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■ 2009年度
英国

日本語教育の実施状況
教育制度と外国語教育
学習環境
教師
教師会
日本語教師派遣情報
学習目的
シラバス・ガイドライン
評価・試験
日本語教育略史
参考文献一覧

●2006年海外日本語教育機関調査結果
機関数集計円グラフ 教師数集計円グラフ 学習者数集計円グラフ
海外の日本語教育の状況について機関・教師・学習者を円グラフ化しました。

日本語教育の実施状況
●全体的状況
【沿革・背景】
 英国における日本語教育の端緒は、19世紀終盤の日本の開国期に赴任した外交官(アーネスト・サトウ、ウィリアム・アストン等)による日本の言語・文化の研究の形で立ち現れたものといわれており、その成果として口語辞書、文法書等の出版が記録されている。
 20世紀に移り、1917年にはロンドン大学に東洋研究所(The School of Oriental Studies, 1938年にThe School of Oriental and African Studies:以下SOASに改組)が設立され、教育機関内における日本語教育実施への萌芽が見られた。しかしながら同研究所で細々と営まれた日本語教育は、1921年に日英同盟が終息すると、中国大陸における植民地政策の利害対立による両国の敵対もあって、第二次世界大戦初期までは有名無実に近い状態に陥った。
 開戦後は、いわゆる敵国研究の必要性により、同研究所に日本語特別コースが設けられ、当該コースで日本語を学んだ者の数は、1942年から1947年までの5年間で約650名にも上る。
 戦後、1947年にスカボロー卿を座長とする諮問委員会が、主として国際問題への国家的対応のための学問基盤を整える観点から、東洋・アフリカ研究の必要を政府に答申したことにより、オックスフォード、ケンブリッジといった名門大学に日本語講座が設けられていく。1961年には、軍事力の低下した英国の国際影響力を維持する観点より、ヘイター・レポートが米国式の地域研究の必要性を説くこととなり、大学における日本語教育の成長になにがしかの弾みがつくこととなった。
 ヘイター・レポートは、政府および通商関係者の教育・研究の重要性についての認識が足りないものであるとして、1986年に調査報告書「未来に向けてーアジア・アフリカ言語および地域研究に対する英国外交・通商上の要請に関する一考察(通称パーカーレポート)」(以下パーカー・レポート)が作成される。パーカー・レポートの結論部では、日本語、日本文化を学ぶべき理由として「世界貿易における日本の役割の増大と国内市場の漸次の自由化」が挙げられており、同レポートに対する『英国日本研究会の見解』(1986年9月)においても、「長期的目標」として「世界第2位の日本経済の位置に鑑み、日本研究は英国の大学カリキュラムの中で重要な位置を占めることが望ましい」と述べられている。
 ロンドン大学SOASの歴史に垣間見られるように、同レポート発表以前より英国のアカデミズムにおいては日本を含めた東洋研究は、しかるべき位置を占めてはいたものの、少数精鋭の研究者による研究対象で、パーカー・レポートによれば 「米国の場合、過去27年間にわたって、歴代の政府当局がLess Commonly Taught Languages研究を、連邦と州レベルの双方において奨励し、これに資金を与えるという積極政策をとってきたのと比べ、著しくかつ恥ずべき対象をなすもの」であり、日本語学習の大衆化は、同レポート以後に図られたといえよう。その後、日本経済の順調な発展に影が差すまでの間、英国における日本語教育は、追い風に乗って成長を続けることとなった。1988年におけるイギリス通商産業省(DTI)Opportunity Japanキャンペーンも、日本を英国の外交、通商上の重要な相手国とみなし、両国の特に通商面での関係強化を視野に入れた日本研究および日本語教育振興策であった。
 国際交流基金の1993年海外日本語機関調査においても、西欧における日本語学習者の動機・目的として、日本研究者育成の役割と並び、ビジネスおよび科学技術分野での日本との関係の緊密化に当たって有利であるとの声が多く挙げられている。
 パーカー・レポート発表の4年後(1990年)に実施された海外日本語機関調査の結果と比較すると、英国における日本語学習数は約4倍にはねあがる(1990年3,562人、1998年13,916人)という大躍進を遂げたが、その背景には常に日本経済の国際的位置が影響を与え続けてきたといえよう。
 対象言語の使用国の国際経済力が、学習者の外国語選択に与える影響は今後とも無視できないものであるが、米国経済圏に匹敵する巨大市場が欧州統合により出現することや、回復の兆しを見せているとはいえ、依然、多くの問題を抱える日本経済の動向、さらには、台頭著しい中国経済の伸張は、これからの英国における日本語教育の将来を予測する上で楽観を許さないものである。
 一方、昨今の教育技能省(DfES : Department for Education and Skills)の言語政策に目を移すと、1995年よりイングランド地方に導入されたLanguage College認定制度、1999年4月より、公募により選抜された初等教育機関20校での実験的な外国語教育導入等の施策が観察され、教育技能省は一言語主義からの脱却を図り、明白に外国語教育の促進を企図している。また、2002年にはLanguage for All, Language for Lifeをスローガンとする外国語教育に関する国家戦略が発表された。これは、早期教育の必要性に着目して、2010年までにKeyStage 2(第3学年から第7学年)のすべての生徒に外国語を学ぶ機会を与えることと、生涯学習を促進するため「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能別に到達度を測定できるメソッドLanguage Ladderを主たる内容とし、どちらも2005年にその具体的な構想が発表された。
 こうした教育技能省の取り組みにもかかわらず、外国語教育全般を見渡すと、若者の外国語学習離れが社会問題化しており、とくにフランス語やドイツ語などEU内の「大」言語と目される言語で、GCSE(中等教育修了試験)の受験者数は年々著しい減少をみせている。ただ、日本語についてみれば、GCSE、Aレベル(大学入学資格試験)とともに僅かながらではあるが、受験者数は増えているのは悦ばしい傾向である。

