Private Mythology: Contemporary Art from India
−−神話を紡ぐ作家たち−−
I. 企画趣旨
インドと日本とは近代美術史の1ページにおいて、密接な交流をもっていました。20世紀の初頭に、岡倉天心はインドに滞在し詩聖タゴールと共に新たな美術運動を興しました。しかし、残念なことに両国の美術はその後、かなり遠い関係になってしまったまま今日に至っています。
1947年の独立後、インドの美術は、歴史的、文化的背景を強く反映しながら、西欧モダニズムの影響を受けつつ、実に多様な発展を遂げて来ました。今日の美術もまた到底一つの視点では語りえない展開を見せており、むしろその多様性自体がこの国ならではの特色をなしているとも言えるでしょう。この魅力的な“混沌”は、もちろん広大な亜大陸の文化の奥行きの深さのゆえでもありますが、同時に、アーティストたちがいずれも特定のイズムや運動には集約されない、それぞれの固有の問題意識を抱え、考えようによっては、西欧のそれとはまた違う意味での、優れて個人主義的な姿勢を有しているからかもしれません。
ここに出品している美術家たちは、各人の先鋭な現代的表現の中に、豊かな民族的伝統や宗教性を深く踏まえ、しかもそれを極めて私的なモチベーションによって捉え直し、アイデンティティの探求と重なり合った、個々の物語を作り出そうとしています。それは、あたかも人々の日常生活の中に現在も生きる多様な神々のように、現代作家たちのそれぞれの神話として語られています。
本展は、8人の美術家による絵画、彫刻、インスタレーションなど約30点から構成されており、インド現代美術のもっとも新しい動向を紹介します。この企画はインドの現代美術の一断面を紹介するに過ぎませんが、同じアジアにある国として、将来の両国の交流のための新たな第一歩と考えています。その意義に期待していただければ幸いです。
II. 展覧会概要
| 1. タイトル: |
「インド現代美術展ー神話を紡ぐ作家たち」
Private Mythology: Contemporary Art from India |
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| 2. 主催: |
国際交流基金アジアセンター |
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| 3. 会場: |
国際交流フォーラム |
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| 4. 開催期間: |
1998年10月17日(土)〜11月29日(日) 月曜休館
(ただし11月23日(月・祝)開館、24日(火)休館) |
| 開館時間: |
午前11時〜午後7時 |
| 入場料 : |
一般600円/大・高生400円/中学生以下無料 |
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| 5. 出品作家・作品: |
インドを代表する現代美術作家8人による絵画、インスタレーションなど約30点。
ブぺン・カーカル Bhupen Khakhar (b. 1934) 油彩、水彩画
"Fishermen in Goa", "Yayati", "Figures in a Landscape", "An Old Man from
Vasad Who Had Five Penises Suffered from Runny Nose", Goldsmith", "Rati
Kunjar"等
ヴィヴァン・スンダラム Vivan Sundaram (b. 1943) インスタレーション
"The Sher-Gil Archive"
ナリニ・マラニー Nalini Malani (b. 1946) インスタレーション
"The Sacred and the Profane"
ラビンダル・G.レッディRavinder G. Reddy (b.1956) 彫刻
"Under the Tree", "Devi", "Woman with Lotus Flowers"
N.N. リムゾン N.N. Rimzon(b.1957) インスタレーション
シーラ・ゴウダー Sheela Gowda (b.1957) インスタレーション
"Untitled"
スダルシャン・シェーッティSudarshan Shetty (b. 1961) インスタレーション
"Untitled"
アーイシャ・アブラハムAyisha Abraham (b.1963 ) 写真, インスタレーション
"Double Helix", "Balcony Men", "The Eyes", "Thoughts of the Void", "The
Dolls"
"Fugitive Dreams", "Calling the Nation" 展覧会開催にあたり、全出品作家が来日します。また、ブペン・カーカルは東京においてドローイングを制作します。
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| 6.キュレーター: |
建畠 晢(多摩美術大学教授、美術評論家) |
III. 関連事業: シンポジウム
