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日本語教育

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■ 2009年度
ウクライナ

日本語教育の実施状況
教育制度と外国語教育
学習環境
教師
教師会
日本語教師派遣情報
学習目的
シラバス・ガイドライン
評価・試験
日本語教育略史
参考文献一覧

●2006年海外日本語教育機関調査結果
機関数集計円グラフ 教師数集計円グラフ 学習者数集計円グラフ
海外の日本語教育の状況について機関・教師・学習者を円グラフ化しました。

日本語教育の実施状況
全体的状況
【沿革】
 ウクライナでの日本語教育が始まったのはソ連時代の1940年代キエフ国立大学においてであるが、基盤は弱く消滅と再開を繰り返した。しかし、1991年の独立の頃より、現在の中心的役割を果たしている大学数校で本格的な日本語教育が始まり、その後約10年間のうちに大学から高校、小中学校へと急速に広がった。1996年のNIS諸国派遣日本語教育事業が開始されて以降、教育内容も充実し、全体的な学習レベルは飛躍的に伸びてきた。

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【背景】
 
ウクライナは日本から遠く組織的な文化交流は盛んとは言えないが、日本及び日本文化に対する一般的関心や日本語教育熱は高まっている。特に2004年のオレンジ革命及び2005年7月のユーシェンコ大統領訪日以後、経済を始めとして様々なレベルにおいて日本と関係を深めつつあり、トップクラスの通訳者の需要など、今後の日本語教育のあり方に影響を与えると考えられる。
 2006年5月よりウクライナ日本センターが一般向けの日本語講座・日本関連のイベントの実施、図書室の開放と図書の貸出しを行なっている。その結果、特にキエフ市内で日本関連の情報入手が容易になった。また、2008年1月より在ウクライナ日本国大使館によるボランティア日本人日本語教師の募集があり、2008 年度新学期からいくつかの大学でボランティア日本人日本語教師を受け入れた。
 教育省のガイドラインの中には特に日本語コースの設置基準やカリキュラムはない。英語などの外国語のガイドラインに準じて、各学校または大学が日本語コースをデザインするようである。ロシアの大学の講座内容も参考にしている。
【特徴】
 日本語教育の中心は首都キエフのキエフ国立大学およびキエフ国立言語大学であるが、地方都市のオデッサ、リボフ、ルガンスク、ハルコフ、ドニプロペトロフスクにおいても盛んであり、ウクライナ全土で15の高等教育機関、10の初等・中等教育機関や6の学校教育以外の講座において約1,500名が日本語を学習している。機関別の学習者数の内訳は高等教育機関と初等・中等教育機関ではほぼ同じであるが、教育環境が最も整っているのは首都のキエフの高等教育機関である。また、日本語需要のほとんどない地方都市でも、長く続けられている日本語講座がある。
 学習動機としては、日本文化や経済への関心、「東洋語」への語学的な興味などであるが、大学で近年、留学を目的に日本語を学んでいる学生が増えている。
 学習者の数を考慮すると、日本人及び日本人日本語教師の数は極めて少ないため、学習者が生の日本語に触れる機会が極めて限られている。地方都市においてはこの問題は一層深刻になっている。

●最新動向
 2008年度よりキエフ国立大学に三菱からの支援が入り、いくつかの日本語講座の開講及び教具・教材の拡充が図られた。また、2007年度よりウクライナ日本センターのプロジェクトとして進められていた『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ翻訳文法解説ウクライナ語版』が完成した。

