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■ 2009年度
アイルランド

日本語教育の実施状況
教育制度と外国語教育
学習環境
教師
教師会
日本語教師派遣情報
学習目的
シラバス・ガイドライン
●評価・試験
日本語教育略史
参考文献一覧

●2006年海外日本語教育機関調査結果
機関数集計円グラフ 教師数集計円グラフ 学習者数集計円グラフ
海外の日本語教育の状況について機関・教師・学習者を円グラフ化しました。

日本語教育の実施状況
●全体的状況
【沿革】
 アイルランドの高等教育機関における正式な日本語教育は、1986年ダブリン・シティー大学での講座開設に始まった。その後日本語講座を開設する大学数は国立大学7校のうち一時4校になったものの、現在は、3校で、そのうち主専攻に出来るのはダブリン・シティー大学のみである。2005年6月に日本語講座が打ち切られたトリニティー大学では、一般市民も受講できる夜間コースを開設している。また、2000年に教育科学省が日本語を中等教育強化対象外国語の一つに選択したことにより、日本語を教えている高校が2007年には54校まで増加したが、2009年4月現在では36校である。

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【背景】
 1990年代のアイルランドにおける急速な経済成長や、EUの拡大に伴う多方面での諸外国との接触の増大によって、他のヨーロッパ言語と共に日本語の教育需要も高まった。また、文化の多様性に対する関心の高まりを背景にして、2000年9月に設立されたポスト・プライマリー・ランゲージ・イニシアティブ(Post-Primary Languages Initiative: PPLI)は、中等教育機関でそれまで教えられていたフランス語及びドイツ語に加え、スペイン語、イタリア語、日本語、ロシア語を強化対象外国語に指定し、日本語教育の底辺の拡大に大いに寄与している。
【特徴】

 大学の日本語講座は、主にビジネス・コースの一環として設置されており、日本文学や日本の歴史などはほとんど扱われず、実務志向が強い。日本の景気低迷を反映して、日本語学習者の日本企業への就職が困難な状況から、一時は学生数が減少したが、最近では安定化傾向にある。ただし、ここ10年間の傾向をみると、大学の講座数、教員数ともに削減傾向が認められる。
 一方、上述のPPLIの日本語促進に加え、日本のポップ・カルチャーに対する若者の関心の高まりで、中等教育機関での日本語教育はここ数年で拡大した。高校1年次に開設される日本語・日本文化クラスでは、アイルランド中で1,000名以上の生徒が簡単な日本語や日本文化(書道や茶道、おりがみなど)を体験している。2004年には高校修了資格試験(Leaving Certificate)の科目に「日本語」が取り入れられ、2006年には55人、2007年には95人、2008年には129名が受験した。2009年は約250名が受験している。

●最新動向
 高校1年次の日本語クラスしか繰り返さない学校は日本語支援を中止するというPPLIの方針により、2007年には54校あったものが、2008年には36校(PPLIから教師を派遣している高校は31校、独自に日本語教師を雇用している高校が5校)に減少した。教育科学省が財政難を理由に、高校修了資格試験の受験者を増やすことだけに集中するようPPLIに指導しているためである。
 アイルランドでは、従来、日本語能力試験は実施しておらず、受験者はロンドンまで行っていた。しかし、2009年からダブリンで能力試験が実施されることになっている。
 コーク大学にはChinese Studiesの学士課程・修士・博士課程が設置されている。そこがAsian Studiesという新しい修士課程を2009年9月に立ち上げることになり、日本コースを開設する。各コースにはその言語も含まれており、日本コースを選択する学生がいれば、日本語を学ぶことのできる大学(また大学院)は全国で4つになる。

●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
 初等教育機関では日本語教育は行なわれていないが、不定期に各学校で行なわれる国際文化イベントなどに日本文化紹介、おりがみイベントなどが実施されることがある。
 中等教育機関では、日本語・日本文化体験クラスが高校1年次に、高校修了資格試験を受けるためのクラスが高校2年次と3年次の2年間ある。日本語は選択科目であるが、まだ受講者が少ないため、放課後の4時から授業があったり、近隣の高校生を集めて土曜日に授業をしたりしている。高校修了資格試験は、大体日本語能力試験の4級程度である。
【高等教育】
 アイルランド国立大学ダブリン校、ダブリン・シティー大学、リムリック大学の3校で日本語講座が開設されている。最近では、高校で日本語を学習した学生の受講があるので、1年生の日本語のクラス分けをする必要が出てきた。唯一主専攻があるダブリン・シティー大学では、3年次に日本語専攻の学生全員が日本各地の提携大学に1年間留学し、4年次には日本語が流暢になって帰ってくる。他の2大学では日本語を主専攻には出来ないが、アイルランド国立大学ダブリン校では日本語をモジュールとして選択することができるようにしたため、すべての学生に日本語を学習する機会が生まれ、学生数が増加した。リムリック大学では、「外国語教育」の講座が開設され、日本語もそれに含まれている。講座では教育実習を含む外国語教師養成が行なわれる。