★日本語教育略史へ

●最新動向
1)初等教育プロジェクト
 中等教育で広がってきた日本語教育が、徐々に初等教育でも行なわれるようになってきている。ランゲージカレッジで日本語を教える教師が、地域の小学校で日本語を教えるアウトリーチと呼ばれる形が一般的であるが、小学校の教師自身が、JETプログラム等での日本滞在経験を活かして、日本語や日本文化を教えているケースも見られる。国際交流基金ロンドン日本文化センターでは、ノッティンガム大学およびJapan 21 Educationと共に、初等日本語教育調査としてRSN(Ready Steady NihonGO!)プロジェクトを開発した。調査の一環として、英国の小学校約2万5千校に対してアンケート調査を実施し、外国語教育の実態調査も試みた。同プロジェクト調査の結果は、2003年11月にPrimary Conferenceとして報告した。2004年9月からは、「Ready Steady NihonGO! Course」をロンドン近郊の数校で試行した。同コースは、英国人小学校教員が日本人ボランティアとチームを組み、日本文化学習アクティビティーを織り交ぜながら、日本語を学習するコースである。2005年10月、日本大使館においてReady Steady NihonGO! プロジェクトのLaunch(成果発表会)を開催、ウェブサイトからダウンロードして無償で利用できるようになっているほか、インターネット環境が整っていない教室でも活用できるようCD-ROMが有償で頒布されている。

2)JLCスピーチコンテスト
 2004年以降、毎年、英国の外国語教師会であるALL(Association for Language Learning)の中の日本語部会JLC(Japanese Language Committee)が在英日本大使館及び国際交流基金ロンドン日本文化センターと共催して日本語スピーチコンテストを開催している。
 2004年は英国の11歳から16歳までの学習者を対象に、Key Stage 3 (11〜13歳)及びKey Stage 4 (14〜16歳) の2部門で、2005年からは、Key Stage 5 (17〜18歳)も加えて3部門で開催した。コンテストでは、審査の合間の時間等を活用して日本文化に関するワークショップも企画し、初中等レベルの学生が総合的に日本に触れる機会を提供している。

3)Language Ladder
 英国教育技能省は、外国語能力認証制度であるLanguages Ladderの全容を2005年5月に発表し、同年9月から8言語(フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、パンジャブ語、ウルドゥー語、日本語)を対象に全国的に開始した。このLanguages LadderはヨーロッパのCommon European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)をベースに、外国語能力を「読む」「書く」「聞く」「話す」の四技能別に「Can do statement」を用いて測定するものである。


4)KS 2フレームワークの発表
 英国教育技能省は、言語教育に関する国家戦略に基づき、2010年までにKey Stage 2(第3学年から第7学年)の全ての生徒に外国語を学習する機会を与えることになることに対応して、そのフレームワークを2005年10月に発表した。これは、第3学年から第7学年までの各学年での到達目標が記されたもので、具体的にどのようなカリキュラムを組んで授業を行なうかは各学校の判断に任されている。


●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
初等教育
 初等教育では、いくつかの機関が課外授業の一環として、臨時かつ非継続的な日本語授業を試みている。
 2002年12月18日、教育技能省が、Languages for All: Languages for Lifeと題した言語政策文書をイングランド向けに発表し、国際化が進む21世紀に取り残されぬよう、外国語教育に力を入れ、外国語能力および異文化理解能力を向上させていくことを宣言した。同文書では、特に初等教育段階での外国語教育を最重視し、「10年以内にKey Stage 2(第3学年から第7学年)のすべての小学生(7〜11歳)に外国語を学ぶ機会を与える」と提言した。これを受けて、すでに外国語教育を積極的に始める小学校も増え始めている。日本語教育に関しても、中等教育に携わる教師がその地域の小学校に出向いて日本語教育を行なう形を中心として日本語教育が始まっている。また、中には小学校の教師自身がJETプログラム等での日本滞在経験を活かして、日本の文化紹介や簡単な日本語教育を行なう例も見られるようになっている。
 2009年現在、過半数の初等教育機関で何らかの外国語教育が導入されており、フランス語が圧倒的大多数を占める。