●教育段階別の状況
【初等・中等教育】
 キエフ市内では公立、私立のシュコーラ13校(小学校1年から第1外国語として日本語を取り入れている東洋語学校が1校。一般には第2外国語または課外講座)で断続的に日本語教育が行なわれている。学習者数は500〜600名。キエフ以外では、キエフ近郊の中小都市、イリピン、チェルカシ、ハリコフ等の地方都市で日本語教育および日本文化の教育を行なうシュコーラがある。キエフ市内のシュコーラにはキエフ国立言語大学やキエフ国立大学とネットワークを持つ学校もあり、大学の在校生を非常勤講師として迎えたり、5年生の教育実習を受け入れたりしている。ただし、キエフの初等・中等教育機関の教育の主眼は、数校を除き日本文化の理解である。卒業後、大学日本語学科に進学する学生はあまり多くない。
【高等教育】
 日本語を主専攻として選択できるのはキエフ国立大学、キエフ国立言語大学、リヴィウ国立大学ほかウクライナ全土に数大学ある。他には国際関係学科や理工学系の学科などの副専攻・選択科目がある。最近、国費留学制度、大学間の交換留学プログラム、および私費留学などによる訪日歴のある学生が増加し、卒業時の平均到達レベルは伸びている。留学経験のある教師や日本で教師研修を受けた教師の増加も、高等教育機関での日本語教育のレベルを押し上げている。また、ここ数年、地方学習者のレベルの向上も顕著である。しかし、大学の教育システムが流動的で学習課程の改善が進んでいない、卒業後、習得した日本語を活かせる職に限りがある等の課題は残っている。新しい動きとしては、ザポロジェ、ドネツク、クリミアで選択科目としての日本語科を設置しているとの情報があるが、これらの講座の中には2009年5月現在、既に閉講されているものもある。
【学校教育以外】
 2006年10月にウクライナ日本センターの日本語講座が開講し、キエフにおける一般学習希望者のための日本語教育を実施している。受講者は、初級から上級まで100〜150名おり、初級受講者の過半数は公的な機関で日本語を学習したことのない社会人である。初級クラスには募集定員の3倍以上の応募があり、ニーズは高い。その他、希望に応じてクラスを開講する民間の語学センターがキエフ、リヴィウ、オデッサなどにいくつか存在する。

教育制度と外国語教育

教育制度
【教育制度】
 4-5-3制。
 初等教育が4年間(6または7〜10歳)、前期中等教育が5年間(10〜15歳。ここまでの9年間が義務教育)、後期中等教育が3年間(15〜17歳)。「シュコーラ」「ギムナジウム」などと呼ばれる12年の一貫教育校が多いが、専門性のある後期中等教育機関「リツェ」もある。高等教育は大学(5年間)と、シュコーラ9年生修了後に入学できる高等教育機関として技術・芸術系の専門を勉強する「ウチーリッシェ」(2〜4年間)、職業専門学校の「テフニコム」(3〜4年間)などがある。
 高等教育では、これまでロシア型の学位システムを採用していたため、日本やヨーロッパの大学と対応させることが困難であった。現在「ボローニャ・プロセス」と呼ばれるヨーロッパ型の単位認定システムを導入しつつある。教育制度はいまだ移行途中にあり、統一されていないように見受けられる。
【教育行政】
 初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育省の管轄下にある。


言語事情
 公用語はウクライナ語であるが、ロシア語も広く使用されキエフに住む者の多くはバイリンガルであるが、地域性が見られ、大まかに見ると東部・南部は主にロシア語、西部はウクライナ語が優勢である。近年は「ウクライナ語」化政策が採られ、教育面ではウクライナ語の使用が義務付けられている教育機関が多い。


外国語教育
 ソ連時代から引き続き外国語教育が盛んである。第1外国語は英語、ドイツ語、フランス語などヨーロッパ言語が主流であるが、アラビア語、トルコ語のほか、日本語、中国語、韓国語などの極東語も少しずつ学ばれるようになっている。
 外国語教育が必修になるのは前期中等教育(5年生)から。しかし近年、大都市では初等教育(1年生)から外国語教育を始める学校も多くなっている。教育機関によって、外国語教育の開始時期および外国語の種類も異なるが、第1外国語を上記のように英語、ドイツ語、フランス語とする教育機関が多い。高等教育機関では、スペイン語、アラビア語等も多くの学習者がいるが、近年、日本語をはじめ極東語と呼ばれる中国語・韓国語なども人気がある。

外国語の中での日本語の人気
 人気が高いのは英語、ドイツ語、フランス語の順。次にスペイン語、アラビア語と続く。近年は2番目、3番目に習得する外国語として日本語をはじめ極東語と呼ばれる中国語・韓国語なども人気がある。

大学入試での日本語の扱い
 日本語を主専攻としているキエフ市内の大学では第1外国語科目としての日本語の入試も行なわれ、初等・中等教育機関で日本語を学んだ学習者が受験することがある。

学習環境
教材
【初等・中等教育】
 ウクライナ語による教育省の認定を受けた教材も開発されたが、日本語教育が正規の科目として行なわれているキエフ市内の学校では使用率は高くない。多くは日本で出版された教科書をベースに教師が独自に作成した教材を利用している。
【高等教育】
 ほとんどの教育機関が日本で出版された教材の寄贈を受け使用しているが、キエフ、リヴィウ、オデッサ等の数ヶ所の大学では独自の日本語教材の作成も進められている。
【学校教育以外】
 学校教育以外の機関で使用されている教材についての確実な資料はほとんどない。キエフの語学センターおよび個人によるクラス等では、日本で出版された教科書またはそのコピーを使用している場合が多い。

