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文化芸術交流 Arts and Cultural Exchange

文化・芸術を通じた世界への貢献

双方向型、共同作業型の交流事業

日本と海外のアーティストとスタッフが、長い時間をかけて共に1つの舞台公演や展覧会を創り上げる場を創出し、共同制作の成果である作品を国内外で紹介しています。このような共同制作事業は、美術館や博物館の学芸員、舞台公演のプレゼンターやプロデューサー等の文化芸術活動を支える様々な専門家を招へい・派遣し、国際シンポジウムや対話事業を継続的に実施する中で、専門家同士のネットワークが形成され、交流関係が深化した結果として生まれたものです。

東アジア共同制作シリーズVol.1 野田秀樹作・演出『半神』(日本・韓国)

日本と韓国の国際共同制作事業として、原作・脚本 萩尾望都氏、脚本・演出 野田秀樹氏による演劇『半神』をソウルと東京で上演しました。

東京芸術劇場、明洞芸術劇場(ソウル)との共催による本事業では、400人を超す応募者の中からオーディションで選ばれた韓国人俳優を起用する一方、野田氏の演出のもと、照明・音響等の舞台美術チームに日本演劇界を代表する制作陣を迎え、文字通り日韓の共同制作により1つの舞台を創り上げ、両国で好評を博しました。

日韓両国の間では、これまでも様々な文化交流事業が行われてきましたが、本事業では日本の制作陣と韓国の俳優が正面から向き合って創作活動に取り組み、ソウルと東京で公演を行ったことで、新たな芸術表現や文化交流の姿を提示するとともに、日韓両国民が同じ公演を等しく共有することができ、非常に意義のある機会となりました。

「国際共同制作『半神』の写真
国際共同制作『半神』 撮影:岡本隆史

キュレーター・ワークショップ・イン 東南アジア「RUN & LEARN: New Curatorial Constellations

文化協力プログラムの一環として、東南アジアにおける若手キュレーター育成事業「走りながら考える:新しいキュレーター像を求めて」を実施しました。

インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイで、今後活躍が期待される20~30歳代のキュレーターを対象に、日本と現地のシニア・キュレーターによるワークショップを開催。その中から選ばれた14人の若手キュレーターは2週間の訪日研修に参加し、調査と議論を重ねながら各々の企画を練り上げました。2014年12月から2015年2月にかけて、上記4ヵ国9都市で開催した彼らの成果展は、いずれもアートを取り巻く各地の状況を反映した、個性豊かなプロジェクトとなりました。

また、成果展の開催後は、それぞれのプロジェクトを記録し、各国の活発な芸術事情を紹介するガイドブックを発行。日本と東南アジアとの新たな美術交流の基盤整備を目指しました。

ASEANオーケストラ支援事業

明治以降、西洋音楽の受容に努め、他のアジア諸国に先駆けてオーケストラを成立させた日本は、先人たちの70年以上にわたる苦労の末に世界一流のレベルに到達したと言われています。長い時間をかけて西洋音楽を欧米から学んできた日本だからこそ、アジアのオーケストラと共に考え、伝えられるものがあり、教わることもあると考え、公益社団法人日本オーケストラ連盟との協力により「ASEANオーケストラ支援事業」を開始しました。

本プログラムは、ASEAN 諸国のオーケストラの運営・企画に携わるスタッフを招へいし、日本各地のプロ楽団の現場で研鑽の機会を提供する事業と、日本のプロ楽団で経験を積んだ日本人音楽家をASEAN 諸国に派遣し、現地のオーケストラに指導を行う事業の2つを柱としています。

2014年9月にはタイのバンコク交響楽団(BSO)からスタッフ3人が来日。首都圏と地方の5つの楽団の下で25日間の研修に参加しました。参加者はフランチャイズやファンドレイジング(資金調達)、公演の制作から広報まで、日本の楽団運営から多くの刺激を受けました。また、日本側関係者にとっても、アジアのオーケストラ運営事情を知る貴重な機会となりました。

