私の赴任先機関であるヤギェロン大学は、ポーランドの美しい古都クラクフにあります。1987年から国際交流基金より日本語専門家(以下、専門家)が派遣されており、専門家は、ヤギェロン大学およびポーランド全体の日本語教育向上のための支援を行うことを業務としています。
●今年は学生主導−日本学合同合宿
今年も昨年に引き続き、日本学科の国際合同合宿が開催されました。参加大学は昨年と同じくポーランド、チェコ、スロバキアから5大学、そして新たにドイツのボッフム大学が加わりました。今年の合宿の特徴は、何といっても学生自らが企画、準備、実行していったことです。ヤギェロン大学の学生実行委員3人の活躍が他の大学の学生に刺激を与え、来年は自分たちの手でという声が聞かれたのは大変うれしいことでした。
報告者は今年も日本語セッションのコーディネートを担当しました。メールで連絡をとりながら、時間割を組み、活動案を検討し、先生方が教案を共有できるようにしました。通常業務の傍らメールによるコーディネートを行うのは大変でしたが、参加した先生方から、刺激を受けた、来てよかったというコメントをもらったときには、疲れも吹き飛んでしまいました。今回は、特にポーランドの日本語主専攻の大学の先生方に参加してもらい関心を持ってもらえたことが、何よりの成果でした。今後もこの学生合宿を支えていってくださるものと期待しています。
●自律学習の成果−ビジネス会話DVD
ヤギェロン大学修士1年の学生たち |
派遣先機関のヤギェロン大学では、1年生、3年生、修士1年生の授業を担当しています。毎年、学生にとって何が必要か、どんな授業が望ましいのかをいろいろと考えて、授業に変化をもたせています。今年の新しい試みは、学科長のフシチャ先生と二人体制で1年生の発音の授業を受け持ったことです。一コマ発音だけに集中する時間を設けたことで、学生の発話が例年よりスムーズになり、アクセントのくせもなくなってきたように思います。
もう一つは、修士1年生の授業に自律学習の時間を導入してみたことです。学年が上がるにつれ、一人一人の学生のニーズの違いも大きくなっていきます。そこで、各自で自分に必要なことを考え、グループで計画をたてて学習をすすめていく時間を設けました。友達と話すときのカジュアルな会話を練習するグループ、会話と文法を両方練習するグループ、そしてビジネス会話を練習するグループの3つに分かれています。中でも、ビジネス会話グループは、自らDVD教材を作成し、学生合同合宿のときに披露して、集まった学生からも先生方からも好評を博しました。
●とにかく続けよう−クラクフ日本語教育勉強会
日本美術技術博物館Manggha |
ポーランド日本語教師会では、年に2回ワルシャワで勉強会を行っています。しかし、ワルシャワまで行くには費用も時間もかかりますので、いつも多くの会員が集まれるとは限りません。クラクフの会員もあまり参加していません。そこで、クラクフだけで定期的に勉強会を行ったらどうかと考えました。クラクフの日本美術技術博物館Manggha(通称マンガセンター)には、京都クラクフ基金日本語学校があります。まずそこに呼びかけて、月に一度の勉強会を開くことにしました。日本語を教えている人、教え始めようとしている人、日本語教育に関心のある人はだれでも参加できます。京都クラクフ基金日本語学校には、国際交流基金より日本語指導助手(以下、指導助手)が派遣されています。毎回開催日時の連絡など事務的な手続きを指導助手が受け持ってくれており、二人で協力して行っています。
最初は、セミナー形式で、学会などで発表された日本語教育の新しい動向などを紹介していましたが、もっと身近なことのほうがいいという声もあり、最近では、一冊のテキストを一課ずつみんなで検討していくという形をとっています。日ごろ困っている点を出し合っていますが、ポーランド語との違い、言語習慣の違いなどにも話が飛び、和気あいあいと2時間が過ぎていきます。
ただ参加メンバーは、開催者側の二人を入れてもいつも4〜6名と多くはありません。みなさんそれぞれに忙しく、都合のよい時間を設定するのが難しいこともあります。しかし、それでも何とか1年間続けることができました。継続することに意義がある、とにかく問題を抱えたときに相談できる場所を作っておくことが大切だと考えています。
ポーランドに赴任してきて3年、いつも学生たちの意欲と能力の高さに驚かされてきました。また、ポーランド人日本研究者の造詣の深さに感動し、ポーランド人および日本人日本語担当教師のご尽力に頭の下がる思いです。こんなポーランドでの専門家の役割は何か、キーワードは、「つなぐこと」「刺激すること」ではないかと思っています。