ホーム > 日本語教育 > 調査研究・情報提供 > 国・地域別の情報 > 日本語教育国別情報> 2009年度> 韓国

|
●日本語教育の実施状況 ●教育制度と外国語教育 ●学習環境 ●教師 ●教師会 ●日本語教師派遣情報 |
●学習目的 ●シラバス・ガイドライン ●評価・試験 ●日本語教育略史 ●参考文献一覧 |
![]()
●全体的状況
【沿革】
現代の韓国における日本語教育は1965年の日韓国交正常化を契機とするというのが一般的な見方である。
高等教育においては、正常化に前後して大学校(日本における「大学」に相当)に日本語が専攻科目として設置され始め、1970年代以降、時代が下るに従い、大学院修士課程や大学(日本における「短期大学」に相当)の観光関連学科における日本語科目の設置、諸分野の日本研究者による学会創立等の動きを経て、今日に至っている。
中等教育分野では、1972年に出されたパク・チョンヒ(朴正熙)大統領の指示により1973年に高等学校の教育課程(日本の「学習指導要領」に相当)が部分改定され、日本語が第2外国語科目の1つとして導入された。以来高等学校では第2外国語として日本語が教えられている。中学校においても、2001年に第2外国語の1つとして日本語教育が始まっている。
★日本語教育略史へ
【背景】
日韓両国が、政治・経済、社会・文化等の多方面において緊密な関係を保ってきたことが、日本への関心の継続と、日本語学習者の新たな世代の登場に繋がっているものと思われる。
【特徴】
約91万人の日本語学習人口を擁し、年齢層は小学生から一般成人までと幅広いが、近年その中心は全学習者数の約84%を占める中学生および高校生である。韓国の高等学校では第2外国語が必修となっており、日本語は第2外国語に指定されている7言語の中で最も履修者が多い。
学習者数や学習内容に影響を与える要因は、中等教育では政府の定める教育課程および大学校・大学受験時の「修学能力試験」(国公立、私立を問わず、いずれの大学校・大学に進学する場合も受験が義務付けられている、全国統一試験)における第2外国語科目の取り扱い等、進学上の要因が大きく、高等教育・一般成人では、就職や昇進に有利になるかどうかという社会・経済的な要因が大きい状況であるが、最近では功利性を離れて日本の社会や文化に対する直接的・具体的な関心が学習動機となる傾向も見られるとの指摘がある。
学院と呼ばれる民間の教育機関や、文化センター、あるいは公民館などによる日本語教育も盛んである。
●最新動向
教育課程の改正*1
日本の学習指導要領に相当する韓国の「教育課程」は、現在第7次教育課程が施行されているが、2007年2月に「2007年改訂教育課程」が発表された(2007年改訂教育課程は第7次教育課程に続くものだが、「第8次」という次数は付いていない。これは、これまでの「5年ごとに改訂」から「必要な時期に改訂」に、改訂の方針が変わったことによる)。
基本的に、中学校では2010年度から、高等学校では2012年から適用されることになっている。
今回の改訂では、「第7次教育課程の細分類化」「文化教育の強化と再分類化」「基本語彙と意思疎通(コミュニケーション)基本表現の修正」が中心的な変更点であり、全体的にみると改訂教育課程では文化の教育を重視する傾向がある。
*1)李庸伯「韓国の2007年改訂教育課程について:外国語教育における文化を重視した改訂」『日本語教育通信On The Web』
(http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/report/018.html)
採用試験内容の変更*2
2009年度から、中等教師の採用試験が「1次:択一式筆記試験、2次:面接および教案作成、模擬授業」から、「1次:択一式筆記試験、2次:論述式筆記試験、3次:面接および教案作成、模擬授業」と、3段階試験に変更された。変更にあたっては、教師採用に伴う資格基準開発等を検討するため、韓国教育課程評価院のイニシアティブの下、韓国日本学会・韓国日語日文学会・韓国日語教育学会・韓国外国語教育学会の4学会が協力学会として参加し、研究が進められた結果、2008年5月に4学会による最終報告書が同評価院に提出されている。
*2)『日本語科目の教師資格基準開発と評価領域の詳細化および授業能力評価に関する研究 公聴会資料』(韓国語、非売品、2008年5月)
研修の必修化
2007年の関連法規等改正により、教職に就いてから3年を過ぎた教師は、3年ごとに90時間の職務研修を受講することが必須化されている。
●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
初等学校
教育課程においては英語が正規科目となっており、日本語を含む他の外国語は、教育課程上の正規科目となっていない。しかし、校長裁量で日本語科目を設置したり、放課後クラブ活動のなかで日本語を教えたりしている学校がある。2008年2月現在で、全国で297校の初等学校がクラブ活動での日本語教育を行なっているというデータ*3がある。
*3)田中洋子「韓国日本語教育最新事情」『月刊日本語』第21巻2号(株式会社アルク、東京、2008年2月)14ページ。
中学校*4
2001年度から裁量授業(校長の裁量で科目設置を決定できる授業)として始まった。ここでいう裁量授業は、上記の初等学校における校長裁量とは異なり、漢文、コンピューター、環境、生活外国語(日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語)の4科目の中から校長が設置科目を決めて実施することが教育課程で規定されているものであり、むしろ選択必修科目の1つというべきものである。
