●全体的状況
【沿革】
日本語教育は、リトアニアの独立回復後間もない1992年にビリニュス大学文学部にて選択科目として開始され、翌1993年には同大学に東洋学センターが設置され、副専攻として認められた。2000年には同センターにて日本学が主専攻となった。2002年9月には同センターはアジア研究センターと対象地域を拡大し、2004年に日本語主専攻第1期生5名、2006年に第2期生9人が卒業した。
一方、リトアニア第2の都市カウナスでは、1995年にヴィタウタス・マグヌス大学人文学部で選択科目として日本語教育が開始された。現在、同大学の日本語・日本学は副専攻となっている。授業は杉原記念館(旧日本領事館建物)2階に所在する日本学センターの教室で行なわれており、同センターには日本関係の書籍を集めた図書室及び、日本語教育設備が設置されている。第3の都市クライペダでは、クライペダ大学で公開講座として日本文化講座が行なわれている。
1999〜2000年、初等・中等教育機関においても自由選択科目として日本語教育が開始された。
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【背景】
リトアニア国民は親日的であり、政治、文化、科学の分野で二国間関係は広がりを見せているが、両国の経済的関係は未発展状態にある。そのため、日本語能力を生かせる場が限られており、教育機関は入学者数を制限している。他方、日本文化(伝統文化とサブカルチャーの両方)、先端科学技術に対する関心は高く、日本語学習希望者、日本への留学希望者も毎年増え続けている。
【特徴】
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初等・中等教育での日本語教育は初期段階にあるが、学習者数は増加傾向にある。 |
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高等教育においては、ビリニュス市、カウナス市の各国立大学で、選択科目、副専攻、主専攻扱いとなっており、毎年学習者数が増加している。 |
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日本語教師の資格を持った日本人教師は存在しない。 |
●最新動向
2008年6月、ビリニュス大学アジア研究センター日本語主専攻第3期生5名が卒業(留学のため2人が2009年6月に卒業予定)。現在、主専攻の学生数は1年生10名、3年生9名が在籍しており、夜間コースでは約60名の学生が同センターにて日本語を学んでいる。
ヴィタウタス・マグヌス大学で日本語・日本学を副専攻とする学生数は、25名に上る。ヴィタウタス・マグヌス大学は特に活発に学際活動を行っており、2008年春に前年同センターが主催した国際会議『ヨーロッパにおける日本のイメージ』の論文集を出版したほか、秋にも日本、オーストリア、イギリスなどの日本学研究者が参加した国際会議「近代化における伝統:ヨーロッパからみたアジア」を開催した。続いて2009年にも論文集『ヨーロッパからみた現代日本』を出版しており、秋には国際交流基金助成プログラム国際会議「イメージとしての日本」の開催と論文集出版などが予定されている。
現在、全リトアニアでは、初等中等教育機関6機関、高等教育機関2機関、学校教育以外の教育機関1機関で日本語教育が行なわれている。
●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
2機関で正規科目の第3外国語としての授業が行われている。教師は国際交流基金の日本語教師の研修を修了している。1997年より日本語教育が開始されたビリニュス市ウジュピオ・ギムナジウムでは、現在約15名の中・高校生が、ビリニュス・ジェミーノス・ギムナジウムでは中・高校生約20名が第3外国語として週に2時間学習している。
また4機関では課外活動として日本語を学習している。ビリニュス・リセユスで約15名、ビリニュス・サロメヤ・ネリス・ギムナジウムでは約37名、ビリニュス旧市街中学校では約12名、テルシャイ市ジェマイテ・ギムナジウムでは約10名が学習している。ジェマイテ・ギムナジウムでは国際交流基金の日本語教師研修を修了した者、その他の4校では日本に留学経験のあるリトアニア人や、ビリニュス大学の日本語学科の学生が教えている。
【高等教育】
卒業後の日本語の使用目的は特に問わず、基本的な日本語知識を養成する教育方法が一般的である。日本語学習の理由の一つは日本の大学への留学である。ビリニュス大学アジア研究センターでは隔年で日本語専攻の学生を受け入れている。現在、1年生10名、3年生9名。早稲田大学、筑波大学、 立命館大学と大学間交流協定を締結しており、毎年2名ほどが留学している。ヴィタウタス・マグヌス大学では、関西外国語大学、国際基督教大学、早稲田大学と交換留学提携を結んでおり、毎年4名の学生が日本へ留学している。卒業後、大学院へ進む者が多く、ガイドや日本語教師助手となる者もいる。
