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海外における日本語教育 Japanese-Language Education Overseas

海外における日本語普及のための基盤・環境の整備

JF日本語教育スタンダード」の活用推進

言葉を通した相互理解のためには、その言語を使ってどんなことができるかという「課題遂行能力」の向上と、様々な文化に触れることで視野を広げ、いかに他者の文化を理解し尊重するかという「異文化理解能力」の育成が重要です。この理念のもと、日本語の教え方、学び方、学習成果の評価の仕方を考えるためのツールである「JF日本語教育スタンダード」(以下、JFスタンダード)を開発し、その活用推進に向け日本国内外でのセミナー、研修会を通して、幅広い情報提供と利用方法の紹介等を行ってきました。

2013年度は『JF日本語教育スタンダード2010』第2版第2刷を対外発表し、前述のセミナー等で同冊子を配布しました。また、JFスタンダードのウェブサイトにて同スタンダード準拠コースブック『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)専用ページを開設・更新し、同ウェブサイトのユーザーに『まるごと』を紹介すると同時に、『まるごと』のユーザーにも同教材の基盤であるJFスタンダードの情報を提供しやすくしました。更に、『まるごと』の学習目標に対応した「JFまるごとCan-do」56件を「みんなの『Can-do』サイト」に追加し、同サイトのデータベースを拡充しました。

その他、JFスタンダード普及に関連するセミナー、ワークショップ、調査研究、シンポジウムなどに対し助成を行い、それらの事業においてJFスタンダードの具体的な活用方法・事例を説明・紹介するための講師派遣等を行いました。

言語活動と言語能力の関係を整理し、一本の木で表現した「JFスタンダードの木」の画像と基礎段階(A1、A2)、自立段階(B1、B2)、熟達段階(C1、C2)の6段階で、日本語で「〜ができる」を示したCan-Doレベルの画像
JF日本語教育スタンダード」(画像をクリックすると拡大されます)

『まるごと 日本のことばと文化』市販化

『まるごと』は、日本語能力のとらえ方、レベル設定、目標設定と評価の方法等について、JFスタンダードに基づいて国際交流基金が開発したコースブックです。『まるごと』の名前には、ことばと文化を「まるごと」、リアルなコミュニケーションを「まるごと」、日本人のありのままの生活や文化を「まるごと」の3つの意味があります。これらの「まるごと」を込めた『まるごと日本のことばと文化』入門(A1)「かつどう」及び「りかい」を、2013年9月に市販化しました。

11月には東京で、12月には大阪で、『まるごと』の内容や同教材を使った教授法を紹介するセミナーも実施しました。

この『まるごと』の制作プロジェクトは、初級1(A2)、初級2(A2)および初中級(A2/B1)の市販化、そして中級1(B1)試用版の刊行を目指して進行中です。

市販版『まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)「かつどう」「りかい」の画像
市販版『まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)「かつどう」「りかい」

まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)刊行記念セミナー(大阪)の写真
『まるごと 日本のことばと文化』入門(A1)刊行記念セミナー(大阪)

JF日本語講座

JFスタンダードに準拠した新しいタイプの日本語講座を実施し、より学びやすく、教えやすい日本語の学習モデルを提示します。また言葉と文化の総合学習を重視し、日本語教育を通じた相互理解を推進します。

海外の日本語教育における新たなニーズに対応するため、2011年度より一般市民を対象とした日本語講座(通称:JF講座)の拡充を図っています。2012年度の「日本語教育機関調査」の結果、海外の日本語学習者数の伸びに注目が集まりました。日本語学習の目的については、留学や就職という実利的な目的よりも、日本語そのものへの興味や、J-POP、アニメ・マンガ等ポップカルチャーを通して日本文化に親しみを感じ日本語を勉強してみたいという学習者が多く、前回調査より伸びていることがわかりました。

こうした現状を踏まえ、JF講座では、JFスタンダードを取り入れた新たなカリキュラムを導入し、講座の充実とリニューアルに取り組んでおり、『まるごと日本のことばと文化』を用いた、今まで以上に日本文化理解に重点をおいた授業が行われています。2013年度には、国際交流基金の海外拠点23ヵ所と、7ヵ所の日本センターでそれぞれJF講座が開講され、延べ16,000人以上の学習者が受講しました。2014年度も新たにカンボジアで講座を開設し、日本語と日本文化の総合的学習を推進していく予定です。

