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日本語教育

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■ 2009年度
エジプト

日本語教育の実施状況
教育制度と外国語教育
学習環境
教師
教師会
日本語教師派遣情報
学習目的
シラバス・ガイドライン
評価・試験
日本語教育略史
参考文献一覧

●2006年海外日本語教育機関調査結果
機関数集計円グラフ 教師数集計円グラフ 学習者数集計円グラフ
海外の日本語教育の状況について機関・教師・学習者を円グラフ化しました。

日本語教育の実施状況
●全体的状況
【沿革】
 1960年代後半エジプトを訪れる日本人観光客の増加などを背景に在エジプト日本国大使館広報文化センターに日本語講座が創設された。(その後同講座はエジプト日本語教育振興会による運営を経て、現在は国際交流基金カイロ日本文化センターに継承されている。)
 1974年アラブ世界初の大学の日本語専攻コースとしてカイロ大学文学部に日本語日本文学科が開設され、国際交流基金による長期の日本人教官派遣や、在校生及び卒業生の国費留学採用など、長期にわたり日本側の様々な支援が行なわれた。
 1990年代以降は、上記の2機関以外にもいくつかの大学や観光関係の学校に日本語コースが設けられるようになり、2000年には国際交流基金の協力で外国語教育の名門とされるアイン・シャムス大学外国語学部に日本語学科が創設された。
 現在は3つの大学で主専攻として実施されているほか、10機関で第2外国語や選択科目あるいは社会人対象の一般講座として日本語が教えられており、エジプトの日本語教育は長期的にみて内容・学習者数ともに充実・拡大の傾向にある。

★日本語教育略史へ

【背景】
 日本とは地理的にも遠く、かつては歴史的にもそれほど深い関係がなかったことから、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語等の欧州言語に比べれば、日本語学習者の数はまだ多いとはいえない。しかし、1980年代以降は経済大国としての日本への関心も次第に高まり、また近年においては日本語ガイドの需要増も重なり、日本語学習者は漸増の傾向にある。なお、一般にエジプト国民は親日感情が強く、日本や日本人に対して良いイメージを持っている。
【特徴】
 観光業が非常に盛んで、日本語ガイドをはじめ観光関連業への就職を目標に日本語学習を始める学習者が多い。一般に日本語が話せることが観光ガイド資格取得や観光関係産業への就職など具体的な利益につながると考えられており、自らの意思で日本語学習を始める学習者が多いため学習意欲は総じて高い。
 また、外向的な国民性が語学学習に向くのか、一般的に学習者の上達は速い。初級レベルの学習者でも、既習の限られた文型を巧みに用いて日本人に日本語で自分の意志を伝えようとする。日本語学習者の絶対数はまださほど多くはないが、流暢に日本語を話すレベルまで進む学習者の数は相対的に多い。

●最新動向
 2009年3月26日、カイロにおいてエジプト・日本科学技術大学の設置(E-JUST構想*)に関する政府間協定の署名が、石川薫駐エジプト大使と、アブルナガ国際協力大臣及びヒラール高等教育大臣兼科学研究担当国務大臣との間で行なわれた。
 E-JUST構想は、日本が協力してエジプトに中東及びアラブ世界における中核的研究教育拠点となり得る日本式工学教育・研究活動を行なう国立の科学技術大学を設立するという構想であり、2007年5月の安倍首相・ムバラク大統領会談に端を発する。現在、アレキサンドリア市郊外のニュー・ボルグ・エル・アラブ地区に校舎を建設中であるが、2009年秋には仮校舎にて学生の受入を開始する予定。日本語教育の実施については未定。

