多くのものを吸収し、常に成長し続ける学生達

カザフ民族大学
鈴木 恵理

大学のシンボルタワーと天山山脈
大学のシンボルタワーと天山山脈

 カザフスタンは世界第9位の国土を誇り、石油やウラン鉱など多くの天然資源に恵まれた資源大国である。1997年まで首都であったアルマティは、今でもビジネスと教育の中心都市といわれ、多くの大学が集まり、大学が長期休暇に入ると交通渋滞がなくなるほどの巨大な学生街といえる。街の南にはカザフ人にとっての大きな誇り、天山山脈が連なり、アルプスを思わせる大変美しい風景が広がっている。現在、カザフスタン国内で日本語を学ぶ学習者数は約1000名。この数字は東アジアや東南アジアに比べると、決して多いとはいえないものの、皆、熱心に遠い日本に思いを馳せ、いつか日本留学すること、日本企業に就職することを夢見て、日々日本語学習に励んでいる。

■先輩から後輩へ、プレゼント企画

日本に関するクイズに白熱する後輩達
日本に関するクイズに白熱する後輩達

 カザフ民族大学日本学科では、4年次に学内教育実習を行う。教育実習を終えた2月のある日、後輩達に日本や日本語をもっと楽しんでもらいたいと4年生がクイズ大会と巻き寿司作りを企画した。

 4年生の先輩が「ではクイズです。日本で一番高い山は・・・」と文章を読み上げると、1、2年生の後輩達が「はい!はい!」と手を挙げる。先輩はそれを無視して、にやりと続ける、「・・・富士山ですが」。すると後輩達からは苦笑いが起こる。そしてクイズの続きに耳をすませる。「・・・その高さは、何メートル?」一斉に手が挙がり、一人が答える。「はい、3700メートル!」「ブー!!」と先輩。「はいはい、3777メートル!」、「ブッブー!」と先輩。あがっていた手が下がる。恐る恐る手をあげた一人が指されて「3776メートル?」。充分に時間をおいて先輩は答える、「はい、正解です!」。場内、拍手喝采。

 その後もクイズは続いた。「金閣寺があるのは、日本のどこ?」、「明治時代と昭和時代の間は何時代?」。先輩が用意した日本に関するクイズに、後輩達は大盛り上がりだった。

 クイズ大会の後、巻き寿司作りに挑戦した。器具や具材はすべて先輩が用意したものだ。先輩が後輩に向かって説明する。「これは、まきすです。そしてこの黒いものは海苔です。韓国食材店などで買うことができます。この海苔の上に、寿司酢を混ぜたご飯をこのようにのせます。」後輩達は大きく頷く。「そして、刻んだ薄焼き卵、細切りのキュウリ、マヨネーズであえたツナをのせて・・・」先輩の説明は続いた。後輩達は身を乗り出して先輩の手元に注目。「こうやって、こうやって巻いていくと・・・はい、できあがり!」後輩達からは歓声が上がり、「私もやりたい」という声が次々とあがる。全員が巻き寿司作りを体験し、試食タイム。「和食レストランで食べるお寿司とは少し違うけれど、自分で作ったお寿司が一番おいしい!」と大満足。家でも作って、家族を驚かせたいという声も聞こえてきた。

■日本語弁論大会を通して得られたもの

 ここ中央アジアは、世界でも稀に見るほど日本語弁論大会(以下、大会)が盛んな地域で、国内の学習者が競うカザフスタン大会、中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン)の代表者が競う中央アジア大会、CIS諸国の代表者が競うCIS学生大会がある。

 今年も3月に行なわれたカザフスタン大会の上位6名が、5月にウズベキスタンで行なわれた中央アジア大会に出場した。そこでカザフスタン勢は入賞2名、特別賞1名と健闘した。学生達は大会前の3ヶ月間、自分の主張と繰り返し向き合い、その都度見つめ直し、その自分の意見をより多くの人の胸に届けるために語彙や表現を慎重に選び、より聞きやすくなるように日本語の発音の練習を徹底的に行なってきた。その努力、そしてその努力から得られた自信こそが、大会参加を通じて得られた最大の賞品であったように思う。

 また中央アジア大会翌日には、現地ウズベキスタンの学生達が出場者全員を市内観光に連れて行ってくれた。各国からの出場者達がいろいろなことを話し、笑い、心から溶け込めた様子で、来年の中央アジア大会での再会を約束し合っている姿があちらこちらで見られた。中央アジアという地域で、隣接して暮らしているそれぞれの民族は、似ている習慣、似ている料理、似ている伝統文化を持している。しかしながら、それぞれの緯度、土壌、歴史などの影響を受けて、少しずつその土地らしく変容している様々なことに触れ、カザフスタンの学生達は非常に感銘を受けたようであった。こうして弁論の結果だけでなく、多くの収穫を得て、すがすがしい気持ちで帰国した学生達であった。



■ 派遣先機関の情報
イ. 派遣先機関の位置付け
及び業務内容
カザフ民族大学東洋学部日本学科は、カザフスタン国内で最も歴史ある日本語・日本学専門課程である。設置目的は、日本語・日本学研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成であり、言語のみならず、歴史や文化などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。卒業生は、日本語教師、日本史教師、日本企業・機関の現地スタッフ等、カザフスタン国内の幅広い分野で活躍している。ジュニア専門家は、日本学科での日本語教授、シラバス作成に対する助言、現地教師への助言・サポートを行う。
ロ. 派遣先機関名称
アル・ファラビ名称カザフ民族大学
Kazakh National University named after al-Farabi
ハ. 所在地
61a Amangeldy Steet, Almaty, 480121, Republic of Kazakhstan
ニ. 国際交流基金派遣者数
ジュニア専門家1名
ホ. 日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部日本学科、国際関係学部
ヘ. 日本語講座の概要
(イ)沿革
 
(1)講座(業務)開始年   1992年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1995年

(ロ)コース種別
  専攻、副専攻、選択必修

(ハ)現地教授スタッフ
  常勤18名(うち、邦人0名)

(ニ)学生の履修状況
 
(1) 履修者の内訳   主専攻:86名、副専攻:52名、選択必修:6名
(2) 学習の主な動機 日系企業への就職希望、日本文化への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 大学院進学、日本関係各機関への就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級合格程度
(5) 日本への留学人数 10名程度(私費留学含む)


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