JF日本語講座の様子の写真

文化日本語講座

JF講座では、文化交流の総合的な実施機関である国際交流基金の特徴を生かして、語学の教室の外でも、音楽や映画、美術、料理など様々な日本文化に触れるイベントや日本に関する最新の情報、文化交流プログラムなどを提供します。これが、文化日本語講座です。JF講座の受講者はこうした文化体験を通じて、日本という異文化への視野を広げ、より深く理解する力を身につけることができます。

ニューデリー日本文化センターでは2014年2月に、舞妓2人と女将によるレクチャーとデモンストレーション「舞妓さんと学ぶ日本語」を開催しました。日本舞踊や茶道お点前の披露の他、女将による花街のシステムや舞妓の衣装に関する説明、「京ことば」のレッスン、舞妓に直接質問ができる質疑応答など盛りだくさんの内容で、連日立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。

インドでは近年、日系企業が多く進出し、日本文化や日本語学習に対する関心が高まりつつあります。しかし実際に日本文化や日本人に直接触れる機会が少ないインドで、舞妓の舞や所作、言葉遣いを生で見て、感じるという体験は、インターネットやメディアを通してでは得られないものであり、多くのインド人の心に残る貴重な体験になったようです。

舞妓2人と女将によるレクチャーとデモンストレーション「舞妓さんと学ぶ日本語」の様子の写真

『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』の画像

『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』の発行

国際交流基金では、世界の日本語教育の現状を正確に把握し、今後の施策に活用するため、3年ごとに全世界を対象とした「日本語教育機関調査」を実施しています。調査の結果は、報告書にまとめて一般に公開しています。2013年度には、2012年度調査の集計及び分析結果をまとめた『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』(本冊)とその「概要」(日・英)及び「結果概要抜粋」を発行しました。

「結果概要抜粋」はウェブサイト(http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/survey12.html)でも公開しています。

インターネットを活用した教育ツール

日本語教師向けに、教材作成のための様々な素材や、教師間の情報交換の場を提供し、教師の日々の活動を支援するウェブサイトを運営しています。また、学習者向けに、それぞれの学習目的に応じて利用できるウェブサイトを運営しています。

「まるごと+(まるごとプラス)入門(A1)」スペイン語版を追加
姉妹サイト「まるごとのことば」を公開

『まるごと 日本のことばと文化』の学習者向けサポートサイト「まるごと+ 入門(A1)」に、スペイン語版を追加し、日・英・西の3言語を揃えました。また、教科書で使われている語彙や表現をまとめた「まるごとのことば」サイトを新たに公開しました。「まるごとのことば」はローマ字でも表示、検索ができること、基本的なことばをまとめたイラストがダウンロードできる等、多くの日本語学習者に利用してもらえるよう工夫を施しています。

「まるごとのことば」トップページの画像
「まるごとのことば」トップページ

NIHONGO eな」iOS、アンドロイド・アプリも紹介

「NIHONGO eな iOS版」トップページの画像
NIHONGO eな iOS版」トップページ

個人でスマートフォンやタブレットを持つことが一般的になり、時間や場所を選ばず、日本語の学習ができるようになってきました。「NIHONGO eな」では、日本語の学習や日本文化の理解を深めるのに役立つiOSやアンドロイド・アプリを紹介する「iOS版」「アンドロイド版」ページを追加公開しました。今後も、日本語の勉強に役立つコンテンツ情報の配信を続けていく予定です。

「アニメ・マンガの日本語」ますます利用広がる

2011年度に全てのコンテンツが完成した「アニメ・マンガの日本語」ウェブサイトには、フェイスブック等から訪れるユーザーも多く、口コミでもますます利用の輪が広がっています。また、国際交流基金の海外拠点等の「アニメ・マンガで日本語を学ぶ」といったテーマの日本語講座でも利用されています。

「アニメ・マンガの日本語」ウェブサイト クイズ:誰のセリフ?の画像「アニメ・マンガの日本語」クイズ:誰のセリフ?

WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」文化クイズ改訂

インドネシア語版とフランス語版の追加によって、利用者が更に増えました。また「文化クイズ」に、現代日本に関するクイズや便利な機能を追加しました。他にも、「あいうえお表」のルビ付き版の追加公開等、更に多くの日本語学習者にエリンと一緒に楽しく日本語と日本文化に挑戦してもらえるよう、サイトの充実に努めました。

WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」:文化クイズ第8課 日本の食べ物クイズの画像
WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」:文化クイズ第8課 日本の食べ物クイズ

「みんなの教材サイト」継続的な素材追加

みんなの教材サイトの画像
「みんなの教材サイト」:
新規写真おしらせ(SNS利用)

日本語教師を支援する「みんなの教材サイト」は、開設から11年目を迎えました。2013年度には新しい写真・イラスト・読解素材を随時追加した他、レイアウトを変更する等、充実を目指しました。

日本語能力試験(JLPT)

日本語を母語としない人を対象とした日本語能力試験(JLPTJapanese-Language Proficiency Test、以下JLPT)を世界各国・地域で実施しています。小学生から社会人まで幅広い層の受験者によって、語学の実力測定のため、就職や昇進のため、大学等への入学のためと、様々に活用されています。

全世界で57万人が受験

JLPTは日本語を母語としない人の日本語能力を測定し、認定するための試験です。N1からN5までの5つのレベルの試験があり、受験者は自己の日本語能力に適したレベルを受験することができます。試験は、N1とN2は「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」の2科目、N3〜N5は「言語知識(文字・語彙)」、「言語知識(文法)・読解」、「聴解」の3科目で構成されています。試験問題の作成と海外各地での試験実施は国際交流基金が、国内での試験実施は共催者である公益財団法人日本国際教育支援協会が、行っています。

2013年度は7月と12月の2回、試験を実施しました。実施状況は次の通りです。

  • 第1回(7月7日)
    海外21ヵ国・地域の101都市で実施。応募者約23万人、受験者約20万人。
    国内42都道府県で実施。応募者約6.5万人、受験者約6万人。
  • 第2回(12月1日)
    海外63ヵ国・地域の202都市で実施。応募者約28万人、受験者約24万人。
    国内44都道府県で実施。応募者約7.5万人、受験者約7万人。

実施の拡大

本年度も実施国・都市・回数が増えました。新たな実施国としてアルジェリアとマダガスカルが加わり、それぞれアルジェとアンタナナリボで12月の試験を実施しました。また、インドネシアではこれまでの7都市に加えて新たにマナドで7月試験を、カンボジアではプノンペンに加えて新たにシェムリアップで12月試験を実施しました。ウズベキスタンのタシケントは年2回の実施になりました。

日本語能力試験公式問題集(N3)の写真
日本語能力試験公式問題集(N3)より

オンライン化の推進

日本語学習者にとってJLPTをより身近なものにするため、オンライン化を進めています。これまで日本国内と、韓国、中国等海外10ヵ国・地域でオンラインの受験願書受付を行ってきましたが、本年度は新たにオーストラリアとハンブルク(ドイツ)でオンライン受付を導入しました。海外の受験者と国内の受験者のオンライン出願者はオンラインで自分の試験結果を知ることができます。また、「日本語能力試験公式問題集」を聴解問題も含めJLPTの公式ウェブサイトで公開しており、無料でダウンロードできます。
http://www.jlpt.jp/samples/sample12.html別サイトに移動します

JLPTによる認定の活用

約30年の歴史を持つJLPTは、国内外で大学入試や卒業、留学、就職、昇進・昇格等にあたっての認定の基準として、ますます活用されるようになってきました。高度人材ポイント制による日本の出入国管理上の優遇制度において、N1合格者には従来10ポイントが付与されていましたが、2013年12月より15ポイントが付与されています。

JLPT通信』第2号(2014年2月発行)では、現在日本で活躍している過去の受験者たちが、JLPTによる日本語能力の認定が就学や卒業、就職等の際に条件であったり有用であったりしたこと、今の学業や仕事につながっていること等を語っています。
http://www.jlpt.jp/reference/jlptbulletin1.html別サイトに移動します

中国でのJLPT試験風景の写真
中国での試験風景

タイでのJLPT試験風景の写真
タイでの試験風景