*E-JUST:Egypt-Japan University of Science and Technology

エジプト・日本科学技術大学の設置に関する日本国政府とエジプト・アラブ共和国政府との間の協定の署名について

●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
 日本語教育は実施されていない。
【高等教育】
 現在、国立大学2校(カイロ大学、アイン・シャムス大学)と私立大学1校(ミスル科学技術大学)が日本語専攻科を開設しているほか、観光及び実務関係の教育機関を中心に第2外国語や選択科目として日本語教育が実施されている。
 カイロ大学文学部日本語日本文学科は開設以来35年の歴史があり、今では同学科を卒業して日本に長期留学した生え抜きのエジプト人教師が講師陣を構成(内8人が博士号所持)している。同学科の教官がエジプトの他の大学に出講して教鞭を執るほか、同学科出身者がエジプト以外のアラブ諸国で日本語を教えている例もあり、アラブ全体の日本語教育の現場に人材を供給している。アイン・シャムス大学は外国語教育の名門として知られ、2000年に開設された日本語学科は2004年に初めての卒業生を出し、その多くが新設された大学院に進学した。ミスル科学技術大学は2005年に言語翻訳学部の中に日本語学科を開設、現在、カイロ大学の教官や助手が教鞭を執っている。今後、文学部、外国語学部、言語翻訳学部の中に設けられたそれぞれの日本語専攻学科による、特色を生かした多彩な人材育成が期待される。
【学校教育以外】
 国際交流基金カイロ日本文化センターが一般成人を対象に日本語講座を開講している。レベルは初級から上級まで広範に亘るが、なかでも初級コースの人気が高く、常時200名を越える学習者が在籍している。使用テキストは『みんなの日本語』。3年間約400時間で初級全般を修了する。継続学習の場として中級・上級コースも開講しており、こちらは春と秋の2回、それぞれ3ヶ月のコースとして実施している。また、2007年2月にエジプト北部のアレキサンドリア市に現地団体の協力を得て日本語講座を開講した。初級コースと入門コースがあり、あわせて約60名の学習者が在籍している。カイロ、アレキサンドリアともに、大学生を中心とした若い学習者が多い。
 エジプトでは、一般向けに開かれた日本語コースは、長い間、大使館と国際交流基金主催の日本語講座のみであったが、最近、規模は小さいが個人経営の日本語学校(Narita Academy:1998年開講、2009年Japanese Instituteから改名)がカイロ市内に生まれている。

教育制度と外国語教育
●教育制度
【教育制度】

 6-3-3制。
初等教育 小学校(6年間)
中等教育 中学校(3年間)及び高等学校(3年間)、または中学校卒業後職業高校(3年間)に進学。職業高校進学者にも大学入学の道は開かれている。
高等教育 大学(4年間。ただし医学部は6年間。工学部は5年間)。
専門職業教育のための各種インスティチュート(2〜4年間)もあり、その一部では大学に準ずる資格が取れる。

 義務教育は小学校および中学校の9年間。ただし、農村部における就学率はまだ十分ではない。国立大学の入学は高校卒業時の全国統一の試験(サナウィーヤ・アンマ)の成績によって決まる。この試験で高得点をマークした生徒から希望の大学、学部、学科を選択できる。若年人口の増加と大学進学率の上昇のため、評価の高い学部・学科に入学するにはこの試験で高得点をとることが要求され、厳しい受験競争も存在する。
 かつて私立大学はカイロ・アメリカン大学だけであったが、1990年代半ばの法改正で私立大学設立の道が開かれ、近年カイロを中心にいくつもの私立大学が設立されている。ただし学費が高額なため、私立大学に進学できるのは富裕層の子弟に限られる。
【教育行政】
 初等教育・中等教育は教育省、高等教育は高等教育省が管轄。

●言語事情
 公用語はアラビア語。
 19世紀以降、欧州の文化的・政治的影響を大きく受けたため、特に中産階級以上の階層では母国語のアラビア語に加えて欧州言語が話せる人は珍しくない。街なかで英語が話せる人に行き当たる確率は日本よりはるかに高い。歴史的には上流階級ではフランス語が広く使われてきたが、今日ではこうした習慣は失われつつある。

●外国語教育
 第1外国語: 中学校から英語(必修)。
 第2外国語: 高校からフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語等から選択(必修)。フランス語が主となっている。

 公教育はアラビア語で行なわれる。ただし、中産階級以上の家庭は、子弟を私立の中学・高校に通わせることが多く、これら私立の学校は「ランゲージ・スクール」と呼ばれ、英語(またはフランス語、ドイツ語)教育を売り物にし、授業の一部をそれらの外国語で行なう。

