ホーム > 日本語教育 > 調査研究・情報提供 > 国・地域別の情報 > 日本語教育国別情報> 2009年度> イスラエル

日本語教育

日本語教育> 調査研究・情報提供
日本語教育国別情報トップへ国別一覧へ
■ 2009年度
イスラエル

日本語教育の実施状況
教育制度と外国語教育
学習環境
教師
教師会
日本語教師派遣情報
学習目的
シラバス・ガイドライン
評価・試験
日本語教育略史
●参考文献一覧

●2006年海外日本語教育機関調査結果
機関数集計円グラフ 教師数集計円グラフ 学習者数集計円グラフ
海外の日本語教育の状況について機関・教師・学習者を円グラフ化しました。

日本語教育の実施状況
●全体的状況
【沿革】
 イスラエルでは、イスラエルと日本との人的交流が発展し始めた1970年代後半から、国民間で日本文化・日本語に対する関心が高まりを見せ、1980年代に日本経済が大きく発展すると共に実務面における需要も増大した。
 高等教育機関では、1964年にエルサレム・ヘブライ大学人文学部東アジア学科日本語教育コース(3年間)がイスラエルで最初に開講され、1980年代から1990年代には、日本語学習熱の高まりに伴い、他大学でも日本語課程が開設された。
 大学外では、私立語学学校が1980年代初頭および中期に日本語講座が開設された。大使館日本語講座は1979年に開設された(その後2002年に閉鎖)。
 しかし、2000年9月の第2次インティファーダ発生以来、治安状況の不安定化とそれに伴う日本との貿易の減少、また2008年秋の世界経済危機による世界的不況を受けて、日本とのビジネスの必要が日本語学習の主動機となっていた現象は、2009年4月現在ほぼ消滅した。他方で、2003年頃より、イスラエル若年層(小学生〜20代後半)の間で日本のアニメ・コミックへの関心が急激に高まり、アニメ・コミックに触発されたこれらの若年層が日本語を学習し始める、という新しい現象が発生している。

★日本語教育略史へ


【背景】
 かつては経済的な側面からの関心が強かったが、現在は、若年齢層(中学生、高校生、大学在学年齢)を中心に日本文化・日本社会に対する関心が強い。高等教育機関の学生は、言語の習得によるより深い日本文化の理解を目的として日本語を学習している。
 国全体として、日本を固有の文化・社会的価値をもつ極めて深みのある国として認識しており、マスコミでも日本語の流行語などを紹介する日本関連記事等がごく普通に取り上げられている。
【特徴】
 高等教育機関における日本語学習に対する学生の関心と人気は高い。一般的に日本語を学習する学生は、研究対象としての日本文化理解を最終目的としており、漢字の歴史や言語学的に見た日本語の位置付けなど、学習内容は深く、学習期間も長期にわたる傾向が見られる。なお、ロシアからの移民学生の中には、旧ソ連本土の日本語教育機関で日本語を長年学習したため、イスラエルへの移住時にすでに高度な日本語能力を有している学習者が散見される。

●最新動向
 2000年9月の第2次インティファーダ発生、2008年秋の世界経済危機などを背景として現在まで、イスラエル、パレスチナでの治安状況の悪化やイスラエルのハイテク・ブームの冷え込みの余波を受けて、対日ビジネス状況は停滞している。その結果、ビジネスマンの日本語学習への要望・関心も大幅に減少している。
 これに代わり、2003年頃から2009年4月現在までの傾向としては、市民講座や個人教授等で日本語学習を志す市民の学習動機のほとんどが、10代〜20代の青少年で、日本製コミックやアニメ映画、コンピューター・ゲームに親しむ中で、日本語学習に興味を持った、という現象が増大している。
 高等教育機関における新たな日本語教育機関としては、2008年10月にテクニオン工科大学が日本語コースを定着講座として開講した他、2009年秋の新年度よりバール・イラン大学アジア学プログラムが日本語コースを開講する予定。

●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
 イスラエル教育省のカリキュラムでは、初等・中等教育段階での日本語教育は義務づけられておらず、また外国語学習の選択肢にも日本語学習は含まれていない。但し、学校が独自のカリキュラムで「異文化学習・国際理解教育」を実施する際、日本を教材として取り上げ、その一環として日本語に触れるケースもある。
 その中で唯一、エルサレムにあるハイスクールが1校、日本語教育を正規カリキュラムとして導入しクラス単位で通年にて教えていた(レウート高校。6年制。日本の中学・高校にあたる)が、2008年9月をもって一旦日本語学習を中止したまま2009年4月現在にいたっている。
 その他、イスラエルには小学校から高校まで、学校により地域によっては英才教育コースを設置して、選抜された生徒に対し各学校機関独自もしくは数校の学校機関が合同で英才教育を施しているが、それらコースの中には日本語を週に数時間、通年で教えているケースも見られる(全国的にこれらをまとめたデータがないため、数や内容については不明)。
【高等教育】
 大学教育では以下の大学が次の通り日本語教育コースを開設している。

