ブルガリアには日本語を主専攻とする中高等教育機関や、選択科目または公開講座として日本語講座が開設されている公的教育機関が幾つかありますが、国際交流基金の日本語教育専門家(以下、「JF専門家」と略す)の派遣先である「ソフィア大学古典および現代言語文学部東アジア言語文化学科日本専攻」(以下、「ソフィア大学日本専攻」と略す)は、ブルガリアで唯一日本語教育だけでなく、日本学を志向する高等教育機関で、ブルガリアの日本学・日本語教育をリードする立場にあります。そのため、JF専門家には大きく以下の二つの業務が期待されていると言えます。
(1) ブルガリアの日本語教育全体の発展と国内および近隣諸国における日本語教育ネットワークの構築に寄与する。
(2) ブルガリア人日本語教師とともにソフィア大学日本専攻、特に日本語講座の高い専門性と教育水準を維持する。
以下では、この二点について簡単にご紹介したいと思います。
【ブルガリアの日本語教育の発展と日本語教育ネットワークの構築】
ブルガリアには非営利団体法人として認可されている「ブルガリア日本語教師会」(以下、「教師会」と略す)があります。当教師会は2003年7月に設立されて以来、毎年セミナーやシンポジウムなどを開催し、ブルガリアのみならず、隣のルーマニアやその他の近隣諸国の日本語教育に貢献してきました(過去に開催されたセミナー、シンポジウムについてはこのHPの2006年度版をご参照ください)。JF専門家は、このようなイベント開催時に国内外の関係諸機関との橋渡し役になるとともに、教師会のアドバイザー的存在として全面的に協力しています。
また、このような大きなイベント開催のバックアップ以外にも、日頃から日本語教師間の連携やネットワーク構築に気を配ったり、日本語・日本文化関連行事等の情報提供や広報に協力したり、様々な教育機関で活動する個々の日本語教師の相談に乗ったりもしています。時には、他の教育機関へ赴き、日本語教師だけでなく、その機関の事務担当者等と話をしたりすることもあります。
その他、ブルガリアでは他機関の主催で毎年「日本語弁論大会」が開催されていますが、そこでも審査基準の見直し、検討事項の取りまとめ、関係機関への連絡や橋渡し、広報等に協力しています。以上のように、ブルガリアのJF専門家はブルガリア全土における日本語教育全般を様々な側面からバックアップしているのです。
【ソフィア大学日本専攻】
![]() 第2回ソフィア大学日本文化祭のひとコマ(狂言「濯ぎ川」) |
![]() ソフィア大学日本留学報告会のひとコマ |
ソフィア大学日本専攻は、ソフィア大学の専攻の中でも最も入学競争率の高い専攻の一つです。毎年選び抜かれた優秀な学生が15名前後入学してきます。前述したように、同日本専攻はブルガリアの日本学・日本語教育をリードする立場にあるのですが、残念なことに、JFの専門家以外に日本人教師がいません。もともと在留邦人の少ないブルガリアには大学レベルの教育に携われる日本人がおらず、また、現時点では当専攻が独自に日本人教師を採用する枠が認められていないからです。従って、ソフィア大学では学生の日本語運用能力向上のために、一人のJF専門家が非常に重要な役割を担っていると言えます。
ブルガリアは2007年1月にEUに加盟しましたが、ブルガリアの学習者にとって、日本が今も触れる機会の少ない遠い国であることに変わりはありません。そのため、ブルガリアのJF専門家は代々、学生を取り巻く日本語学習環境を少しでも改善するため、様々な取り組みをしてきました(具体的な取り組みについては2006年度版をご参照ください)。
そのような取り組みを進める際、また、日々の業務や日本語の授業においても、私自身が特に気を付けていることは、「何もかもお膳立てしない」ようにすることです。恵まれない学習環境にあるからこそ、ブルガリア人教師や学生らが、自ら気付き、機会を見出し、学ぶ術を身に付けることが大切だと思うからです。そして、そうすることによって初めて持続可能な支援が実現されるのではないかと思います。ここ数年のそのような活動の成果として、現在では2、3年生による1年生の「チューター制度」、留学経験者による「留学報告会」「留学試験対策講座」、全学生による「ソフィア大学日本文化祭」などがソフィア大学の良き伝統として根付きつつあります。日本語の授業以外のそのような側面において、ソフィア大学にJF専門家が必要なくなることが、一つの活動目標だとも言えるかもしれません。

