![]() サンチャゴ大学の学生たち:LL教室にて (日本国政府の一般文化無償資金協力による支援) |
チリ共和国における日本語教育専門家の業務は、派遣先機関であるサンチャゴ大学での仕事と、チリ全体での仕事との二つに大きく分けられます。サンチャゴ大学に派遣されてから約1年半経ちましたが、これまで派遣目的であるカリキュラム改訂や教材開発の業務はもとより、弁論大会やネットワーク構築支援に力を入れてきました。
サンチャゴ大学は、南米スペイン語圏で唯一日本語を専門に学べる高等教育機関です。しかし、これまではカリキュラムの事情により、5年間の課程が修了しても日本語能力試験2級合格レベルに到達せず、聴解・会話も十分にできない学生がほとんどでした。そこで着任当初から、ORAL面の強化と日本語能力試験2級合格レベル相当の日本語力を身につけさせるよう力を入れてきました。
担当している総合日本語の時間では、学生が受け身にならず主体的に教室運営に関われるよう、学生が分担でメディア教材を作成し教壇に立って他の学生に説明するように指導しました。徐々に指導成果が出始めてきており、中には2級合格レベルをクリアし、現在は1級合格を目指して勉強している学生や、日本語教師志望の学生も増えてきています。
また、ORAL面のみで評価するクラスを設け、社会問題に関するDVDを視聴してディスカッションをさせたり、外部の方に講演をして頂いて日本語で質問させたりすることによって、これまで学んできた日本語を実際に活かせるようになってきました。
さらに国際交流基金日本語教育専門家(以下、JF専門家)、チリ人教師2名、補習担当の助手1名の4名によるチームティーチングで1年生を教えるようにし、ORAL指導、漢字指導等、新入生の時から基礎固めができるようにしています。
次にチリ共和国全体での活動を紹介します。当地では一昨年まで、長年日本とチリの文化交流に貢献されてきた日智文化協会が主催となり、単独開催による弁論大会が実施されてきましたが、現地スタッフや関係機関の様々な要望により、昨年は9機関の代表者からなる「弁論大会実行委員会」が組織され、当組織が主催機関となり、初の全国規模での開催となりました。実行委員会を組織するにあたって、JF専門家には委員会召集における中心的役割が期待され、大会が成功するために委員会を全面的に支援しました。今年は現地による自立的運営ができるよう側面支援に努めております。
また、2009年3月には、チリ南部の都市バルディビアにあるアウストラル大学において「第1回チリ共和国日本語教育セミナー」が開催されました。このセミナーは日本語教育の普及と向上だけでなく「チリにおける日本語教育ネットワーク構築」を目的として開催されたものです。計画的移民が行われなかったチリは他の南米諸国に比べてこれまで日本語学習者数も少なく、数年前まで主要日本語教育機関は首都サンチャゴにある2機関しかありませんでしたが、近年の日本語学習者の増加に伴い、ここ数年で各地に日本語教育機関が新たに開設されました。このようなチリにおけるネットワーク構築の必要性から、JICAシニアボランティアの先生方とともに準備し、ようやく本セミナーが開催される運びとなりました。
セミナー開催地アウストラル大学はチリ最南端の日本語教育機関であり、首都サンチャゴから約800キロ離れた遠隔地にあるにも関わらず、サンチャゴ大学、チリ中央日本人会、第五州バルパライソ日系協会、約2150キロ離れたアントファガスタにあるチリ最北日本語教育機関カトリカデルノルテ大学の5機関から30名余りが参加して交流を深めました。
セミナー講演は「メディア教材を使用した学生主体の教室運営—学生のモティベーション向上のために—」という題目でJF専門家が行い、学習者がメディア教材を作成して主体的に教室運営に参加するためのシステム作りとその効果について述べました。ワークショップでは、JICAシニアボランティア3名の先生によるメディア教材に関する発表と、JF専門家による「国際交流基金『みんなの教材サイト』を使用した教材作成」の発表が行われ、その後、参加者全員が実際にメディア教材を作成し、その成果を披露し合いました。セミナー終了後には開催校言語センター長から全員にコーヒーとケーキが振る舞われ、参加者同士が交流して親交を深め、その後上記遠隔地からの参加者の多くが夜の交歓会に出席し、和やかな雰囲気の中で忌憚ない意見交換がなされ、教師間・学生間の親睦がさらに深まりました。
チリ最北から最南端にまたがる各日本語教育機関日本語教師及び他言語教師や学生達が交流し、日本語教授法・教材作成法について学び実践するこのようなセミナーの実施は当地においては初の試みでしたが、開催地の方々及び参加者のご協力とご支援により、当初の目的に対して充分な成果が得られ、セミナーは成功裏に終わりました。また、講演やワークショップで学んだことを実際の指導にぜひ取り入れたいという声が多数聞かれ、その後実践している参加者も見られます。今後は現地日本語教師による自主的開催がなされるよう、引き続き支援していきたいと考えています。