 (1) エルサレム・ヘブライ大学人文学部東アジア学科日本語教育コース(3年間)
 (2) テルアビブ大学人文科学部東アジア学科日本語教育コース(3年間)
 (3) ハイファ大学人文科学部アジア学科日本語教育コース(3年間)
 (4) テクニオン工科大学一般教養課程日本語教育コース

【学校教育以外】
 成人教育機関としては、(1)オープン・ユニヴァーシティー「Dialog-Language School」の日本語コース(半年〜1年間)、(2)ハイファ市立ティコティン日本美術館市民講座日本語コース(3年間)、及び(3)「Japan Knowledge(ジャパン・ナリッジ)」(語学コース・私企業における日本語コース(半年〜最大1年間)がある。また、私立語学学校1校(ベルリッツ)が、個々の学習者のニーズに合わせた短期の日本語コースを常時実施している。
教育制度と外国語教育
●教育制度
【教育制度】
 6-3-3制。
 初等教育:小学校6年間(6〜11歳)
 中等教育:前期3年間(12〜14歳)、後期3年間(15〜17歳)
 高等教育:大学(3年制)、短期大学(2年制)、職業専門学校(1〜4年制など)
 イスラエルでの義務教育期間は、幼稚園(3年保育)のうちの最後の1年、初等教育(小学校6年間)、中等教育前期(3年間)および中等教育後期(3年間)のうち最初の1年の、合計11年間(5〜15歳)となっている。
【教育行政】
 ほぼすべての教育機関(初・中・高等)が教育省の管轄下にある。

●言語事情
 公用語はヘブライ語およびアラビア語。
 英語も国民に広く解されている。
 また、多数のロシア系移民が存在しているので、ロシア語も広く用いられている。

●外国語教育
 中等教育前・後期全般にわたり、第1外国語(必修)として英語を修得。
 同教育段階の第2外国語(必修。学校によっては選択)はアラビア語かフランス語のいずれかを選ぶ。

外国語の中での日本語の人気

 事例1. 主に一般市民を対象とする、ある私立語学学校によると、同校では合計15言語の学習コースを運営しているが、その中で日本語学習コースに対する照会が少なくない。ただし、実際の登録者数は、英語、フランス語、イタリア語等の主要言語学習コースへの登録者数よりは少ない。アジア系言語は日本語と中国語の学習コースがあるが、日本語学習コースへの登録者数の方が平均的に見ると若干多い。
 事例2. 大学機関のうち、日本研究課程を有する3大学(エルサレム・ヘブライ大学、テルアビブ大学、ハイファ大学)の例によると、3大学とも、日本語教育コースへの登録学生の割合は安定しているものの、2007年にテルアビブ大学に設置された孔子学院による非常に積極的な中国語教育支援活動や、中国の国際向け市場の発展もあってか、近年、中国語教育コースを選択する学生数が急増しており、日本語教育コースの登録者数を超えるようになった。上記3大学の東アジア研究学科(各大学の該当学科の正式名称については、上記の●教育段階別の状況【高等教育】を参照)ではいずれも、日本語教育コースの他に中国語、サンスクリット語を教えている。

大学入試での日本語の扱い
 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境
●教材
【初等・中等教育】
 レウート高校が2008年9月を持って日本語学習を取りやめたため、2009年4月現在、初等・中等教育でのクラス単位の日本語教育は実施されていない。
【高等教育】
 大学により、またレベルにより、ソフト教材を始め種々の日本製の教材が用いられている。教師によってその種類は異なる。講読学習では、新聞・書籍等を題材にしたテキストを独自に編集・使用している。
【学校教育以外】
 一般に日本で出版された教材を使用している。語学学校の会話コースでマンツーマン方式を採用している場合は教師がテキストを独自に作成している。ヘブライ語が母国語であり、かつ移民の国であるため、英語教材は必ずしも適切ではない。

