①フィリピンの状況
フィリピンは地理的に近い東南アジアの国であり、日本在住外国人の国籍別で第4位に位置するほど日本との交流が盛んであることから、他の東南アジア諸国同様、日本語教育が盛んなイメージを持たれるかもしれない。しかしながら、歴史的な経緯(スペイン支配下約300年、その後アメリカ支配下約50年)がこの国の言語事情に大きな影響を与えており、国語であるフィリピノ語の確立と、アメリカ支配下により根付いた他国に優る英語力の維持に重点が置かれ、日本語を含めた他の外国語教育については大きな動きを作りにくいのが実情である。
一方で、日本で働くことに生活の希望を見出し、日本に行きたいと考えるフィリピン人は潜在的に多く、近年の日本のアニメやポップカルチャーに対する特に若年層の関心も相まって学習者数は増えてきている。その学習ニーズはあるものの、前述したような事情に起因して日本語教育の機会が満たされていないのが最大の問題点と言える。
大学では、初級前半に到達しないレベルの日本語講座がほとんどであり、またフィリピンの小中高校では、日本語を学科として取り入れている学校は数校に過ぎない。さらに民間機関においても中級以上を学べる日本語学校は数えるほどしかなく、教授法を学べる学校にいたっては一校のみである。つまり、日本語教師に必要な日本語力や教授法を学ぶ機会が極めて少ないのである。
②最近の当センターの活動と成果
このような状況を打開すべく、自ずから当センターの活動は「日本語教師の育成」に重点をおいている。その手段として「日本語力及び教授法の研修」、「教師間ネットワークの構築」、「定期的かつ継続的な勉強会やフォーラム等の実施」を具体的な事業として行っている。
また、このような教師の底上げという「人材育成=横の広がり」と同時に、教育機関や政府への働きかけにより、日本語教育の導入を図る「仕組みの構築=縦の広がり」を地道に行うことで、日本語教育の展開・拡充を図っている。
将来のフィリピンの日本語教育を担う教師の質・量の底上げを図り、フィリピン人教師の多くを占める、初級修了レベルの教師対象の研修を最重点課題として取り組んでおり、着実に力をつけた教師が増えてきている。教授法を学ばずに教師の仕事を始めることができるフィリピンの状況自体に問題があると言えるが、「教師として教授法を学ぶことが必要である」という出発点がやっと認識されてきたように感じる。
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フィリピン人の日本語教師で組織されているフィリピン人日本語教師会(AFINITE)はここ数年、幹部の意欲により活発な活動を行っている。当センターと目指す方向性を同じくし、教師研修や日本語教師フォーラムなどにおいて連携が強化されてきた。相互の強みを活かした活動を持続させることにより、日本語教育の将来の展開に向けて大きな可能性を持ち始めたと言える。
当センターの日本語力向上コースと教授法のコースを続けて受講する教師の増加や、それを他の教師に紹介したりシェアしようとする動きは、とても嬉しく、また頼もしく思う。フィリピン人の気質の良いところは、何事も大勢で集まってみんなで楽しむことを好むところであり、向上心を持った教師たちが増え、共に学ぼうとする環境ができつつあるフィリピンの日本語教育は今、熱い。これには、当センターのフィリピン人日本語教師がセンターとフィリピン人教師をつなぐ媒介役として奮闘してくれていることが大きく貢献している。
③今後の展開−地方支援と中等教育での日本語教育導入
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マニラ首都圏での継続的な活動の一方で、地方への支援も進めている。地方は首都圏以上に教師の育成の問題がある。そこで、センターで行っている教師研修を初めて地方(セブ)へ出張して行うことを試みている。セブでも何回かセミナーの形で勉強会を行っており、それを契機に教師会が結成されたが、センターからの働きかけがないと活動が停滞してしまう。この教師研修を行うことは、同時にセブの教師会ネットワークの活性化を図る意味合いもある。
さらに、従来中等教育レベルでは数校しか日本語教育が行われていなかったが、21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム)により日本人若手教師の派遣が開始されたため、関心のある首都圏の高校(日本の中学校に相当)で日本語教育を開始する高校も出てきた。現在、フィリピン政府が日本語を正式科目としていくつかの高校に導入しようという動きもあり、当センターでは高校のフィリピン人教師対象に研修を行うなど、中等教育の日本語教育に力を入れているところである。