中等教育
 教師数の不足を補うため、非母語話者日本語教師の一部は、充分な日本語運用力を育成する機会を得ないまま、教壇に立たなくてはならないことがある。一方、日本人日本語教師の一部は、語学教育に関する専門知識がないままクラスを任されているという傾向もある。英国の高等教育機関で日本語のみを専攻として公的教員資格を取得できる課程は、これまでノッティンガム大学PCGE課程のみであったが、2007年に同大学日本語コースは閉鎖となった。フランス語、ドイツ語、スペイン語などの欧州言語と日本語の組み合わせで公的教員資格を取得できる大学は、シェフィールド大学、ウェールズ大学、バース・スパ大学など複数ある。
 加えて、英国の事情(学習者レベル、カリキュラム等)に合った教材の開発、日本語関係試験(GCSE, A-level, WJEC等)の内容の一層の向上も望まれる。そのような中、国際交流基金ロンドン日本文化センターでは、2007年3月、GCSEのトピックシラバスに即して文法項目・構文・語彙・漢字などの導入順を割り振り、それらに対応したテキスト・ドリル・音声ファイルを作成して初級教材「力(ちから)」と名づけてウェブサイト上で公開した。
 上述のように、中等教育においては、今なお様々な問題を抱えるものの、1999年3月に英国の外国語教育者団体Association for Language Learning:略称ALLに日本語部会Japanese Language Committee;略称JLCが設置される等、問題解決に向けて日本語教師の相互協力、自助努力が図られている。

【高等教育】
 高等教育機関における日本語教育については、各機関の置かれている状況が千差万別であり一概に言えない。高等教育における日本語は、日本研究を主専攻とする者の必修科目、日本研究ともう1つの専門を持つ二重専攻における必修科目、他の分野を専門とする者の選択外国語科目の3つの異なる形態で学ばれている。
 英国では教育機関の評価方法に競争原理が導入されて久しいが、これにより英国における日本語教育の歴史で重要な役割を果たした学位コースが財政難により縮小・廃止される事態が起こっている。中等教育での学習者数増加により高等教育でも引き続き日本語を履修する者の増加が期待されるが、一方で今まであまり目立たなかった問題(既習者と未習者の格差、中等教育との連携)の深刻化も懸念される。
 高等教育に従事する日本語教師の多くは、雇用条件が概して不安定である。日本語教育の質の向上はもとより、英国の高等教育機関における日本語教師の雇用条件の改善のためにも、日本語教育に関する研究実績の積み重ねは極めて重要ではあるが、研究環境も未整備である。1998年9月に設立された英国日本語教育学会(The British Association for Teaching Japanese as a Foreign Language:略称BATJ)の活動は、こうした現状を打破するものとして期待を集めている。なお、1998年9月より、これまでは英国では事実上行なわれていないに等しかった高等教育機関における授業料徴収が開始されたことにより、大学進学者数の減少が危惧されていたが、日本語教育に関してはこれといった影響はみられない。日本語教育を行なう高等教育機関は各地に点在している。
 財源の確保が各大学に任されている中で、東アジア学部や日本学関連学位コースが大学のリストラの標的とされ、閉鎖に追い込まれる例がここ数年見受けられる〈以下参照〉。学部の運営方法、スタッフの研究評価成績などが原因とされることが多いが、英国の総合大学にとって東アジア学は「財源をもたらさない学問」と見なされやすいという事実も無視できない。これらの措置は英国の他の大学の東アジア学部、日本学関連コースにも大きい懸念を与えることとなった。下記のうち、University of Durhamに関しては、閉鎖計画が発表された2003年6月から閉鎖反対運動が繰り広げられた。


School of Modern Languages and Literature, University of Ulster
 2001-2002年度:最後の新入生受け入れ、2004年夏、日本語コース閉鎖

School of Modern Languages, Japanese Studies Section, University of Stirling
 2001-2002年度:最後の新入生受け入れ、2005年夏、日本語コース閉鎖

Dept of East Asian Studies, University of Durham
 2003-2004年度:最後の新入生受け入れ、2007年夏、東アジア学部(日本、中国、韓国学)閉鎖


一方、2007-2008年度にはマンチェスター大学で日本語・日本研究のBAコースが開講されるなどの動きもある。

【学校教育以外】
 英国の成人教育においては伝統的に豊富な選択肢が用意されており、一時のブームが鎮静したとはいえ、日本語は依然、相当の関心を得ている分野といえよう。但し、成人教育における各講座は受講希望者数の増減により目まぐるしく改廃されることがあり、成人教育において日本語能力を継続的に養うことを希望する学習者にとっては適切なコースを見いだすことが困難な場合もある。
 日本語教育を実施している成人教育機関は各地にあるが、ロンドン及びその近郊で最も多く見られる。


