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海外における日本語教育 Japanese-Language Education Overseas

海外における日本語普及のための
基盤・環境の整備

JF日本語教育スタンダード」の活用推進

言語によるコミュニケーションを通じて相互理解を深めていくためには、その言語を使ってどんなことができるかという「課題遂行能力」の向上と、様々な文化に触れることで視野を広げ、いかに他の文化を理解し尊重するかという「異文化理解能力」の育成が重要です。この理念のもと、日本語の教え方、学び方、学習成果の評価の仕方を考えるためのツールである「JF日本語教育スタンダード」(以下、JFスタンダード)を開発し、その活用推進に向け、日本国内外でのセミナー、研修会を通して、幅広い情報提供と利用方法の紹介などを行ってきました。

2014年度は『JF日本語教育スタンダード2010』第3版第1刷を対外発表し、より広い範囲の方々にJFスタンダードを知ってもらうためのパンフレットも制作しました。

またJFスタンダードに準拠し、教師が各教育現場に合わせて「口頭でのやりとり」能力を測ることができる「ロールプレイテスト」を開発し、JFスタンダードのウェブサイト上で公開しました。同ウェブサイトでは、マニュアルのほか、テストの進め方動画、モデル音声、13言語のロールカードを掲載し、テスト実施者の利便性にも対応しています。

更に「みんなの『Can-do』サイト」には、162 件の新たなCan-doJF Can-do72件、まるごとCan-do90件) を追加し、同サイトのデータベースを拡充しました。

そのほか、JFスタンダード普及に関連するセミナー、ワークショップ、調査研究、シンポジウム等に対し助成を行い、それらの事業においてJFスタンダードの具体的な活用方法・事例を説明・紹介するための講師派遣等も行いました。

JFスタンダードパンフレット、および「ロールプレイテスト」マニュアルの画像
JFスタンダードパンフレット、および「ロールプレイテスト」マニュアル

JFスタンダードで示されている日本語の熟達度の画像
JFスタンダードで示されている日本語の熟達度 (画像をクリックすると拡大されます)

『まるごと 日本のことばと文化』市販化

JFスタンダードに準拠したコースブック『まるごと 日本のことばと文化』には、言葉と文化を「まるごと」、日本語を使った自然なコミュニケーションを「まるごと」、日本人のありのままの生活や文化を「まるごと」学ぶという意味が込められています。

2013年に入門(A1)、2014年には初級1・2(A2)のレベルで、それぞれ「かつどう」、「りかい」の主教材2種を出版し、合計6冊のシリーズ教材になりました。教材の紹介や使い方のセミナーを国内海外の日本語教師向けに開催する等、普及活動にも取組んでいます。

JF日本語講座をはじめ、世界各国で『まるごと 日本のことばと文化』を使用した日本語教育が導入される機会も増え、普及が進んでいます。初中級(A2/B1)、そして中級1・2(B1) の出版に向け、『まるごと 日本のことばと文化』の開発は今後も続きます。

『まるごと 日本のことばと文化』初級1(A2) 刊行記念セミナー [東京](2014年6月28日開催)の写真
『まるごと 日本のことばと文化』初級1(A2) 刊行記念セミナー [東京](2014年6月28日開催)

『まるごと 日本のことばと文化』シリーズ(国際交流まつり2014@北浦和)の写真
『まるごと 日本のことばと文化』シリーズ(国際交流まつり2014@北浦和)

『まるごと 日本のことばと文化』初級2(A2)「かつどう」「りかい」市販版の画像
『まるごと 日本のことばと文化』初級2(A2)「かつどう」「りかい」市販版

JF日本語講座

JFスタンダードに準拠した新しいタイプの日本語講座を実施し、より学びやすく、教えやすい日本語の学習モデルを提示しています。また言葉と文化の総合学習を重視し、日本語教育を通じた相互理解を推進しています。

国際交流基金は、海外での日本語教育現場における様々な要望に対応するため、それぞれの学習者層を対象とした日本語講座(以下、JF講座)の拡充を図っています。日本語学習の目的は、留学や就職という実利的な目的よりも、日本語そのものへの興味や、J-POP、アニメ・マンガ等のポップカルチャーを通して日本文化に親しみを感じ、日本語も勉強してみたいというものが近年多くなっています。