大学入試での日本語の扱い
 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境
●教材
【初等・中等教育】
 日本語教育は実施されていない。
【高等教育】
 多くの機関で初級教科書は『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が使用されている。中級以降の教材は機関によって異なり、特に定まったものはない。
【学校教育以外】
 国際交流基金カイロ日本文化センターでは『みんなの日本語』(前出)を使用。Narita Academyでは『JAPANESE FOR EVERYONE』名柄迪ほか(学習研究社)を使用している。

●マルチメディア・コンピュータ
 学習者の中にはインターネットを利用して情報を収集したり、日本のアニメやドラマなどポップカルチャーを楽しんだりする者もいる。一方で、インターネットの普及率やコンピューターの個人所有は日本と比べてまだ低く、インターネットを用いた学習者と教師間のインタラクティブな日本語教育は行なわれていない。現在は個々の教師が授業で使うための資料をインターネットを利用して探すといった程度である。
教師
●資格要件
【初等・中等教育】
 日本語教育は実施されていない。
【高等教育】
 ノンネイティブ日本語教師が正講師以上に昇任するには、博士号の所持が条件。
【学校教育以外】
 特に資格は問われない。

●日本語教師養成機関(プログラム)
 継続して日本語教師養成を行なっている機関・プログラムはないが、国際交流基金カイロ日本文化センターで不定期に日本語教師養成講座や現職教師対象のスキルアップ講座を開講することがある。

●日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
 エジプト人教師が大学等において正講師として教えるためには博士号の所持が条件となっているが、ネイティブ教師(日本人教師)についてはその限りではなく、資格より経験が重視される傾向にある。大学直接雇用の場合、滞在ビザ及び就労許可証は発給されるが、給料が安く、経済的な理由から1〜2年で帰国するケースが少なくない。非常勤講師はエジプト人との婚姻による在留邦人が多い。特にノンネイティブとネイティブの役割分担というものはない。

ネイティブ教師(日本人教師)
  常勤 非常勤
カイロ大学文学部日本語日本文学科 1名 1名
アイン・シャムス大学外国語学部日本語学科 7名  
ミスル科学技術大学言語翻訳学部日本語学科   1名
ルクソール観光ホテル高等専門学校 2名  
国際交流基金カイロ日本文化センター 3名 6名
※国際交流基金、国際協力機構(JICA)からの派遣者を含む。

●教師研修
 国際交流基金カイロ日本文化センターがエジプト国内の日本語教師を対象にしたセミナー等を不定期に開催している。
 また、年1回、中東各国の日本語教師を対象に「中東日本語教育セミナー」を開催し、現職教師のスキルアップ及びネットワーク強化を図っている。

現職教師研修プログラム(一覧)―2008年度実績

1.現職日本語教師スキルアップ研修(エジプト)
 2008年11月、国際交流基金カイロ日本文化センターにおいて国内の現職日本語教師を対象にしたスキルアップ研修を実施した。研修は週1回、全4回とし、直接教授法体験や『日本語教授法シリーズ』(国際交流基金)を用いた講義とワークショップを行なった。なお、講師はカイロ日本文化センター日本語教育アドバイザーが担当した。

2.eラーニング講演会(エジプト)
 2008年12月、国際交流基金カイロ日本文化センターにおいて「インターネットを使った日本語学習〜グローバル戦略としての日本語eラーニング〜」と題した講演・懇話会を実施した。講師は芝野耕司氏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授)と佐野洋氏(同大学外国語学部教授)が務め、東京外国語大学で開発している日本語eラーニングサイト “JPLANG” のデモンストレーションを行なった。後半はウェブ会議システムを使って同大学留学生日本語教育センターと繋ぎ、実際の教育現場での利用法などについて意見交換を行なった。