このように、日本とASEAN 諸国のオーケストラ関係者が双方向の交流を重ねることで、今後、「アジアのオーケストラ」独自のスタイルが生まれることが期待されます。

バンコクのBang Khun Phrom宮殿にて、庭園野外晩餐会に向けた練習風景の写真
バンコクのBang Khun Phrom宮殿にて、庭園野外晩餐会に向けた練習風景

世界共通の課題への取組み

国境や言葉を超えた共感を生むことができる文化・芸術の力を生かし、世界と共に手を携えて、災害からの復興、文化遺産の保護・継承、スポーツ分野での国際貢献等のテーマに向き合うことを目指し、事業を実施しています。

砂川航祐コーチ スーダンでレスリング指導

スポーツを通じた国際貢献事業SPORT FOR TOMORROWの一環として、スーダンの首都ハルツームにレスリング・コーチの砂川航祐氏(2012年全日本学生選手権優勝者。柏日体高等学校教員)を派遣し、現地有力選手に対するレスリング実技講習を2ヵ月に渡り実施しました。スーダンでは、3,000年以上受け継がれてきた伝統的な「ヌバレスリング」の人気は高いものの、オリンピックで適用されるレスリングルールが十分に浸透していないため、国際的な選手が育ちにくい現状にあります。内戦後も民族間の対立が根深く残るスーダンにあって、レスリングに対する民族を超えた熱気を生かして国民を1つにしたいと願う選手たちは、砂川コーチの指導を受け、2020年東京オリンピック・パラリンピックへの出場を目指します。

スーダンのレスリング選手に囲まれる砂川航祐コーチの写真
スーダンのレスリング選手に囲まれる砂川航祐コーチ

カマン・カレホユック博物館「保存修復学」フィールドコース

トルコのカマン・カレホユック考古学博物館(日本政府の一般文化無償資金協力により建設)において、公益財団法人中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所との共催により、トルコ全国から集まった学芸員に対し、日本の博物館展示専門家が遺物保存修復学の重要性を実践的に指導する講習を実施しました。

トルコ各地の考古学博物館は保存修復の体制が整っておらず、運び込まれた遺物が処理されないまま収蔵庫に放置されている現状があります。そこで本コースでは、実際にカマン・カレホユック遺跡で出土した遺物の観察・測定・修復・撮影の実習を通して、日本の高い保存修復技術を学ぶ機会を現地の学芸員に提供しました。参加者たちは、今回得た知識を生かし、それぞれの地域の博物館でこれまで軽視されてきた遺物保存修復を積極的に担っていきます。

遺物保存修復学の実習課程に参加するトルコの学芸員たちの写真
遺物保存修復学の実習課程に参加するトルコの学芸員たち
写真提供:(公財)中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所

「3.11—東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展に合わせたレクチャー・デモンストレーション

東日本大震災からの復興に向けた建築家たちの活動を紹介する巡回展「3.11—東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」をインドネシア3都市で開催するにあたり、2015年3月、日本を代表するコミュニティ・デザイナーの山崎亮氏を派遣し、インドネシアの建築に関わる専門家や学生、一般市民に対して講演とワークショップを実施しました。

経済成長が著しいインドネシアは自然災害が多発する国でもあり、日本だからこそできる貢献がたくさんあります。今回、講演やワークショップに先だって、山崎氏はジャカルタの建築関係者たちの取組みや、メダンの歴史的建造物の保存・再生プロジェクト、スラバヤの若者による地域活動の様子を丁寧に視察し、それらの活動の担い手と積極的な交流を行いました。インドネシアの実情を踏まえたうえでの山崎氏の講演は、日本の防災や建築への取組みに対する聴衆の理解を効果的に促すとともに、両国におけるコミュニティ・デザインの実例を共有しながら、自然災害時にコミュニティが果たしうる役割を共に考え、今後の継続的な協力関係を模索する機会となりました。

インドネシアで地域活動を担う若者たちと山崎亮氏の写真
インドネシアで地域活動を担う若者たちと山崎亮氏