前号(2008年度)では、パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris、以下MCJP)の日本語事業部(日本語班)の多様な業務についてお話ししました。今回はその中で、現在MCJP日本語班の業務の中心となっている、「日本語関連イベント」と「日本語教師研修」の2つに注目してお伝えしたいと思います。
<日本語関連イベント>
![]() 『エリンが挑戦!にほんごできます。』を用いた「マンガと日本語のコンテスト」の募集パンフレット |
MCJPでは、各種の日本文化に関する講座、コンサート、演劇、ダンス、映画、講演、シンポジウムなど、様々なイベントが年間を通じて行われています。日本語や日本語教育に関するイベントも種々あり、例えば、広く一般の人に日本語を紹介し、楽しく日本語に触れてもらうことを目的とした日本語体験講座「日本語であそぼう!」、中級や上級の学習者を対象としたテーマ別の短期講座※などを行っています。また、フランス国内で日本語を学習している中高生から社会人を対象に、毎年3月に「全仏日本語スピーチコンテスト」を企画・実施しています。
2009年5月現在もイベント実施中です。「マンガと日本語のコンテスト」というもので、今年7月にMCJPで開催される日本のポップカルチャーに関するイベントにあわせた企画です。このコンテストは、①『エリンが挑戦!にほんごできます。』の漫画(作画 柳リカ)の吹き出しにセリフを入れ、その内容の面白さとオリジナリティーを競う部門、②作品の一部に日本語を取りいれることを条件とした自作マンガの部門があり、日本語学習者に限らず、広く一般に公募しています。
このように、年間を通じて様々なイベントに取り組んでいるのは、MCJPの日本語事業の特徴の一つと言えるでしょう。それは、日本・日本文化に対する関心が一般的に高く、日本語に関する様々なニーズが存在するフランスの状況が背景にあることは言うまでもありません。複数のイベントの企画立案から実施、評価までを同時並行で進めていくのは容易ではありませんが、その分手作りで(そして手探りで?)実施していく醍醐味があります。
<日本語教師研修>
![]() 2008年度欧州日本語教師研修会第1週目参加者。2008年度は第1週、第2週あわせて20カ国から41名が参加した。 |
MCJPでは、秋期・冬期・春期の年3回、日本語教育実習や「国際交流基金 日本語教授法シリーズ」を活用した講座など、毎回テーマを決めて日本語教師向けの研修会を実施しています。定期講座の実施だけでなく、ヨーロッパの日本語教師を対象とした「欧州日本語教師研修会(通称「アルザス研修会」)」にも主催団体の一つとして関わっています。
このアルザス研修会は、MCJPと研修会場であるアルザス欧州日本学研究所との主催で、2006年から毎年7月上旬にフランスのアルザス地方で開催している研修会です。2008年までの過去3年間で、ヨーロッパ各地で日本語を教えている教師のべ100名が参加しました。2009年度も、20名×2週、計40名を欧州各地から募り実施しました。この研修会は、主催者だけでなく、ヨーロッパ各国の国際交流基金海外事務所、日本語教育専門家(以下、専門家)や教師会からの支援・協力のもと行われる広域研修です。
MCJP日本語班は主催者として、研修会全体の企画、研修プログラムのデザイン、事務手続き、講師・参加者・関係機関との連絡や調整など様々な業務を行っており、その準備は半年以上前から始められます。MCJPの日本語事業としては、かなり大きなウエイトを占める企画ですが、それだけ実りの大きいものとなっています。(『国際交流基金日本語教育紀要5号』(2009年3月発行)にアルザス研修会の実施報告が掲載されています。)
このように、様々なイベントを実施しているMCJPの日本語班では、ニーズや現状を分析し、事業を企画し、そして実行する力が求められます。MCJPの専門家の業務も、実際に学習者に日本語を教えることが中心ではなく、教室ではなくオフィスで、学習者の前ではなくコンピューターの前で過ごすことが大半なのですが、日本語教育を違った角度でとらえることができる貴重な機会だと思っています。また、このような業務は多くの人の協力があって初めて遂行できることです。周りの人と役割を分担しながら一緒に一つのものを作り上げていく楽しみを経験できるというのもこの仕事の面白さであると日々感じています。
※2008−2009年度は、中級日本語学習者を対象とした講座「『エリン』で学ぼう!楽しい日本語」を、上級学習者向けには「歌で学ぶ日本の社会」を実施。