JPLANG 日本語を学ぶ e-日本語 インターネットで拡げる日本語の世界

3.第8回中東日本語教育セミナー(中東)
 国際交流基金カイロ日本文化センターが、年1回、中東各国の現職日本語教師を対象とした広域セミナーを実施している。2008年で8回目となるセミナーは、8月24日〜25日の二日間、エジプト・カイロ市において開催された。今回は日本から三原龍志氏(みはらりゅうし ・国際交流基金日本語国際センター専任講師)を特別講師として迎え、「外国語環境(主な学習の機会は教室だけで教室の外は学習者の母語で生活できる環境)で、日本語によるコミュニケーション能力を伸ばす授業を考える」をテーマに、講演とワークショップを実施した。今回で第8回を数えた本セミナーは各国の日本語教師にとっての貴重な研修機会であるとともに、中東地域の日本語教師ネットワーク強化の一助となっている。
教師会
●日本語教育関係のネットワークの状況
「エジプト日本語教師会」(1999年発足)
 エジプト国内の日本語教師の情報交流・相互協力の母体となることを目指し1999年2月に発足。当初、定期的に会合や勉強会を催していたが、2004年以降は休会している。

「中東日本語教師連絡会」(1999年発足)
 中東各国の日本語教師を繋ぐ広域ネットワークとして1999年9月に発足。
 国際交流基金カイロ日本文化センターと協力して毎年セミナーを実施するほか、セミナーに合わせて年次会合を行ない、中東地域の日本語教育に関する意見交換・情報交流を行なっている。2008年にメーリングリスト立ち上げ。事務局は国際交流基金カイロ日本文化センター。

★教師会・学会一覧へ

日本語教師派遣情報
●国際交流基金からの派遣(2009年4月1日現在)
日本語教育専門家
アイン・シャムス大学 1名

ジュニア専門家
国際交流基金カイロ日本文化センター 1名
アイン・シャムス大学 1名
カイロ大学 1名

★「世界の日本語教育の現場から」のページへ


●国際協力機構(JICA)からの派遣(2009年4月1日現在)
青年海外協力隊

ルクソール観光ホテル高等専門学校 1名

シニア海外ボランティア
ルクソール観光ホテル高等専門学校 1名

★JICAのページへ

学習目的(2006年海外日本語教育機関調査結果)

 
1.
日本の文化に関する知識を得るため  
9.
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入)  
 
2.
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため  
10.
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため  
 
3.
日本の科学技術に関する知識を得るため  
11.
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため  
 
4.
大学や資格試験の受験準備のため  
12.
日本語という言語そのものへの興味  
 
5.
日本に留学するため  
13.
国際理解・異文化交流の一環として  
 
6.
今の仕事で日本語を必要とするため  
14.
父母の期待に応えるため  
 
7.
将来の就職のため  
15.
その他  
 
8.
日本に観光旅行するため   (1.〜15.から5つ選択)  
高等教育/学習の目的棒グラフ 学校教育以外/学習の目的棒グラフ
シラバス・ガイドライン
 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
評価・試験
 日本語能力試験以外に、共通の評価基準や試験はない。
 観光ガイド資格試験(観光省)においては、日本語の試験が取り入れられている。
日本語教育略史
1969年 在エジプト日本国大使館が日本語講座を開講
1974年 カイロ大学文学部日本語日本文学科開設
同大学に国際交流基金専門家派遣開始
1988年 在エジプト日本国大使館日本語講座に日本語教育専門家を派遣
1994年 カイロ大学文学部日本語日本文学学科大学院開設
1995年 国際交流基金カイロ事務所開設
1998年 国際交流基金カイロ事務所に日本語教育専門家を配置
カイロにおいて日本語能力試験実施(アフリカ大陸初)
Narita Academyが日本語講座を開講
1999年 エジプト日本語教師会発足
  中東日本語教師連絡会発足
2000年 アイン・シャムス大学外国語学部日本語学科開設
2001年 エジプト日本語教育振興会発足し、在エジプト日本国大使館の日本語講座を引き継ぐ
2004年 アイン・シャムス大学外国語学部日本語学科大学院開設
2005年 ミスル科学技術大学言語翻訳学部日本語学科開設
2007年 エジプト日本語教育振興会の日本語講座を国際交流基金カイロ事務所が引き継ぎ、従来講座と統合(国内の一般講座としては初めて初級から上級レベルまで全レベルを開講)
2008年 国際交流基金カイロ事務所がカイロ日本文化センターに名称変更
参考文献一覧
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