教育制度と外国語教育
●教育制度
【教育制度】
 6-5-2制。
 公立学校と私立学校の場合に分かれる。公立学校の場合では、Primary School Education(初等教育)が6年間(5〜10歳)、Secondary School Education(中等教育)が5年間(11〜15歳)である。その後、Further Education College(継続教育)に進む者、Sixth Form College(後期中等教育/大学進学準備課程)に進む者に分けられる。なおSixth Form Collegeに進む場合、義務教育を受けた学校が当該課程を有していればそのまま同一の学校で学ぶことが多いが、諸般の事情で別の学校に進む場合もある。
 義務教育は5歳から16歳までの11年間であり、日本より2年長い。
英国では定められた期間、通学すれば卒業資格を授与されるシステムはなく、義務教育終了時(Key Stage 4、第11学年、16歳)に、中等教育修了一般資格(GCSE:General Certificate of Secondary Education)試験に合格しなければならない。受験する科目数は自由であるが、通常5〜10科目程度受験する。大学入学志願者は、義務教育終了後、Sixth Formと呼ばれる後期中等教育段階の大学進学準備課程に進学して2年間AS/A-level試験の準備をする。AS/A-levelは、正式には教育一般認定上級資格(General Certificate of Education, Advanced Level)と呼ばれ、3〜5科目程度受験する。オックスフォード、ケンブリッジなどの有名カレッジを目指す者などは通常、4科目以上受験する。
Further Education Collegeで学ぶ場合、16歳から18歳までそこで教育を受けて大学に進学することもできるし、大学に進学せずに16歳から数年間かけて職業資格取得を目指すこともできる。主な職業資格としては、(1) National Vocational Qualification, (2) General National Vocational Qualification, (3) Advanced General National Vocational Qualification, (4) Business & Technology Education Qualification National Diploma, (5) Business & Technology Education Qualification Higher National Diplomaがあり、(3)(4)を取得したものはA-level合格者と同様に大学入学資格を手にしたとみなされ、(5)を取得した者は、学士号相当とみなされる。
Mature Student枠による、成人の大学入学が盛んである。
【教育行政】
Department for Children, Schools and Families
(児童、学校、家庭省)
英国の教育、職業訓練および雇用の全般に関する方針を策定する。
(2007年、DfES(Department for Education and Skills)がDCSFに改組された。)
Local Education Authority
(地方教育庁)
教育雇用省の施策を受け、各地方の実情に沿った教育施策を策定し、教育機関に推奨、勧告する。
Qualification and Curriculum Authority
(資格課程局)
教育省傘下。ナショナル・カリキュラムを定めるほか、各種試験の作成、実施団体に対し、指導、認可を行なう。
Centre for Information for Language Teaching
(言語教育情報センター)
言語教育に関する様々な情報の収集、提供を行なう。外国語教育施策に影響力を有する。
現在、名称はThe National Centre for Languagesとなっている。(略称はCiLTを使用。)
Universities and Colleges Admissions Service
(大学入学部局)
大学進学希望者と大学を仲介する。

●言語事情
 公用語は英語。
 一般には英語が広く使われているが、ウェールズでは、英語と共に約25%が日常的にウェールズ語を使用している。スコットランド・ゲール語、アイルランド語、アルスター語も少数ではあるが、それぞれの地方を中心に使われている。移民社会の内部では、コミュニティランゲージとしてウルドゥー語、パンジャブ語、中国語等、移民の言語も英語と併用されている。

●外国語教育
 ナショナル・カリキュラムには、Key Stage(Key Stage 1:5〜7歳、Key Stage 2:7〜11歳、Key Stage 3:11〜14歳、Key Stage 4:14〜16歳)別に科目の履修内容が示されている。それによると、イングランド、およびウェールズの公立中等学校の生徒は、Key Stage 3(7年生、11歳)から外国語(Modern Foreign Language)を履修しなければならないと定められている。その際、選択できる外国語として、次の19の言語が指定されている。

 フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ギリシャ語、ポルトガル語、デンマーク語、オランダ語(以上、欧州共同体加盟国言語)、ロシア語、中国語、ウルドゥー語、ベンガル語、パンジャブ語、ヒンドゥー語、グジャラティ語、アラビア語、トルコ語、日本語、ヘブライ語。
 どの言語を教えるかは、各学校の選択に任されているが、各校とも1つ以上の欧州共同体加盟国の言語を選択可能にすることが求められている。生徒はその能力等に応じて2つ以上の外国語を学習することも可能である。上述19言語のうちでインド系言語(ウルドゥー語、ベンガル語、パンジャブ語、ヒンドゥー語)、及び中国語については、英国国籍を持つインド人、中国人の子弟がHeritage Languageとして履修しているという性格が強い。一般に学校への外国語教育導入に関しては、各学校の校長、及び外国語教育主任の裁量に広く任されている。

Language College制度
 現在、中等教育レベルにおける日本語教育の普及に最も影響の大きい制度。保守党政権下の1995年から導入された。中等教育レベルにおける教育内容の多様化と、英国経済の国際競争力強化に資する人材の育成を目標とする。
 この制度は、イングランドの公立学校を対象にしており、Language Collegeに認定された学校は、認定時に100,000ポンド(約1,800万円)、さらに3年間にわたり毎年生徒一人当たり100ポンドの補助金が交付される。認定された学校は、これら資金を利用して最新の語学教育機器の購入や語学教師の雇用を図ることができる。生徒は、在学中に3つの言語を履修し、それら外国語が話されている地域の文化を学ぶとともに、外国との交流活動にも積極的に参加することが期待される。
 Language Collegeで導入される外国語は、圧倒的に欧州系言語が優位を占めているものの、少なくとも1つの非欧州系言語の導入が奨励されているため、Language Collegeの間では日本語教育導入に関心が高い。
 2008年現在認定校309校のうち111校(36%)で日本語教育が行なわれている。
 日本語教育に高い関心が持たれている背景には、(1)日本製の各種工業製品を通して、身の回りに比較的"日本"を感じることができること、(2)日英両国間の経済的繋がりの強さから、日本語の習得が将来の就職等に有利であろうという期待、(3)日本文化への興味などが挙げられる。



