1.コンケン大学教育学部の位置づけ
![]() 教育学部校舎 |
コンケン大学は広大なタイ東北地方の中心的な役割を担っている国立総合大学です。コンケン大学教育学部に「タイ初」の日本語教員養成課程が開設されたのは2004年。2010年3月に第2期生が5年間の課程を修了したばかりの、まだ立ち上げ期にある養成課程に報告者は日本語教育アドバイザーとして派遣されています。
ここで、「『タイ初』の日本語教員養成課程と言うけれど、じゃあ、今まで中学校や高校の日本語の先生は、どうやって先生になったの?」と疑問を持つ方がいると思います。その答えは「日本語の免状ではなく、他教科の免状を持った先生が日本語を(も)教えていた」です。そして、他教科の先生はタイ教育省と国際交流基金バンコク日本文化センター(以下、JFBKK)が実施する「新規研修」を修了するなどして、日本語教師としての力を身につけてきました。
しかし、タイの一連の教育改革の流れの中で、2003年に「教育専門職免許制度」が創設され、この新制度に沿った日本語教育課程が2004年にコンケン大学に、2005年にブラパー大学(バンコク近郊)にできました。これらの課程の学生は卒業とともに「日本語の免状」を取得することができます。そして、今までJFBKKに多くの部分を負っていた学校教育の日本語教員養成が、タイの大学でも可能になったのです。
2010年3月、5年の課程を終え、コンケン大学では第2期生が卒業しました。タイでも大卒ですぐに教員になることは難しいのですが、新年度から教壇に立つという卒業生の情報も入ってきています。
2.若手大学教員の育成
さて、コンケン大学は、タイにおける日本語教員養成課程のパイオニアとして、後続校のモデルとなるカリキュラムの確立を目指しています。この新たな試みに果敢に挑戦しているのは、当課程第1期生で、卒業後すぐに大学教員となった3人のタイ人専任教員です。新制度施行後初の卒業生を抜擢するのは思い切った試みですが、教育学部卒業生なら、人文社会系「日本語専攻」の大学教員にとって理解しにくい「学校教育の教員養成」という文脈がよくわかっており、教育学部の教員に向いていると考えられます。大学側も彼らの育成に積極的です。
大学教員1年目の2009年度、3人は自分たちの1つ下の学年である第2期生の教育実習指導、評価をはじめ、後輩に当たる1年生から4年生までの日本語および日本語教授法の授業を、2名の日本人教員とのチーム・ティーチングで行ってきました。コース運営、シラバス作成、学生指導、評価、行事実施、留学生の送り出しなど、すべてが初めてのことで、苦労もあったと思います。
![]() 日本語教育課程スタッフ |
しかし、この1年の彼らの成長には目を見張るものがあります。それを支えているのは、彼らのコンケン大学への思いと情熱ではないでしょうか。2年目も、通常業務のかたわら日本語力や専門性、教授能力向上に努めるだけでなく、修士課程進学に向け研究計画に取り組むなど、やるべきことがたくさんあります。将来当課程が東北地方の中心的な役割を担うことをイメージしながら、目標を持って業務に従事しています。
3.日本語教育アドバイザーの仕事
当課程を軌道に乗せるためにサポートするのがアドバイザーの任務ですが、業務は多岐に渡ります。たとえば、以下のようなものです。
・日本語教育課程運営
・5年間の日本語教育課程学修モデル確立のための基盤作り
・教育実習の指導、評価に関する具体的な方法確立のための基盤作り
・日本語教育課程タイ人専任教員育成
・課外活動の企画、運営
・日本の大学との提携、学生の日本留学に関する協力
・東北地方の初等、中等教育日本語教員とのネットワーク構築
・外部セミナー、ワークショップへの協力
これらの業務は当課程のスタッフをはじめ、たくさんの人たちとの協働がなければ遂行することはできません。大学内にとどまらず、東北地方の初・中等教育の先生方、日本語教育関係者のみなさんとともに、コンケン大学教育学部は日本語教師養成課程のパイオニアとしての道を歩み続けます。