●マルチメディア・コンピュータ
 ここ数年、ほとんどの大学機関では、学生が共用するためのハードウェアを新たに購入するほどの予算的余裕はない。そこで、日本語教師が自力でインターネットなどから教材として使用可能な情報を入手した上で、オリジナルの教材を作成し、各学生に配布する方法が取られている。コンピュータ機器の個人への普及率はイスラエルでは非常に高いので、自宅でマルチメディア・コンピューターを通じて、米国や日本で作成された既成の日本語自習ホームページ等(通常これらホームページは英語で説明が書かれている)にアクセスし、主にヒアリング能力の開発に利用している学生も多い。なお、イスラエルで独自に開発された、ヘブライ語で学ぶ日本語自習ホームページもある。
教師
●資格要件
【初等・中等教育】
 レウート高校の日本語学習が中断されたため、2009年4月現在該当データはない。
【高等教育】
 日本語課程の講師は、最低、学士号取得者であることが要件であることに加え、日本語教授資格を有する教師であることが要求されている。
 私立語学学校における講師職では、日本語教授資格コースの修了者であることが条件となっている。
 現在日本語を教えている教師のうち日本人教師のほとんどは、日本国内もしくは欧州各国における日本語教授資格コースの修了者である。イスラエル人教師は、初等・中等教育機関を除き、ほぼ全員日本国内で日本語教師研修や教授資格コースを修了している。
【学校教育以外】
 高等教育機関と同様、学士以上の学歴を有し、日本語教授資格を持ち、日本語教授経験のあることが資格要件となっている。現在、オープン・ユニヴァーシティー、ハイファ市立ティコティン日本美術館市民講座では、在留邦人でこれらの資格を有する日本人教師が教えている。イスラエル人が日本語を教える場合の多くは、元国費留学生である。

●日本語教師養成機関(プログラム)
 組織的な養成機関はない。いずれの学習機関でも、日本語教師が情報交換するための会合を定期もしくは不定期に持つ程度である。

●日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
 正規に雇用されている日本人教師の雇用割合は、各機関によって異なる(例:エルサレム・ヘブライ大学の場合は、日本人教師2名、イスラエル人教師3名。ハイファ大学の場合は、日本人教師1名、イスラエル人教師2名、など)。
 各機関でほぼ共通しているのは、イスラエル人教師が比較的初級学年を受け持つのに対し、日本人講師は中級または上級学年を受け持つ、という傾向である。
 学士号取得者で日本語教授資格を持つ日本人教師の絶対数は少なく(わずか数名)、その多くが数ヶ所の教育機関における講師職を兼任している。

●教師研修
 組織化された現職の日本語教師対象の研修はない。
教師会
●日本語教育関係のネットワークの状況
 各大学の日本語教師は兼任の場合が多く、大学相互間の教師らの個人的なつながりは密接であるが、会の形態をとるものではない。
 教師間で主に使用教材についての情報交換が個別に行なわれている。

●最新動向
 公式ネットワークを設立する動きは見られない。

日本語教師派遣情報
 国際交流基金、JICAからの派遣は行なわれていない。
学習目的(2006年海外日本語教育機関調査結果)

 
1.
日本の文化に関する知識を得るため  
9.
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入)  
 
2.
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため  
10.
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため  
 
3.
日本の科学技術に関する知識を得るため  
11.
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため  
 
4.
大学や資格試験の受験準備のため  
12.
日本語という言語そのものへの興味  
 
5.
日本に留学するため  
13.
国際理解・異文化交流の一環として  
 
6.
今の仕事で日本語を必要とするため  
14.
父母の期待に応えるため  
 
7.
将来の就職のため  
15.
その他  
 
8.
日本に観光旅行するため   (1.〜15.から5つ選択)  
初等・中等教育/学習の目的棒グラフ 高等教育/学習の目的棒グラフ 学校教育以外/学習の目的棒グラフ
シラバス・ガイドライン
 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
評価・試験
 共通の評価基準や試験はない。
 日本語能力試験については、イスラエルでは実施されておらず、地理的に最も近い国としては、エジプト・カイロで例年実施されている。しかし、昨今の地域情勢により、イスラエル外務省ではイスラエル国民のエジプトへの渡航を自粛するよう勧告を出しており、同試験の受験を希望するイスラエル人は、一般的に欧州各国または日本で受験している。
日本語教育略史
1964年 イスラエルで最初の日本語教育として、エルサレム・ヘブライ大学人文学部東アジア学科日本語教育コース(3年間)開講
1979年 大使館日本語講座開設
1980年代
から
1990年代
他大学でも日本語課程開設
1983年 オープン・ユニヴァーシティーにて「Dialog」言語コース(半年〜1年間)開講 (日本語コース開講年は不明)
1980年代
初頭および
中期
私立語学学校にて日本語講座開設
1986年 ハイファ市立ティコティン日本美術館市民講座日本語コース開講
1995年 テルアビブ大学人文科学部東アジア学科日本語教育コース(3年間)設置
1999年 レウート高校にて日本語教育を正規カリキュラムとして導入
2002年 ハイファ大学人文科学部東亜研究学科日本語教育コース(3年間)設置
(開講時不明)

2007年
ベルリッツにて個々の学習者のニーズに合わせた短期の日本語コース開講(ベルリッツのイスラエル校設立は1937年)
テクニオン工科大学日本語コース開講(2008年に定着講座化)
2008年9月 レウート高校で行なわれていた日本語教育中断

国別一覧へ




このページの先頭へもどる