかけ、建築のあるべき姿を問い直そうとした本展覧会は、世界中の観客の共感と感動を呼び、2012年8月末から3カ月間の会期中に15万5千人もの来場者を集めました。この日本館展示は、パビリオン賞(「金獅子賞」)を受賞しました。参照

第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示「ここに、建築は、可能か」 会場風景(撮影:畠山直哉)