日本語の履修学年、時間数(1〜3コマ)などは各校によって異なる。日本語の教科書は『生活日本語 こんにちは』の1種のみである。2008年度の生活外国語全体の履修者数は約40万人(全中学生の19.6%)、学校数は929校(全学校の30.2%。但し1校が複数科目を設置可能)となっている。また、上記の生活外国語教師の資格を有する教員数は、延べ1,172人であり、このうち日本語教師の資格を有する者は497名である。
*4)生徒数、学校数、教員数は、2008年度『教育統計年報』韓国教育開発院
高等学校*5
2008年に一般系高校に在籍する生徒のうち、日本語を選択した者は、約43万人である。依拠している統計には、2005年度から実業系高校の履修者数が記載されなくなっているので、教師数から推定するしかない。一般系高校の日本語教師数が1,780名、専門系高校が727名である。一般系と専門系で教師1人当りの生徒数に変わりはないと仮定すると、専門系高校の日本語履修生徒数は推定約18万人となる。これにより、2008年度に日本語を学習する高校生は61万人程度であろう。この数は、韓国の全高校生の32.0%ということになる。第2外国語の履修は2年次からと規定されているが、履修形態は学校によって異なり、履修年次については2年次のみの例も2〜3年次の例もあり、また履修時間数についても週2コマまたは3コマと差異がある。
(なお統計上、一般系高校の中には人文系高校のほか、芸術高校、体育高校、外国語高校、科学高校が含まれる。また、専門系高校は農業高校、工業高校、産業高校、水産・海洋高校、家事・実業高校、総合高校に区分される。)
*5)生徒数、学校数、教員数は、2007年度『教育統計年報』韓国教育開発院
【高等教育】
高等教育機関での日本語教育機関数は統計によって差があるが、国際交流基金の2006年海外日本語教育機関調査によれば、韓国内の大学校・大学・大学院のうち398の学科で日本語教育が実施されていると見られている。他方、韓国政府の統計によれば、「日本」「日本語」が学科名に含まれる大学校・大学・大学院は259機関であることから、多くの大学校・大学・大学院が日本語を学べる複数の専攻学科を持っていることや、専攻だけでなく一般教養としても日本語が広く学ばれていることが伺える。このうち、インターネットを利用した通信教育大学校(通称「サイバー大学」)が韓国には17存在するが、このうち専門課程で日本語を学習できる機関は7ヵ所である。
【学校教育以外】
民間企業や官庁に勤務する社会人、大学生、大学院生、中高生まで、学習者層は多岐に亘っている。
最近、民間の日本語学校において初級段階の学習者数が減少しているとの指摘もあるが、全体数が減ったというより、生涯学習センター、文化施設の付属施設、企業内研修など教育機関の裾野が広がっていると考えるほうが妥当である。

| 初等学校 | 3年次から英語が正規授業として取り入れられている。 正規授業では日本語教育は行なわれていない。→「●教育段階別の状況」参照。 |
| 中学校 | 第1外国語(必修):英語 第2外国語(選択):中学校裁量活動の選択科目(年間136時間)の中の自由選択科目(年間107時間)(漢文、コンピューター、環境、生活外国語)における生活外国語(年間68時間)の1つとして日本語がある。生活外国語には、日本語の他に、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語がある。 |
| 高等学校 | 第1外国語(必修):英語 第2外国語(必修):日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語から1科目を選択。一般高校の日本語I・IIの授業では204時間を当てることができる。日本語Iは必修選択履修科目であるが、日本語IIは必修ではない。 |
| 中学校 | 『生活日本語 こんにちは』(第7次教育課程準拠 国定教科書。1種類。) | |
| 高等学校 | 一般系列高校 | 『日本語I』(第7次教育課程準拠 検定教科書。12種類) 『日本語II』(第7次教育課程準拠 検定教科書。6種類) |
| 外国語系列高校 | 『日本語読解I』『日本語読解II』『日本語会話I』『日本語会話II』『日本語作文I』『日本語作文II』『日本語聴解』『日本語文法』『日本文化』『実務日本語』(第7次教育課程準拠 検定教科書。6種類) | |
| 国際系列高校 | ||
| 家事・実業系列高校 | ||
| 大学 | 各大学が独自に開発した教材を使用する傾向がある。よって、ある特定の教科書が多く使われるということはない。 | |
| 師範大学: | 日本語教育科主専攻 | |
| その他の大学: | 日本語学が主専攻で、教育学が副専攻 または、教育学が主専攻で、日本語学が副専攻。 ただし、大学校に副専攻制度がない場合は、日本語学主専攻の者が資格を得るためには教育大学院(修士、2年半)を修了しなければならない。 (ここで言う「大学」は、日本で言う「学部」のこと。) |
| 私立高校の場合: | 各校が実施する教師採用試験 | |
| 国公立高校の場合: | 毎年12月に国が実施する任用試験(国家試験)。採用・異動は基本的に市道単位で行なわれる。中学校教師と高校教師は「中等日本語教師」という1つの採用枠として募集され、試験合格後に配属先が中学校と高等学校に振り分けられる。その後の人事異動で中学校から高校に、またその逆の異動も行なわれる。 |
| ソウル日本文化センター | 2名(内1名は嶺南地域担当) |
| ソウル日本文化センター | 1名 |
|
1.