外国語の中での日本語の人気
 1996年から2002年にかけてのGCSE及びA-levelの日本語科目受験者数の動向は次表のとおり。
 
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
GCSE受験者数
1,359
1,265
1,269
1,201
1,028
816
779
643
636
561
595
669
676
A-level受験者数*
564
567
525
555
524
520
485
383
340
339
386
361
362
 *)2001年より A-levelは、AS(Advanced Subsidiary level)とA-level(Advanced level)に分けられたが、ここでは、合計をA-levelとして提示する。
 欧州言語、及びHeritage Languageとしての性格が強い中国語、インド系諸語、イタリア語、ギリシャ語、トルコ語、ポーランド語などを除く他言語に比して、「外国語としての」日本語の人気は高いと言えるが、受験者には在英日本人子弟も含まれているという特殊事情を考えると、英国人学習者の間での試験科目としての日本語人気を示すものとは必ずしも言えない。

大学入試での日本語の扱い
 2008年度日本語AS/A-level受験者は564人で、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、ウェールズ語(第1言語と第2言語の総計)、イタリア語、ウルドゥー語、ロシア語、アラビア語、トルコ語、アイルランド語についで12番目となっている。
学習環境
●教材
【初等・中等教育】
 初等教育では、Language College制度の影響を受けて、日本語・日本文化を導入し始める機関が増えてきているが、特定の教科書はなく、担当教師の自作教材が使われる場合が多い。
 中等教育では、コース設定は特定の試験を目指して行なわれることが多く、教科書の選定もそれに合わせられる。主教材では、『Obento』シリーズ、『Ima』シリーズ、『Mirai』シリーズ、『Wakatta』、『よくわかる日本語-モジュールで学ぶ(1)(2)(3)』コーベニ沢子ほか(アルク)、『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社インターナショナル)、『Nihongo Kantan』、『げんき』坂野永理(ジャパンタイムズ)などがよく使われている。
 副教材は、担当教師やコースによって異なるが、『絵とタスクで学ぶ日本語』村野良子ほか(凡人社)、『BASIC KANJI BOOK』加納千恵子ほか(凡人社)、『Hiragana in 48 minutes』、『Katakana in 48 minutes』、『Japanese-Language and People』、『読解20のテーマ』三井豊子ほか(凡人社)がよく使われている。A-level向けコースでは、『どんどん読めるいろいろな話』秋元美晴(武蔵野書院)や星新一、江國香織の短編小説などが試験委員会から指定されている。
【高等教育】
 高等教育の日本語主専攻、二重専攻のコースでは、初級レベルの主教材として、『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が最もよく使われている。中・上級レベルでは、市販の副教材に加えて、担当教師の自作の教材や生教材が使われることが多い。選択外国語としての日本語のコースでは、主教材として『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社インターナショナル)、『みんなの日本語』(前出)、『初級日本語げんき』(前出)が使われることが多い。選択外国語としての日本語のコースでは、主教材として『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社インターナショナル)が使われることが多い。
【学校教育以外】
 成人教育で日本語が教えられている場合は、『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』(前出)が主教材として使われることが多い。



●マルチメディア・コンピュータ
【初等・中等教育】
 BBCと国際交流基金ロンドン日本文化センターは、2000年10月より、英国における日本語教育促進のために、英国教育技能省(DfES)の出資を受け共同でICT教材開発プロジェクトに取り組み、「TOBU」という教材を開発した。対象者は、初めて日本語を学習する7年生(11〜12歳)。教材は12のユニットから成り、各ユニットはトピック・ベースで構成されている。(同教材はBBCのサーバーを用いて公開されていたが、2007年、BBCが配信を中止し、教材の一部をCD-ROM化して希望者に配布した。)
【高等教育】
 教材と同じく、機関によって異なるが、コンピューターを日本語教育には全く取り入れていない機関から、例外的ではあるがインターネットビデオコンファレンスシステムを用いた日本の大学生との通信を取り入れている機関まで、さまざまである。コースの内容が担当教師に任されている場合は、教師の裁量しだいで授業に取り入れているようである。中等教育と同じく、英語環境のPC(Windows)に日本語ソフトを入れ、ワープロ機能を使ったり、電子メールに取り入れたりしている機関もある。 CD-ROMは一般的にはあまり使われていない。
【学校教育以外】
 大学の開講する成人教育の講座では、大学の施設を利用し日本語教育にコンピューターを取り入れている例もあるが、非常に稀で、設備の面や、非常勤講師がほとんどであり授業時間が限られている等の現状から、日本語のコースに本格的に取り入れるのは難しいようである。

教師
●資格要件
【初等・中等教育】
 普通ノンネイティブ日本語教師が公立高校で教える場合は、教員免許 (QTS-Qualified teachers status)が必須である。教育免許として認められている代表的なものは次の通り。
(1)PGCE (Post graduate Certification in Education)取得者
(2)教育学士号 (Bachelor of Education)取得者
(3)TTA (Teacher Training Agency)の教育実習修了者
 これらの資格を取得していれば、日本語を主専攻で学んだことがなくても日本語授業を受け持つことが可能となるため、例えば、主専攻はフランス語であり日本語についての知識をほとんど持たない者が、日本語を教授しているような事例もある。
 最近はJETプログラムの派遣帰国者であるノンネイティブ日本語教師が増えている。しかし、日本に短期旅行したことがある教師から日本に長期滞在した経験のある教師、日本語を正規科目として勉強したことのない教師から日本語の修士を取得した教師まで、日本語教師のレベルはさまざまである。
 私立高校では、公立高校のような教師に対する資格制限はなく、教師の採用は各校の判断に委ねられているものの、質の高い教師獲得のために、多くの学校では公立高校と同様の教師資格及び教授経験を重視している。
【高等教育】
 ノンネイティブ教師、ネイティブ教師いずれも、特定の資格を要求されないが、言語学、日本語学、日本研究等の分野において修士以上の学位を取得している教師が多い。日本語教授の経歴も重視される。
【学校教育以外】
 大学が営む成人向け夜間クラスにおいては、各校で採用基準がさまざまだが、一般に特定の資格が要求されないことが多い。