「インド近・現代美術とその文化的背景」(仮)
| 日時: |
1998年10月17日(土) 午後2時〜6時 (日英同時通訳) |
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| 会場: |
国際交流基金国際会議場 |
| 内容: |
インドの近・現代美術の歴史とその思想的背景を考察する。また、モダニズムという視点及び前衛運動などを戦後の日本現代美術との比較を試みることによって検証し、インド現代美術の全体像にせまる。 |
| 出席: |
ギータ・カプール(美術評論家)
ナリニ・マラニー(美術家)
ラビンダル・G.レッディ(美術家)
岡崎乾二郎(美術家)
黒田雷児(福岡市美術館アジア美術館開設担当学芸員)
建畠晢(司会:美術評論家)
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| 定員: |
150名 入場無料 |
ギータ・カプール(Ms. Geeta Kapur)プロフィール
1943年ラホール生まれ。ニューヨーク大学で美術修士号を、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)で美術評論の修士号を取得。美術評論家として活躍する一方で、フリーのキュレーターとして国内外の展覧会を企画する。ヨハネスブルグやハバナなど海外の国際展にも多く参画しているが、昨年のドクメンタXでは「100days,100guests」でレクチャーを行なった。インド現代美術評論の第一人者。著書にContemporary
Indian Artists(Delhi,1979), K.G. Subramanyan(Delhi, 1987)など。ニューデリー在住。
IV. インドの現代美術状況
私たち日本人が思い描く「インド」と言えば、「お釈迦様の国」、「ガンディーの国」、といった伝統的で漠然としたイメージが一般的でした。が、最近ではいきなり唐突に「核実験の国」として印象がそこに加わります。ともあれ、アジアの情報が飛躍的に増えた現在でも、9億5000万の人口を擁す南アジア屈指の国インドの実像は未知なる部分が多いわけです。しかし一方、周囲によく目を配ると、町中にはインド料理店が増えバラエティーに富んだインド料理を味わうことができるようになりました。また、脈絡もなく突然歌って踊り出すモマサラ・ムービーモと称される大衆的なインド娯楽映画が、日本の一般上映館で公開されることもチラホラ見かけられるようになりました。何しろインドの映画は年間800本製作されるということですから驚きです。このように大衆的な文化は、徐々にですが、日本に浸透しつつあります。
さて、現代美術の分野はどうでしょう。最新のインド現代美術をイメージすることができるでしょうか? もちろん、小規模な現代美術展や、ミティーラ画やワルリー画など伝統的な絵画の展覧会はありました。けれども、中国、韓国や東南アジアと比較して、その情報は格段に差があることは事実です。したがって、今でもインドの美術と言えば、20世紀初めの岡倉天心とラヴィーンドラナート・タゴールの幸福な交流史から始めて、その後がイメージできないという状況が続いているわけです。(インドの美術界においても日本についての情報は同じ状況です)
現在のように多くのアジアの現代美術が紹介されるようになったいま、南アジアの主要国インドの現代美術状況を踏まえることなく、アジア地域の美術を語ることはできません。そこには、東アジアとも東南アジアとも異なる状況のインドの現代美術があります。
多様な国インドの広大な国土にいくつかの美術の拠点があり、カルカッタ、チェンナイ(マドラス)、ムンバイー(ボンベイ)、バローダ、ニューデリーなどの各都市が、それぞれの出発点と特徴を持ち、互いに影響を与えながら発展し、現在に至っています。タゴールの美術大学(シャーンティニケータン)に近いカルカッタや、南インドの中心チェンナイは、戦後の美術運動の一翼を担いましたが、現在では、バローダが美術教育の中心としての地位を確立し、ニューデリーやムンバイーは美術マーケットの2大中心地として重要な役割を果たしています。歴史的には旧宗主国である英国の影響も無視できません。
今回の展覧会では、出品作家は、バローダ、ムンバイー、トリヴァンドラム、バンガロール、ヴィシャカパトナム、ニューデリーと、インド各地から選ばれています。また、年齢層もさまざまです。ナラティブな作風のバローダ派から出発し、独自の才能を開花したブペン・カーカルは今年64才。本展で一番若いアーイシャ・アブラハムは35才で、写真を用いたインスタレーションを試みます。中堅ともいえるナリニ・マラニーやヴィヴァン・スンダラム、ラビンダル・G.レッディやN.N.
リムゾンなどは海外で組織されるインド現代美術展には常に欠かせない、国際的な作家たちです。また、フェミニズムの視点を繊細な作品に表わすシーラ・ゴウダーや、現代インドの青年作家層を代表するスダルシャン・シェーッティがいます。
アジアセンターとしては初めてインドの現代美術にじっくり取り組んでみました。中規模な展覧会ではありますが、その作家層と作品内容には実に多様なものがあります。
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