(1) ダブリン・シティー大学
学士課程
(イ)国際コミュニケーション言語学学科(応用言語文化学部)
(ロ)応用言語学学科日本語専攻(応用言語文化学部)
(ハ)国際ビジネス・言語学科日本語専攻(商学部/応用言語文化学部)
修士課程
(ニ)日本語翻訳学科
(ホ)応用言語・文化学科
(2)

リムリック大学
(イ)ビジネス学科日本専攻(商学部)
(ロ)人文学部/法学部ほかで日本語を選択することが可能
(ハ)言語教師養成課程(人文学部)
(二)成人教育

(3) アイルランド国立大学ダブリン校
2005年よりモジュール制を開始し、どの学部の学生も日本語を単位認定科目として受講することができるようになった。

【学校教育以外】
 一般市民対象の語学学校等で、日本語を教えているところがいくつかあり、学習者はビジネスマン、大学生等である。高校生の試験勉強のために家庭教師を雇うこともある。また、コミュニティーセンターなどで開かれている各種夜間講座の中にも、日本語コースが開かれているところがある。さらに、ダブリン市ILACセンター内図書館では、毎週土曜日に日本語と英語の交換授業を希望する市民が集い、1時間半ほど会話学習を行なっている。
教育制度と外国語教育
●教育制度
【教育制度】
 6(8)-3-3(2)-4制
 初等教育が6年間(6〜12歳)(4歳から入学可能であり、その場合には8年間)、中等教育が5〜6年間(13〜18歳)、高等教育が通常4年間(17〜22歳)である。
【教育行政】
 学校の運営母体は教会や地域である。教育科学省直轄の学校もある。しかしどの学校も国のカリキュラムに沿って授業をしている。

●言語事情
 公用語はアイルランド語(ゲール語)であり、初等教育及び中等教育を受ける生徒は全て、これを学習しなければならない。アイルランド語で教育が行なわれている学校もあり、近年人気を集めている。しかし、大多数の国民にとって日常使用する主要言語は第2公用語となっている英語であり、高等教育機関では圧倒的に英語を使用して講義、研究が行なわれている。

●外国語教育
 あらゆる段階でほとんどの授業が英語で行なわれている状況にあって、外国語というわけではないが、初等教育から公用語であるアイルランド語の授業が必修科目となっている。また、中等教育段階からはフランス語、ドイツ語の授業が選択できるようになり、最近ではスペイン語、イタリア語、日本語、ロシア語も選択肢の中に加わるようになった。学校によっては選択外国語とは別枠で日本語を選択させる学校があり、ある生徒は、高校修了資格試験7〜9科目のうち、英語、アイルランド語、フランス語またはドイツ語、そして日本語と4〜5科目が「語学」になってしまうという現象も起きている。

外国語の中での日本語の人気
 伝統的に外国語を学習する生徒の中ではフランス語が一番人気で、ドイツ語がこれに続いているが、最近では教育科学省が他の外国語教育の後押しをしていることもあり、スペイン語、イタリア語、日本語がこの順番で続いている。

大学入試での日本語の扱い
 アイルランドでは大学入学に際し、大学側が個別に入学試験を課さず、代わりに高校修了資格証明書(Leaving Certificate)が入学資格として通常用いられている。2004年からは当資格を得るための試験科目の一つとして日本語も認められている。
学習環境
●教材
【初等・中等教育】
 初等教育機関では日本語クラスはないが、中等教育機関では、2007年に出版された日本語教科書『NIHONGO KANTAN』、シリーズの『Hiragana Kantan』と『Katakana Kantan』が、ほぼすべての日本語クラスで使用されている。
【高等教育】
 各大学の日本語教育方針と学生の興味に照らして、日本から教材を取り寄せ使用している他、個別に教材を開発しているところもある。
【学校教育以外】
 