●日本語教師養成機関(プログラム)
 ノッティンガム大学が1992年に、日本語PGCEコース(A Post-Graduate Certificate in Education in Japanese)を開設。日本語科目の正規の教員資格を取得できるコースであったが、2009年現在、ノッティンガム大学は募集を中止している。フランス語、ドイツ語、スペイン語等の欧州言語と日本語の組み合わせで公的教員資格を取得できる大学は、シェフィールド大学、ウェールズ大学、プリマス大学など複数存在する。
 その他、SOAS Language Centre等、民間の日本語教師養成講座が設けられており、講座終了時に独自の修了証を得ることができる。参加者の多くは在英日本人である。


●日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
 日本語教師の総数に対してネイティブ教師が占める割合は、中等教育では4割程度、高等教育では8割程度である。成人教育においては非常にネイティブ教師が多く、9割とも言われる。
【初等・中等教育】
 中等教育では日本語のみを教える常勤のポストは極めて少ない。その他のほとんどの常勤のポストは日本語と共に、フランス語やドイツ語などの他の外国語も教えることにより成り立っている。日本人教師の場合はそのほとんどが非常勤のポストである。
 日本人教師が中等教育機関で日本語のみを教える場合、公立学校、私立学校ともに、ノンネイティブ教師が所持する「教育免許」は必ずしも要求されず、労働可能な査証の所持が最重要視されるのが実情である。そのため、国際結婚等により英国で労働可能な査証を所持していれば、教員資格、教授歴、言語教育に関する専門知識等は問われないことが多い。
 このほかの日本人日本語教師としては、インターンシッププログラム、REXプログラム等により英国の中等教育機関に派遣されている者がいる。
【高等教育】
 約5割が常勤のポストに就いているが、いわゆる日本語教育と共に日本学を教えるポストと兼ねている例も少数だが含まれている。
【学校教育以外】
 成人教育においてはほとんどが非常勤の形態である。


●教師研修
現職教師研修プログラム(一覧)
1.JLC : Japanese Language Committee主催


JLCワークショップ:
《対象》主にJLC会員及び中等教育機関で教える日本語教師。
《内容》One dayワークショップの形式で行なわれる。
中等教育機関で日本語教育に携わる教師が中心となり、日頃教室で直面する問題をとりあげ、よりよい教室活動に結び付けるために、お互いに意見交換をする。

2.ALL : Association for Language Learning主催


ALL主催年次大会:
《対象》主に中等教育機関で外国語を教える教師。
《内容》年次大会の一環として3日間の会期中に外国語教育に対する学術的もしくは実践的なセミナーが開催される。

3.国際交流基金ロンドン日本文化センター主催


Japanese Refresher Course:
《対象》ノンネイティブ日本語教師。
《内容》ノンネイティブ日本語教師の日本語能力を向上させるための日本語集中講座。
Advance course と、Intermediate courceの2講座実施。

リソースワークショップ:
《対象》主に中等教育機関で教える日本語教師。
《内容》教師が自作の教材をシェアしたり、参加者がグループごとに教材を作成したりする。GCSE対応リソース「力」に基づいた教材作成ワークショップも開催。

中等教育機関の外国語部門主任教師のための日本語集中講座:
《対象》外国語部門主任教師。
《内容》外国語学部主任教師に日本、日本語及び英国における日本語教育の現状等についての理解を深める機会を提供し、日本語教育の新規導入、規模拡大等を目指すもの。同講座では、集中日本語授業に加え、日本語の試験、日本語教師の資質、要件について等のセッションがある。また英国における日本語教育の課題等について参加者同士の意見交換が盛んに行なわれる。

英国の各種試験をとりあげた研修会:
《対象》主に中等教育機関で教える日本語教師。
《内容》英国で行なわれている各種試験の中から1つをとりあげ、試験委員を招いて、1日の研修会が行なわれる。試験委員会からの試験および試験内容に関する紹介のほか、当該試験に則した教授活動の紹介がある。
教師会
●日本語教育関係のネットワークの状況
 1998年9月、1999年3月、英国で相次いで日本語教師ネットワークが設立された。前者は、高等教育機関の日本語教師を中心とした英国日本語教育学会(The British Association for Teaching Japanese as a Foreign Language:略称BATJ)。後者は、Association for Language Learning:略称ALL内に中等教育機関の日本語教師のために設立された日本語部会(Japanese Language Committee:略称JLC)である。
 なお、1988年の設立以来、英国唯一の日本語教育関係者ネットワークとして大きな役割を果たしてきた日本語協会(Japanese Language Association:略称JLA)は、中心人物の引退、財政基盤の弱体化等の理由で、1998年11月解散した。
 英国日本研究協会(British Association for Japanese Studies:略称BAJS)は、1974年、英国における日本研究発展のために設立された。現在、会員数は250名余り。1975年以来、毎春、年次大会が開かれ、広く非会員にも研究発表の場が開かれている。機関誌"Japan Forum"が年2回発行されている。