こうした現状を踏まえ、JF講座では、JFスタンダードを取り入れた新たなカリキュラムを導入し、講座の充実と刷新に取り組んでおり、『まるごと 日本のことばと文化』を用いた、今まで以上に日本文化理解に重点をおいた授業が行われています。2014年度には、国際交流基金海外拠点22ヵ所と、8ヵ所の日本センターでJF講座が開講され、のべ2万1千人以上の学習者が受講しました。

JF講座・中級クラス開講式(ハノイ)の写真
JF講座・中級クラス開講式(ハノイ)

文化日本語講座

JF講座では、文化交流の総合的な実施機関である国際交流基金の特徴を活かし、単なる外国語教室という枠を超えて、音楽や映画、美術、料理等、様々な日本文化に触れるイベントや日本に関する最新の情報、文化交流プログラムを提供しています。こうした文化体験を通じ、受講者は日本という異文化への視野を広げ、日本語をより深く理解することができます。

たとえば、漢字、能、映画等、個別のテーマを取り上げる「日本文化アトリエ」、現地在住の日本人を交えた会話イベント「日本語しゃべろん」の開催(以上パリ)、様々なゲームや文化活動を取り入れた日本語会話クラブ「日本語で話そう!」の新設(マドリード)があげられます。

文化日本語講座・日本料理体験イベント(ブダペスト)の写真
文化日本語講座・日本料理体験イベント(ブダペスト)

日本メキシコ学院での『まるごと』拡大

国際交流基金メキシコ日本文化センターは日本メキシコ学院(メキシコ市)と共催し、2013年夏から同学院メキシココース高等部の一部で『まるごと』を用いたパイロット授業を開始しましたが、2014年度には中学部の一部にも拡大することができました。

日本メキシコ学院は、同じ敷地内に日本人学校である“日本コース”とメキシコ人子弟を主な対象にした“メキシココース”が併存するユニークな学校で、授業はもちろん、運動会等を通じて、日々両コースの生徒間での国際交流が図られています。

同学院設立以来、メキシココースでは日本語が必修でしたが、当センターは同学院からの協力要請を請け、『まるごと』を使用することにしました。ただ『まるごと』は一般成人向けに制作されている教材であるため、研修やモデル授業を繰り返し、教案づくりから授業の振り返りまで、同学院の先生と当センターの専門家は最初から試行錯誤の連続でした。

双方向の協力体制が機能し、今では予想以上の成果をあげることができています。『まるごと』を使用しているクラスでは、書道、ピクニック等多彩な日本文化の紹介もしてきました。国際交流基金の事業でメキシコを訪れるアーティストによるワークショップも行われています。『まるごと』を使用していない生徒から『まるごと』クラスの生徒にやっかみがでるほどでした。その結果、2015年からは中学部・高等部全体(26クラス360人を予定)に拡大することが決まっています。

このプロジェクトにはまだ改善点が多く残されていますが、『まるごと』で授業を楽しむ生徒の表情を励みに、これからもより良い授業を作っていきたいと思います。

インターネットを活用した教育ツール

日本語教師向けに、教材作成のための様々な素材や、教師間の情報交換の場を提供し、日々の教育活動を支援するウェブサイトを運営しています。また、学習者向けには、それぞれの学習目的に応じて利用できるウェブサイトを運営しています。

「まるごと+(まるごとプラス)初級1(A2)」を公開
「まるごと+(まるごとプラス)入門(A1)」の文法コンテンツを追加

『まるごと 日本のことばと文化』の学習者向けサポートサイト「まるごと+(まるごとプラス)」は、昨年の「入門(A1)」に続いて、2014年6月に「初級1(A2)」を公開し、継続して学習を続ける学習者の要望に応えました。「初級1(A2)」の「生活と文化」コンテンツは当初、日・英の2ヵ国語でスタートしましたが、学習者数が世界2位のインドネシア語版も制作し、加えて2014年10月には「入門(A1)」に「文法」コンテンツ(日・英・スペイン語)を追加しました。

また、「まるごと+(まるごとプラス)」を世界各地で快適に閲覧できるようにするため、CDNサーバーを導入し、アクセス環境を改善しました。

「まるごと+(まるごとプラス)」グローバルホームの画像
「まるごと+(まるごとプラス)」グローバルホーム

「まるごと+初級1(A2)」トップページの画像
「まるごと+初級1(A2)」トップページ

「まるごと+初級1(A2)生活と文化」の画像
「まるごと+初級1(A2)生活と文化」

NIHONGO eな(いいな)」さらに利用が拡大

NIHONGO eな」は日本語学習や日本文化の理解を深めるために有用なポータルサイトです。2014年度もPCサイトに加え、iOS・アプリやアンドロイド・アプリの情報紹介を継続的に行った結果、利用者の数が増加しています。紹介記事はPCサイトが253件、アプリが44件となっており、世界中の日本語学習者から利用されています。今後も、役立つコンテンツ情報の配信を続けていく予定です。