一般に市販されている教材が使用されている。

●マルチメディア・コンピュータ
 アイルランドでは、広く一般にコンピューターが使用されており、インターネットを通じて日本語情報へのアクセスが容易に行なえることから、ある程度の基礎を習得した学習者は、これを大いに活用している。インターネット上の日本語のページや日本の動画閲覧を趣味にしている学生などは、日本での流行、漫画やアニメの情報に非常に詳しい。そして、日本のテレビ番組のいくつかは衛星放送で視聴できる。
教師
●資格要件
【初等・中等教育】
 初等教育では基本的に全教科教えるので、日本語教師という定義はない。中等教育機関で日本語教師になろうとすれば、まず大学で日本語を専攻し、更に1年の中等教育の教職課程を修了することが必要である。その後、Teaching Councillに登録し、そして原則的に各学校が登録教師を採用する。現状は、要件の「日本語が主専攻」という教師が少なく、現職の多くの日本語教師が未登録のまま教えながら、資格獲得を目指している。
【高等教育】
 国として定めている日本語教師としての特別の資格要件はないが、各大学で独自の基準で選考される。
【学校教育以外】
 それぞれの機関で独自の基準で選考される。

●日本語教師養成機関(プログラム)
 現在のところ、日本語教師養成を目的とした特別のプログラムは設置されていないが、リムリック大学で外国語教師になるためのコースがある。

●日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
 高等教育機関では、それぞれ若干名の日本人教師が常勤・非常勤で勤務しているが、大学経営の財政問題等から、日本語教師の採用・雇用数の減少傾向が認められる。日本人教師は専門的な立場からカリキュラムの作成、実際の指導まで幅広くこなしている。
 中等教育機関に関しては、活動の中心をなすPPLIに日本人教師がアイルランド人教師と共に参画し、教育内容、方向性等につきネイティブの立場から発言を行なっている。

●教師研修
  現在のところ、アイルランド日本語教師会によるワークショップ、セミナーなどが年3回行なわれている。また、PPLIの教師を対象とした研修も年数回実施されている。この他に、アルザス日本語教師研修に毎年2〜3名、国際交流基金の各種研修に毎年1〜2名参加する。

教師会
●日本語教育関係のネットワークの状況
 アイルランドでは大学で日本語教育を行なっている人たちを核として2000年にアイルランド日本語教師会(JLTI)が設立されており、また教育科学省によって設立されたPPLIもJLTIと連携しながら活動を行なっている。前者の設立目的はアイルランドにおける日本語教育の推進であり、後者のそれは中等教育における外国語教育の強化である。
JLTIは現在ではホームページを作成し、積極的に活動をしている。年間行事としては、年に1度のアイルランド弁論大会、年に3回のセミナーを行なっている。しかし、会員の入退会が続き、発足時の会員はほとんど残っていない。2009年2月の時点で会員が17名、そのうちアイルランド人は5名である。

●最新動向
 日本語教師会では2003年より毎年「日本語弁論大会」を主催し、成功をおさめている。2009年2月には第7回日本語弁論大会が開催され、多くの日本語学習者の参加を得た。

★教師会・学会一覧へ
日本語教師派遣情報
●国際交流基金からの派遣(2009年4月1日現在)
日本語教育専門家
アイルランド教育科学省 1名

★「世界の日本語教育の現場から」のページへ
学習目的(2006年海外日本語教育機関調査結果)

 
1.
日本の文化に関する知識を得るため  
9.
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入)  
 
2.
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため  
10.
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため  
 
3.
日本の科学技術に関する知識を得るため  
11.
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため  
 
4.
大学や資格試験の受験準備のため  
12.
日本語という言語そのものへの興味  
 
5.
日本に留学するため  
13.
国際理解・異文化交流の一環として  
 
6.
今の仕事で日本語を必要とするため  
14.
父母の期待に応えるため  
 
7.
将来の就職のため  
15.
その他  
 
8.
日本に観光旅行するため   (1.〜15.から5つ選択)  
初等・中等教育/学習の目的棒グラフ 高等教育/学習の目的棒グラフ 学校教育以外/学習の目的棒グラフ
シラバス・ガイドライン
2004年に高校修了資格試験を実施するにあたって、シラバスが公表された。
http://www.education.ie/servlet/blobservlet/lc_japanese_sy.pdf?language=EN
漢字リストは巻末にあるが、語彙リストはない。
日本語教育略史
1986年 ダブリン・シティー大学にて日本語講座開設
1990年 リムリック大学にて日本語講座開設
1995年 アイルランド国立大学ダブリン校にて日本語講座開設
1999年 トリニティー大学にて日本語講座開設
2000年 教育科学省が日本語を中等教育レベル外国語強化対象言語に選択
2004年 高校修了資格試験の科目に「日本語」が取り入れられる
2005年 トリニティー大学の日本語講座閉鎖(夜間の一般講座として開設)
アイルランド国立大学ダブリン校にてモジュール制開始
参考文献一覧
★参考文献検索ページへ

国別一覧へ




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