JLC(中等教育機関の日本語教師のための日本語部会)の活動
 JLCは、日本語教育の重要性と可能性に対する中等教育関係者の認識を高めることと、日本語試験の内容改善を試験委員会に働きかけることを最優先課題として活発な活動を展開してきた。
 会設立以来の主要な活動は次のとおり。
(1) スピーチコンテスト
(2) “Why teaching Japanese”リーフレットの作成と中等教育関係者への配付
(3) 教師が直面している課題に関する勉強会、ワークショップ
(4) ALL年次総会での日本語セッション

BATJ(英国日本語教育学会)の活動
 BATJは、高等教育機関の日本語教師を中心に「英国における日本語教育の振興を図る」ことを目的とし、研究・研修、また会員相互の啓発・支援活動を通して、日本語教育を研究分野の1つとして位置づけることに努力し、日本語教育の水準の維持・向上に貢献する」ことを主要目的として設立された。2007年7月現在、個人会員76名、機関会員10機関(1機関3名の会員枠)となっている。
 教師会としての主な活動は次のとおり。
(1) 会員の学問研究の発表、意見交換の場を提供するための活動:年次大会、研究紀要の出版
(2) 教授技術を磨くための活動:講演会、ワークショップ(地域ごとに年2〜5回程度)、勉強会(地域ごとに年数回)の企画
(3) 英国の高等教育の日本語教育に関する情報収集と提供のための活動:会報の発行(年2回)、会員のメーリングリストの運営

●最新動向
 BATJ(英国日本語教育学会)は1998年9月の設立以来、地域ごとに講演会、ワークショップ、勉強会などを継続的に実施しており、順調に活動が続けられている。

2005年 第8回BATJ発表大会 University of Cardiff
2006年 第8回BATJ発表大会 Royal Holloway University of London
2007年 第10回BATJ発表大会(ヨーロッパ日本語協教師会と共催)SOAS, University of London
2008年 第11回BATJ大会 University of Leeds
2009年 第12回BATJ大会 University of Sheffield

 また、毎年、国際交流基金ロンドン日本文化センターを会場にワークショップも開催されている。


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日本語教師派遣情報
●国際交流基金からの派遣 (2009年4月1日現在)
日本語教育専門家

国際交流基金ロンドン日本文化センター     1名

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●その他からの派遣
文部科学省外国教育施設日本語指導教育派遣事業
(REX/ Regional and Educational Exchanges for Mutual Understanding)
Lampeter Comprehensive School (Wales)1名
学習目的(2006年海外日本語教育機関調査結果)

 
1.
日本の文化に関する知識を得るため  
9.
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入)  
 
2.
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため  
10.
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため  
 
3.
日本の科学技術に関する知識を得るため  
11.
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため  
 
4.
大学や資格試験の受験準備のため  
12.
日本語という言語そのものへの興味  
 
5.
日本に留学するため  
13.
国際理解・異文化交流の一環として  
 
6.
今の仕事で日本語を必要とするため  
14.
父母の期待に応えるため  
 
7.
将来の就職のため  
15.
その他  
 
8.
日本に観光旅行するため   (1.〜15.から5つ選択)  
初等・中等教育/学習の目的棒グラフ 高等教育/学習の目的棒グラフ 学校教育以外/学習の目的棒グラフ
シラバス・ガイドライン
【初等・中等教育】
 英国では長い間学校における教育内容の基準が定められておらず、各学校の自主性に任されてきた。
 1988年に初めて中等教育機関における統一的な教育内容の基準としてナショナル・カリキュラムが政府により定められた。現行版は主として、1999年発行のもの。同カリキュラムはイングランドおよびウェールズの公立学校のみを対象としている。2008年9月からKey Stage 3 では新カリキュラムの導入が始まった。具体的なシラバスは、ナショナル・カリキュラムに基づきそれぞれの学校で設定される。私立学校はナショナル・カリキュラムを遵守する必要はなく、独自のカリキュラム及びシラバスを設定できる。公立学校、私立学校共にシラバス作成においては、それぞれの学校が生徒に受験させる試験(GCSE等)のシラバスから強い影響を受けている。なお、ナショナル・カリキュラムの内容を作成しているのはQCA (Qualification and Curriculum Authority)という機関である。
 ナショナル・カリキュラムは5歳から16歳(初等・中等教育段階)の生徒が学習する全ての教科に適用される。日本語を含む第2外国語の学習はKey Stage 3(11〜14歳)から始まる。到達目標及び学習プログラムはすべての外国語学習に同じものが適用されるが、日本語と中国語の読み書きに関しては追加事項が設けられている。Key Stage 2は2010年から新フレームワークが導入される予定。北アイルランド、スコットランドにおいても公立学校を対象として、それぞれ独自のカリキュラムが設定されており、スコットランド省、北アイルランド省の教育担当部門がその内容を管轄しているが、日本語学習に関するカリキュラムは存在しない。
【高等教育】
 シラバスおよびカリキュラムは機関独自に設定されている。多くの大学では、コースコーディネーターがシラバスをまとめている。
【学校教育以外】
 シラバスおよびカリキュラムは機関独自に設定されている。シラバスは受験する日本語試験を考慮し、使用する教科書に沿って作成する傾向にある。

