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文化芸術交流 Arts and Cultural Exchange

多様な日本の文化・芸術の海外への紹介

外交上重要な機会、地域・国への重点的な対応

日・ASEAN友好協力40周年、日本スペイン交流400周年等を迎えた2013年、この好機を活かして、アピール力の強い大型事業を展開しました。その一方で、世界中の国々でそれぞれのニーズに合わせ、巡回公演、他機関との連携・協力による展覧会等で持続的・継続的な日本の文化発信に努めました

「Media/Art Kitchen」展の写真 撮影:Sittdej Nuhoung
Media/Art Kitchen」展 撮影:Sittdej Nuhoung

「Drums&Voices」

べトナム、カンボジア、ミャンマー、タイ、ラオス、ブルネイ、日本の7ヵ国、12人の伝統音楽演奏家による公演団を結成し、これら7ヵ国全てを巡回する共同制作プロジェクト「Drums&Voices」ツアー公演を実施しました(ブルネイのみ、日本人とブルネイの音楽家による共同公演)。本公演の曲作りのための共同ワークショップをタイ(6〜7月)及びベトナム(8〜9月)で計4週間行った後、10〜11月に参加各国を巡回、12月には全アーティストを日本に招聘し、東京で公演を行いました。東京では、日・ASEAN首脳特別会議にあわせて安倍総理大臣夫妻によって主催されたガラディナーにおけるミニコンサートも行いました。ASEAN各国の首脳、政府関係者の前で今回の共同制作の成果を披露し、日本とASEAN諸国がこれまで築いてきた友好関係や今後のより親密な関係のあり方を示すひとつの象徴的な事業として、その役割を果たしました。

伝統的な音楽を専門とし、打楽器における高いスキルを持ち、長期にわたる本プロジェクトに参加可能な各国アーティストの調査・選出は容易ではありませんでした。ワークショップの場でも、近隣国ながら音楽的・文化的バックグラウンドが異なり、互いにほとんど言葉も通じず、共に音楽づくりを行うことには大きな困難を伴いました。今回音楽監督を依頼した作曲家・大島ミチル氏にとっても、アジアの伝統音楽との出会い、コラボレーションは初めての経験でしたが、計4週間のワークショップでは、互いの音楽の相違あるいは共通性・類似性を丁寧に理解し合うことから始め、卓越した音楽的技能と真摯で誠実な姿勢のもと、最終的には各国音楽家たちが共同で、単なる各国の伝統音楽紹介ではないオリジナル15曲を完成させました。参加した各国の音楽家たちも、葛藤を感じつつも、プロジェクトの意義を十分に理解し、素晴らしいチームワークを結成して、各地で質の高い演奏を披露しました。

ASEAN各国の出演者たちの写真、撮影:栗本一紀
ASEAN各国の出演者たち 撮影:栗本一紀

杉本文楽 欧州公演

現代美術作家の杉本博司氏が構成・演出・美術・映像を手がけた「杉本文楽 曾根崎心中」をマドリード・ローマ・パリの3都市で上演しました。マドリードとローマで各2回、パリで11回、計15公演を行い、あわせて12,000人を超える来場者がありました。

日本スペイン交流400周年を記念して行われたマドリードの公演では、チケットが完売となり、公演前には当日券を求める行列ができる等、大きな注目を集めました。会場に詰め掛けた観客からは、「ビジュアルアートの挿入部分は緻密にバランスよく構成されていたし、舞台演出の陰と陽のコントラストは美しかった」「文楽公演を見たのは初めてだったが、その文学的内容の濃さ、太夫の語りと音楽のすばらしさ、そして完璧で美しい舞台演出に目を見張った」「観客がこれほどまでに舞台にのめりこんでいる様子は、最高の高みにある芸術は言語や文化の壁を乗り越えるということを如実に示すものだと思う」等、作品の文学的な素晴らしさ、文楽という日本独自の芸能の優れた芸術性に魅了されたことを強く印象付けるコメントが寄せられました。

杉本文楽 欧州公演の写真 ©Hiroshi Sugimoto,courtesy of Odawara Art Foundation
©Hiroshi Sugimotocourtesy of Odawara Art Foundation

小山豊邦楽トリオ「中米諸国へ響かせる和ハーモニー」公演

慶長遣欧使節団キューバ上陸400周年と日・パナマ外交関係樹立110周年を記念し、2014年2月18日から26日まで、小山豊氏(津軽三味線)、加藤拓哉氏(和太鼓)、辻本好美氏(尺八)による邦楽トリオが中米巡回公演を行いました。和洋の様々な楽器との共演を通じて国際的に活躍する小山氏が率いるトリオは、エルサルバドル、キューバ、パナマの3ヵ国でコンサートやレクチャー・デモンストレーションを行い、日本の現代邦楽の魅力を中米の音楽ファンに届けました。

エルサルバドルでは、首都サンサルバドルと古都サンタ・アナでコンサートを開催。同国で伝統音楽の継承に取り組むシンガーソングライター、セサル・ダヴィッド・メリノ(César David Merino)と共演にも挑戦し、超満員の観客から温かい拍手が送られました。

更に、キューバでは同国最大の文化行事であるハバナ国際図書展の屋外特設ステージで、3,000人近い観客を前に演奏を披露。伝統的なリズムの再興を目指す人気歌手ダヴィッド・アルヴァレス(David Alvarez)氏率いるグループとの熱気を帯びた共演の評判は、瞬く間にハバナ市民の間を駆け巡り、翌日のメジャ劇場でのコンサートでは、会場を満杯に埋め尽くした観客から盛大なスタンディングオベーションを受けました。

公演前から国営テレビでCMが放映されていたパナマでは、開演直前に大雨による停電のハプニングに見舞われましたが、会場に集まった熱心な観客から演奏が終わるごとに大歓声が上がりました。