【学校教育以外】
1999年よりビリニュス・リセユスにおいて、課外科目として約15名が週に1時間日本語を学んでいる。
ビリニュス大学アジア研究センター附属夜間コースでは毎年日本語を勉強したい人を誰でも受け入れており、現在は約60名が学んでいる。
クライペダ大学にて、一般市民向けに講座が開講されている。
●教育制度
【教育制度】
4-6-2-4制または4-4-4-4制(進学する学校の種類によって異なる。)
小学校:7〜10歳(1〜4年生)
中学校:11〜16歳(5〜10年生)
高等学校(セカンダリースクール):17〜18歳(11〜12年生)
ギムナジウム:15〜18歳(9〜12年生)
職業訓練学校:17歳〜(11年生〜期間はプログラムによって異なる)
総合大学(university):19〜22,23,24歳(1〜4,5,6年生 学部によって異なる)
単科大学(college):19〜21,22歳(1〜3,4年生 専攻によって異なる)
義務教育は10年間。
小学校で1〜4年、中学校で5〜10年、高等学校で11〜12年を学習する生徒もいれば(4-6-2制)、9〜12年をギムナジウムという人文学、科学、技術、芸術面でより専門化した教育施設で学ぶ生徒もいる(4-4-4制)。なお、11年生から職業訓練学校に進む生徒もいる。大学進学については、各大学による入学試験は実施されておらず、高等学校最終年に実施される全国統一試験の結果によって、進学できる学校、学部が決定される。
【教育行政】
教育・科学省が管轄。高等教育は、その下に置かれた科学・高等教育局が管轄している。
●言語事情
公用語はリトアニア語。ソ連時代にロシア語と併用状況であったため、40代より上の世代はロシア語を第1外国語として使用している人が多い。30代以下は、英語を第1外国語としている。他に、ポーランド語、ドイツ語も人気がある。
●外国語教育
一般の学校では、中学1年(10歳)から第1外国語を必修科目として学習する。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語から選択でき、生徒の50%以上が英語を選択する。授業は週に2時間。中学3年より第2外国語として、ドイツ語、ロシア語、英語、フランス語等を選択できる。正規の科目としての日本語は、唯一ビリニュス市ウジュピオ・ギムナジウムにて第3外国語として学習できる。大学では、小・中・高校で学習した外国語の勉強を継続するか、新しい外国語を選択することもできる。
外国語の中での日本語の人気
日本語は、アジアの国の言語の中では人気がある方であるが、ヨーロッパ言語に比べれば学習者人口は格段に少ない。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
●教材
【初等・中等教育】
初等・中等教育機関では、国際交流基金から寄贈された日本語教材を使用している。
2002年『漢リ字典』が出版され、各日本語教育機関にて広く利用されている。
『新文化初級日本語Ⅰ』文化日本語専門学校(文化日本語専門学校)
『風のつばさ』アークアカデミー(凡人社)
『にほんごのきそ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『BASIC KANJI BOOK1』加納千恵子ほか(凡人社)
『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社インターナショナル)
【高等教育】
各大学の教師が使用する教科書を選択するが、教師が独自に教材を作成する場合もある。主な大学の使用教材は次の通り。高等教育機関でも、国際交流基金から寄贈された日本語教材が広く使用されている。
ビリニュス大学
『みんなの日本語ⅠⅡ』(前出)
『新日本語の基礎』海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
『BASIC KANJI BOOK1,2』(前出)
『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE Ⅰ〜Ⅲ』筑波ランゲージグループ(凡人社)
『新文化初級日本語ⅠⅡ』文化外国語専門学校(文化外国語専門学校)
『ヤンさんと日本語教育の人々』国際交流基金日本語国際センター(ビデオ・ペディック)
『A COURSE IN MODERN JAPANESEⅠ〜Ⅳ』名古屋大学日本語教育研究グループ(名古屋大学出版会)
『中級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)