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評価・試験
 英国では、初中等教育全体を通して、所定の教育課程の履修成績による進級や留年などの決定という制度はとられていない。また、初等学校から中等学校への進学にあたって生徒の能力に基づく選抜は行なわれていない。生徒の到達度を評価し、教育水準を維持するための措置として、教育技能省が認可した複数の試験機関が実施する外部試験がある。代表的な試験として、中等教育修了一般資格(以下GCSE)と大学入学資格(General Certificate of Education、以下GCE)が挙げられる。後者には、上級(A-level)試験と準上級(AS-level)試験の別がある。これらの試験は、いずれも各生徒が受験した科目についてのいわば成績証明書の性格を持つもので、高等教育への進学や就職にあたって重要な意味を持っている。英国では、各学校が課程修了者に修了証を出すという制度になっておらず、これら外部試験に合格しなければ、学校を終えても何の資格も得られないということになる。

●評価・試験の種類

GCSE(General Certificate of Secondary Education) 《対象》中等教育の学習者、成人学習者
《概要》
 通常は、Key Stage 4の終わり(16歳)に8〜9科目を選択して受験する。日本語をナショナル・カリキュラムの1科目として履修した生徒は必ず受験し、試験結果とそれまでの授業の成績をもとに、学習到達度が7段階で評価される。外国語の試験は、ナショナル・カリキュラムの規定に従い、設問の指示文や問題文が目標言語で書かれている。GCSE日本語の難易度は、全般的に日本語能力試験の4級レベル相当。日本語GCSE試験を作成している試験委員会は、EDEXEL Foundationのみ。
GCE(General Certificate of Education)・AS Level & A Level 《対象》 大学進学希望者
《概要》
 2001年5月より、1999年9月に制定されたシラバスに則ったA-level試験が行なわれている。試験は、AS Unit 1、A2 Unit 2と呼ばれる2つのユニットから構成され、前者はGCSE課程修了後、A-levelコースの前半1年の課程を修了した生徒を対象とし、後者はAS課程修了後、さらにA-levelコースの後半1年の履修課程を継続学習した生徒を対象としている。A-level志願者はAS、A2両ユニットを受験することが義務づけられている。
日本語教育略史
1903年 英国最初の日本語学校(シャンド日本語学校)がロンドンに開校。
1946年 ロンドン大学SOASにおいて日本研究講座が開設、高等教育レベルにおける日本語教育開始。
1970年 カウンティーアッパースクール(公立中等教育機関)において、英国の中等教育では初めての日本語教育開始。
1960〜
1970年代
成人教育機関(語学学校等)において日本語を教える機関が現れはじめる。
1986年 アジア・アフリカの言語、地域研究促進のためピーター・パーカー卿が英国大学助成委員会の委託を受けて作成した調査報告書「未来に向けてーアジア・アフリカ言語および地域研究に対する英国外交・通商上の要請に関する一考察」(通称パーカー・レポート)がまとめられる。このなかで日本研究及び日本語教育は英国の外交・通商上、大変重要であり、日本語を学んだ人材に対する需要は今後増加するであろうことから、これら分野の研究・教育の場を拡大するよう勧告。
1988年 イギリス通商産業省(DTI)Opportunity Japanキャンペーン実施。英日間の通商促進を最終目的として、高等教育機関での日本語、日本文化関係プログラムへの資金拠出を決定。
Japanese Language Association(通称、JLA)設立。
ナショナル・カリキュラム制定。日本語が選択できる19の外国語の1つとして指定される。
1980年代末から1990年代初頭にかけ、上記パーカー・レポートを受けた各種助成制度の拡充および日本の景気拡大による日本企業の対英国進出の増加等により、大学および中等教育機関において日本研究講座、日本語授業を開始するものが急増。
1993年 ノッティンガム大学において、英国の公立中等教育機関教員資格が得られる日本語教師養成講座開設。
1995年 Language College制度が開始。認定校の7割程度が日本語教育を導入。
1997年 国際交流基金ロンドン日本語センター開設。
1990年代
半ば
高等教育機関に対する政府助成金の大幅な削減により、いくつかの大学において日本研究・日本語講座が縮小または廃止された。中等教育においては、資金難により日本語授業を継続できなくなる学校がみられる一方、新たに日本語教育を開始する学校が相次ぐ。
1998年 Japanese Language Association(通称、JLA)解散。
英国日本語教育学会(BATJ)設立。
1999年 英国最大の外国語教育者団体ALL内に日本語部会(JLC)設立。
2000年 Nuffield Foundationが英国における外国語教育の抜本的改革の必要性を説く調査報告書"Languages:The next generation"を発行し、これに基づき政府への提言を行なった。
2002年 教育技能省(DfES: Department for Education and Skills)が、言語政策‘Languages for All: Languages for Life’を発表。
2005年

Language Ladder 発表。
KS2フレームワーク発表。

2007年

教育技能省よりLanguage Review
シェフィールド大学PGCEコースで日本語コース閉鎖。


参考文献一覧
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