トリオのメンバーはどのコンサートでもスペイン語で観客と対話したり、各国の有名な曲を独自のアレンジにより邦楽器で演奏したりしながら、豊かな音楽文化を誇る中米各国の人々に日本の音楽の無限の可能性を印象づけました。観客動員数は3ヵ国4都市で約7,300人。出演テレビ番組の視聴者はその数をはるかに凌駕します。

仙台藩主・伊達政宗の命を受け渡欧した支倉常長がキューバを訪れて400年後の2014年、小山豊邦楽トリオは日本と中米諸国に音楽の虹を見事に描きました。

小山豊邦楽トリオ「中米諸国へ響かせる和ハーモニー」公演の写真

「蚕−皇室のご養蚕と古代裂,日仏絹の交流」展

本展覧会は、宮内庁、文化庁との共催により明治時代から現在まで皇室で大切に引き継がれている皇后陛下のご養蚕をパリ日本文化会館において紹介したものです。皇后陛下が飼育されている純国産の蚕「小石丸」の絹糸によって復元された正倉院宝物、更に日仏の絹の交流の様子を示す作品等が展示され、また宮内庁制作の実際のご養蚕の様子を伝えるDVDも上映しました。

観客からは、皇室が日本の伝統文化の継承に大切な役割を担ってこられたことへの驚きと敬意の念が寄せられると共に、古い伝統が21世紀の今日にも活かされ続けているところが素晴らしいといった声も多く聞かれました。また展覧会では、蚕、絹の糸を通じた日仏の双方向交流の軌跡が示され、好評を博しました。

「蚕−皇室のご養蚕と古代裂,日仏絹の交流」展の写真

広く全世界に向けた継続的な事業展開

多様なジャンルとテーマで構成された国際交流基金巡回展、全12言語版の日本映画を揃えるフィルム・ライブラリー、劇映画やドキュメンタリーのDVD等、国際交流基金の文化リソースを活用した展覧会や映画上映会を、全世界で広く実施しています。更に、日本のドラマやアニメ、ドキュメンタリー番組のテレビ放映、各国の国際図書展や美術展・建築展等への継続的な出展、日本に関連する書籍に対する翻訳出版助成等、様々な形で日本文化を紹介し続けています。

翻訳推薦著作リスト『Worth Sharing

国際交流基金は「翻訳出版助成プログラム」を通じ、40年間にわたり、日本に関する図書の海外出版を支援してきました。このプログラムにより翻訳・出版された図書は1,500件以上、言語数は50を超え、そのジャンルは古典文学、現代文学、歴史、社会学、政治、経済から文化論に至るまで様々です。

海外の人々の間で日本の現代社会理解が一層進むことを願って、特に翻訳・出版が期待される優れた著作を小冊子Worth Sharing—A Selection of Japanese Books Recommended for Translationにまとめ、紹介する取組みを進めています。日本の「いま」を描き、日本社会や日本人について等身大の姿を伝える優れた著作を日本からも積極的に発信していくための仕掛けです。選書には、日本の文学と翻訳に精通している選書委員の協力を仰ぎました。

本リストでは、これまで現代日本の図書があまり紹介されてこなかった言語圏での指針となるよう、テーマをゆるやかに設定した上で選書しています。1つの切り口から見た日本の姿が、視点を変え、異なる角度から眺めれば、新たな色彩を放つ、一面的には捉えがたい日本の文化と社会の諸相を伝えることを目指しています。

2012年に刊行した第1号のテーマは「日本の青春」。若者をテーマに20冊を選書しました。小説の他、若者が直面する現代の社会問題や、若者の現代的な価値観や美意識を論じた研究書や評論も含めています。2013年に刊行した第2号のテーマは「日本の地方」。日本の様々な土地や風景を描いた現代文学作品を18点、ノンフィクションを2点紹介しました。

この冊子に掲載した図書の翻訳出版については、質の高い翻訳と適切な出版計画があれば、「翻訳出版助成プログラム」でも積極的に支援を行っており、多くの国で出版が相次いでいます。このリストをきっかけに、日本の作品、作家、翻訳者や出版社が出会い、海外の読者一人ひとりに日本との交流の芽が生まれることを期待しています。

翻訳推薦著作リスト『Worth Sharing』の写真

巡回展に合わせたレクチャー・デモンストレーション、ワークショップ

国際交流基金巡回展は、アート、建築、デザイン、ポップカルチャーをはじめとする多様なジャンルとテーマで構成された国際交流基金の文化リソースの1つです。この巡回展の実施に合わせて専門家、実演家などを派遣して、レクチャー・デモンストレーション、ワークショップ等複合的な事業を積極的に展開し、より深い日本理解の促進に努めています。

2013年度には、日本社会でブームを引き起こした国民的キャラクターを画像やパネルで紹介する巡回展「キャラクター大国、ニッポン」のブラジル(クリチバ)での開催にあたり、日本を代表する声優の古谷徹氏を派遣して、現地のアニメ及びポップカルチャー関係者との交流や現地美術館でのレクチャー・デモンストレーションを実施しました。

また、東北の手仕事にスポットを当て、現代の日本で忘れ去られかけている古代からの営みである手仕事の美しさを紹介する巡回展「美しい東北の手仕事」展を、ロシア(ユジノサハリンスク、ババロフスク、ウラジオストク)で開催した際には、日本の民藝に関する専門家である三浦正宏氏による東北文化に関するレクチャーと、樺細工職人の米沢研吾氏によるデモンストレーションや成田卓治氏によるこぎん刺しのレクチャーとワークショップを併せて実施しました。

「美しい東北の手仕事」展の写真