(1)概観
【伝統舞踊】
伝統舞踊(および伝統音楽)は、王立舞踊学校や国立大学の伝統舞踊学科等で、集中的に訓練が行なわれている。小学校にも伝統舞踊・音楽の時間が設けられており、伝統舞踊・音楽の素養は多くの国民が持っている。これら伝統舞踊・音楽は観光施設(レストラン等)で上演されることは多いものの、本格的な公演として上演される機会は少ない。大衆喜劇であるリケーはお祭りや寺の行事にあわせて頻繁に上演されているが、本格的な仮面劇コーンは年に数回しか上演されない。大衆喜劇リケーのスタイルは、テレビのバラエティ番組にも、形を変えて継承されている。また、100年以上の歴史をもつタイの人形劇(ラコーン・フン・レック)は現在、ジョールイス劇団の努力により、ルンピニナイトバザール内の専用劇場で定期的に上演されるようになった。タイ南部で有名な影絵芝居(ナン・ヤーイ)も細々とではあるが、次代に継承すべく、各劇団が工夫を凝らした上演を試みている。なお、タイ王族のうち、シリントーン王女は伝統音楽に造詣が深く、ソー・ドゥアン(タイフィドル)とランナー・エーク(タイ木琴)を自ら演奏される。
【現代演劇】
商業ベースでは、近年、タイのトップスター等を起用したミュージカルが盛んである。小劇場系劇団による公演は観客の動員が難しいようである。劇場の数も限られているため、これら劇団は、その都度、レストランの一角やビルの一室など場所に工夫を凝らして公演を行なっているが、経常的に活動していける劇団はほとんどないといってよい。劇場をもつ劇団としては、パトラバディ劇場、モラドークマイ劇団(客席数80席程度)などがあげられる。その他、B-Floorはフィジカルシアター的な舞台を目指し、劇団8×8は劇作家のニコーン・セタンを中心に都会的な舞台を上演している。ピピット・ニミットクンを中心にかつて活発に活動していた劇団クレセント・ムーンは、同氏の脱退後、やや活動が少ない。そのほか、劇団マカンポンや劇団マヤ・ボックス等は、教育機関や国際機関から助成を受けながら、地方の学校やコミュニティで現代演劇ワークショップを積極的に実施している。また、各大学演劇学科主催による公演も活発に行なわれている。特にチュラロンコン大学、タマサート大学、バンコク大学演劇学科による公演は観客も多く、レビュー記事が新聞に掲載されるなど、注目されている。
【ダンス】
モダン・ダンス、クラシック・ダンスは各種民間学校も充実しており盛んな様子であるが、コンテンポラリー・ダンスはソロの活躍にとどまっている。例えば、ピーラモン・チョンタワット等の活躍が目立つ程度である。またルーク・トゥンと呼ばれる音楽ジャンルのコンサートでは、歌手のバックダンサー(ハーン・クルアン)が独特の振付で踊っている。
【音楽】
クラシック音楽では、バンコク・シンフォニー・オーケストラがタイで唯一定期公演を行なうオーケストラとして活動しているが、運営資金不足に悩んでいる。オペラとしては、ソムタウ・スッチャリッタクンがバンコクオペラ財団を設立して毎年公演を行なうなど、その普及に努めている。また、例年9月〜10月にかけてタイ文化センターで開催される国際舞踊音楽祭(International Festival of Dance and Music)は2005年で第7回を重ね、オペラ、ダンス、コンサートなど、各国トップレベルの舞台公演を実施するフェスティバルとして定着してきたようである。ポップミュージックでは、GMMグラミー社とRSプロモーション社の業界大手の影響力が強いが、アート志向の音楽を提供するベーカリー社、インディーズレーベルのファランポーン・リッディム、スモールルームなどの音楽も注目されている。また、「生きるための歌」というジャンルを確立したカラワンやカラバオなどフォークソング系のバンドも根強い人気を誇っているほか、ルークトゥン、モーラムなどの大衆歌謡曲系の音楽も、あいかわらず労働者や地方の人々に人気が高い。教育施設では、国立マヒドン大学がタイで唯一音楽学部を持ち、伝統音楽から西洋音楽まで幅広いカリキュラムを用意し、専用のホールも持ち合わせている。なお、現プーミポン国王のジャズ好きはつとに有名で、ご自身も自らサックスを演奏なさるほどである。
このページの先頭へもどる