「NIHONGO eな」トップページの画像
NIHONGO eな」トップページ

WEB版「エリンが挑戦! にほんごできます。」 世界中で利用広がる

全8言語で公開しているeラーニングサイトWEB版 「エリンが挑戦! にほんごできます。」は、2014年度もさらに多くの世界中の日本語学習者に、エリンと一緒に楽しく日本語と日本文化に挑戦してもらえるよう、サイトの充実に努めました。

WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」トップページの画像
WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」トップページ

「みんなの教材サイト」継続的に素材を追加

日本語教師を支援する「みんなの教材サイト」は、開設から12年目を迎えました。2014年度も利用者からの要望に応え写真・イラスト・読解素材を追加し、サイト内容の充実を目指しました。

「みんなの教材サイト」:新規読解素材「日本では今」の画像
「みんなの教材サイト」:新規読解素材「日本では今」

日本語能力試験(JLPT)

日本語能力試験(JLPTJapanese-Language Proficiency Test、以下JLPT)は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験です。若年者から社会人まで幅広い層の受験者によって、日本語の実力測定、就職や昇進、大学への入学のため等、様々に活用されています。試験問題の作成と海外各地での試験実施は国際交流基金が、国内での試験実施は共催者である公益財団法人日本国際教育支援協会が行っています。

JLPTN1からN5までの5つのレベルに分かれており、受験者は自己の日本語能力に適したレベルを受験することができます。N1レベルとN2レベルは「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」の2科目、N3レベルからN5レベルは「言語知識(文字・語彙)」、「言語知識(文法)・読解」、「聴解」の3科目で構成されています。

全世界で59万人が受験

2014年度の実施状況は次の通りです。

  • 第1回(7月6日)
    海外23ヵ国・地域の105都市で実施。応募者約24.1万人、受験者約20.7万人。
    国内45都道府県で実施。応募者約7.1万人、受験者約6.6万人。
  • 第2回(12月7日)
    海外65ヵ国・地域の208都市で実施。応募者約28.4万人、受験者約24.3万人。
    国内45都道府県で実施。応募者約8.6万人、受験者約7.9万人。

実施の拡大

2014年度も実施国・都市が増えました。
新規実施国 :南アフリカ(ヨハネスブルク)
新規実施都市:原州(韓国)、アルバイヘール(モンゴル)、コロンバス及びボルダー(米国)、グラナダ(スペイン)、ストラスブール(フランス)、アストラハン(ロシア)

試験開始を待つ受験者(ブダペスト)の写真
試験開始を待つ受験者(ブダペスト)

受験上の特別措置

JLPTでは身体などに障害がある方のために受験特別措置を行っています。受験者からの申請と医師による診断書に基づき、専門家の審査を経て、必要な措置を決定しています。主な措置の内容は、点字による出題および解答、問題用紙の拡大、拡大鏡の使用、試験時間の延長、聴解試験の際の補助器の使用、別室受験等です。特別措置により、国内外において第1回試験では78人、第2回試験では137人が受験しました。

日本語能力試験公式ウェブサイト上には、『日本語能力試験公式問題集』等の資料が視覚障害者向けの点字データでも掲載してあります。
日本語能力試験公式ウェブサイト:点字ファイルダウンロード(http://www.jlpt.jp/tenji.html)別サイトに移動します

受験特別措置により、拡大読書機(CCTV)を使用する受験者の写真
受験特別措置により、拡大読書機(CCTV)を使用する受験者

JLPTによる認定の活用

約30年の歴史をもつJLPTは、国内外で、大学入試や卒業、留学、就職、昇進・昇格等にあたっての要件や基準として、ますます活用されるようになっています。

経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日する看護師・介護福祉士の候補者は、N5レベル程度(インドネシア、フィリピン)またはN3レベル(ベトナム)以上の認定が必要です。また、N1レベル認定者には、高度人材に対する日本の出入国管理上の優遇制度において15ポイントが付与されます。厚生労働省所轄の医師国家試験、准看護師試験などの受験資格の要件としてもN1レベルが活用されています。

日本語能力試験公式問題集(N3)の画像
日本語能力試験公式問題集(N3)より