『会話に挑戦!中級前期からの日本語ロールプレイ』中居順子ほか(スリーエーネットワーク)
『日本語作文 I 身近なトピックによる表現練習』C&P日本語教育・教材研究会(専門教育出版)
『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく読む本・初中級』『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく読む本・中級』『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく読む本・中上級』産能短期大学日本語教育研究室(産能大出版部)
『毎日の聞き取りplus40 上下』宮城幸枝ほか(凡人社)
『現代日本語コース中級ⅠⅡ』名古屋大学総合言語センター日本語科(名古屋大学出版会)
『らくらく日本語ライティング』田口雅子(アルク)
ヴィタウタス・マグヌス大学
『楽しく聞こう』文化外国語専門学校(文化外国語専門学校)
『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE 1,2,3』 Disc 1-3(前出)
『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE 1,2,3』Drills 1-3, Notes 1-3, Video 1-3,(前出)
『Japanese Language and People 1-10』 BBC Intervoice, Tokyo
『BASIC KANJI BOOK 1,2』(前出)
『Let's learn Nihongo, Basic Kanji 500』 JK 1-6, Seiko Corporation, 1991
『Let's learn Nihongo, Correct Japanese Usage: Basic』 JG 1-9, Seiko Corporation
『Let's learn Nihongo, Kanji Dictionary with Writing Practice』 JD 1-3, Seiko Corporation
『初級日本語 げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
【学校教育以外】
クライペダ大学での公開講座
『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』(前出)
『JAPANESE FOR BIGINNERS』吉田弥寿夫(学習研究社)
『Japanese for today』
●マルチメディア・コンピューター
ビリニュス大学及びヴィタウタス・マグヌス大学においては、日本政府の文化無償協力で供与された日本語学習機材によって、コンピューターを含むマルチメディアを活用した日本語教育が行なわれている。
●資格要件
【初等・中等教育】
小・中・高等学校の教師の資格要件は、4年制大学を卒業していることであり、日本語教師にも準用されている。
【高等教育】
一般的にリトアニアでは修士号以上の学位が必要とされているが、日本語のネイティブスピーカーが少ないため、日本語教師に関しては例外的に修士号が絶対必要とはされていない。
【学校教育以外】
特に明確な資格要件はない。
●日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成機関は、現在のところ設立されておらず、専門的な養成プログラムはない。
●日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
リトアニアでは在留邦人が極めて少ないため、日本語のネイティブであれば、資格要件は問われない傾向がある。現在、在留邦人1名が非常勤として数カ所で教えており、主に会話の授業を担当している。
●教師研修
一般の教師に対しては、5年ごとにリトアニア国立教育資質上達センターにて資質上達のコースを履修することが義務づけられている。コースを修了すると、新しい教師資格が与えられる。教師資格は一般の「教師」、「主任教師」、「教師メソディスト」、「教育専門家」の4段階の教師資格に分類されている。
国際交流基金の海外日本語教師研修を除けば、特に現職の日本語教師対象の研修はない。
●日本語教育関係のネットワークの状況
現在、全国で日本語教師は約10名ほどであり、教師会は存在しない。但し、教師間(個人ベース)で情報交換等が行なわれている。

国際交流基金、JICA、その他の機関からの派遣は行なわれていない。

日本語学習者の到達度を測るための共通の評価基準や試験はない。日本語能力試験もあまり知られておらず、活用されていない。