|
日本の文化に関する知識を得るため |
9.
|
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入) | |||||
|
2.
|
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため |
10.
|
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため | |||||
|
3.
|
日本の科学技術に関する知識を得るため |
11.
|
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため | |||||
|
4.
|
大学や資格試験の受験準備のため |
12.
|
日本語という言語そのものへの興味 | |||||
|
5.
|
日本に留学するため |
13.
|
国際理解・異文化交流の一環として | |||||
|
6.
|
今の仕事で日本語を必要とするため |
14.
|
父母の期待に応えるため | |||||
|
7.
|
将来の就職のため |
15.
|
その他 | |||||
|
8.
|
日本に観光旅行するため | (1.〜15.から5つ選択) | ||||||
| 受験料: | 聴解・読解 | 30,000ウォン |
| 作文 | 40,000ウォン | |
| 口頭 | 50,000ウォン |
| 1960年代 | |
| 1961年 | 韓国外国語大学校に日本語科開設 |
| 1962年 | 国際大学校(現在の西京大学校)日本語科開設 |
| 1963年 | 第2次教育課程公布(〜1974)高校での第2外国語(英語・ドイツ語・フランス語・中国語)履修開始 |
| 1968年 | 在釜山日本国総領事館に日本語講座開設 |
| 1970年代 | |
| 1972年 | 2年制大学への観光科設置を機に、日本語関連専攻学科の開設に弾み 韓国外国語大学校大学院に日本語科開設 |
| 1973年 | 韓国日本学会 創立 国立慶尚大学校師範大学(教育学部)に日本語教育科開設 第2次教育課程の第2次部分改定 高校の第2外国語科目が必修化、5言語(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)から選択となる |
| 1974年 | 第3次教育課程公布及び施行(〜1981) |
| 1975年 | ソウル大学校等が入試本考査から日本語を除外の意志表明 |
| 1976年 | 「大学入学予備考査(1968〜1980)」の外国語選択科目に日本語が加わる。 |
| 1977年 | 在韓日本国大使館公報文化院に日本語講座開設 |
| 1978年 | 韓国日語日文学会 創立 |
| 1979年 | 国立慶尚大学校教育大学院に日本語専攻開設 |
| 1980年代 | |
| 1981年 | 「大学入学学力考査(1981〜1993)」(「大学入学予備考査」改め)への一本化、大学別の本考査の廃止 テレビ日本語講座(KBS3)放送開始 第4次教育課程公布 |
| 1983年 | 全国高校日本語教師を対象とする「1級正教師」資格研修開始(国立慶尚大学校) |
| 1984年 | 第4次教育課程施行(〜1987) |
| 1986年 | 大学入試において第1外国語(英語)と第2外国語が分離 第2外国語科目(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)のなかで日本語の学習者数が第1位となる |
| 1987年 | 教育改革により、第2外国語科目か実業科目(農、工、商、水産、家庭)のいずれかを選択する方式に変更 |
| 1988年 | 第5次教育課程公布(〜1995) 教育改革の修正、第2外国語と実業科目を異なる選択群に戻す |
| 1990年代 | |
| 1990年 | 第5次教育課程施行 |
| 1992年 | 第6次教育課程公布 ソウル大学校等が入試本考査の第2外国語から日本語のみ除外を発表 |
| 1994年 | 「大学修学能力試験(1994〜現在)」(「大学入学学力考査」改め)で第2外国語科目を除外 |
| 1996年 | 第6次教育課程施行(〜1995) |
| 1997年 | 第7次教育課程公布(〜現在) ラジオ日本語講座(EBS)放送開始 |
| 1998年 | 「2001年度大学修学能力試験」より第2外国語科目(日本語を含む)を選択科目として採用する旨発表 |
| 2000年代 | |
| 2000年 | 「2001年度大学修学能力試験」(大学入試)の実施 「高等学校日本語教師特別養成課程」の設置(2001〜2002年の2ヵ年間) |
| 2002年 | 第7次教育課程施行(〜現在) 中学校の選択科目に日本語を含む第2外国語が編入 「大学修学能力試験」に第2外国語が選択科目として導入される 韓国日本学連合会(5つの日本関連学会の連合)の発足 |
| 2003年 | 韓国日本語教育研究会(中等日本語教師会の全国連合)の設立 「第1回全国連合学力評価」(大学修学能力試験の模試。高校2年生対象)の実施 |
| 2007年 | 次期教育課程告示 |
| 2008年 | 李明博大統領就任後の行政機構改編により、教育人的資源部が教育科学技術部に |