マルチメディア・コンピューター
 多くの教師は所属機関や個人のコンピューターを使用してテストなどを作成している。授業中ビデオやDVDを使用する教師も多いが、学生にコンピューターを利用させる授業はほとんど行なわれていない。

教師
●資格要件
【初等・中等教育】
 原則として日本語学士号(バチェラー、大学4年修了時に取得)を持っていることが条件。ただしパートタイムとして、大学在学中の学生が教師を務めることもよくある。
【高等教育】
 日本とは学位システムが違うが、大学では助教授以上は博士号(ドクトル)をもっていること、常勤の講師は日本語修士号(マギストル、大学5年を修了時に取得)が条件。キエフ国立大学は例外で、講師でも博士候補生(カンヂダート・ナウーク)の資格が必要である。ただし日本人教師は学士以上。
【学校教育以外】
 特に基準はない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
 キエフの大学5校、リヴィウの大学1校、ルガンスクの大学1校、ハリコフの大学1校、ミコライエフの大学1校に日本人教師がいる。日本人教師はキエフの大学に集中しており、キエフ以外の都市の大学および初等・中等教育機関では日本人教師が不足している。2008年度の新学期以降、在ウクライナ日本国大使館で地方大学にボランティアの日本人教師を入れるための募集が行われた。

教師研修
 日本語教育を主専攻にしている大学では、外国語教育課程があり、4年、5年次に教育実習を行なっている。
 現職教師は、日本で行なわれている国際交流基金の日本語教師研修に参加する教師が多い。また、2007年夏に日本語教師の短期研修がウクライナ日本センターで行なわれた。

教師会
●日本語教育関係のネットワークの状況
 高等教育機関の日本語教師を中心的な会員とする「ウクライナ日本語教師会」がある。キエフで行事開催などの必要時に会議を開催し、日本語・日本文化に関する情報の交換や行事の準備等を行なっている。キエフでの教師会議で話し合った行事に関わる情報は、教師会で議事録を作成し全国の会員にメールで送っている。
 教師会の目的は、教師間のネットワーク構築、日本語・日本語教授能力の向上であり、具体的な活動には9月の弁論大会、12月の能力試験、3月の日本語教育セミナーなどの行事の運営がある。その他に10月に留学生帰国報告会、12月に日本語を学習している子供のための発表会を行なっている。

最新動向
 毎年開催しているウクライナ日本語教師会主催の「日本語弁論大会」や「日本語教育セミナー」などの行事や、「日本語能力検定試験」の実施により、ウクライナ全国の教師ネットワークは高等教育機関を中心に徐々にまとまりつつある。2007年の「日本語教育セミナー」は、ウクライナ日本センターと共催で行ない、協力関係を強化した。また2009年3月にはウクライナ全土の日本語教育関連機関に呼び掛け、キエフ国立大学が主催となって「第1回ウクライナ国際公開シンポジウム」を「日本語教育セミナー」と共同開催した。

★教師会・学会一覧へ
日本語教師派遣情報
●国際交流基金からの派遣(2009年4月1日現在)
日本語教育専門家
ウクライナ日本センター 1名

ジュニア専門家
キエフ国立大学・キエフ国立言語大学 1名

★「世界の日本語教育の現場から」のページへ
シラバス・ガイドライン
 義務教育における外国語教育全般についてのスタンダードが教育省から発行されている。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語では既に教育省が定めたカリキュラムがあるが、日本語にはまだなく、既存のカリキュラムに合わせて開発することが期待されている。
 ただし、このスタンダードは正規の授業に適応されるもので、課外授業などで日本語教育が行なわれている学校では各教師が独自のシラバスを作成し、授業を行なっている。
評価・試験
 客観的な到達度を測る全国共通の公的試験は実施されていないが、2005年12月よりキエフで日本語能力試験が実施されており、この試験が唯一の客観的な試験である。教育機関の資格認定としての効力はないが、就職などで日本語力の判断基準として使用されている。
学習目的(2006年海外日本語教育機関調査結果)

 
1.
日本の文化に関する知識を得るため  
9.
日本との親善・交流を図るため(短期訪日や日本人受入)  
 
2.
日本の政治・経済・社会に関する知識を得るため  
10.
日本語によるコミュニケーションが出来るようにするため  
 
3.
日本の科学技術に関する知識を得るため  
11.
母語、または親の母語(継承語)である日本語を忘れないため  
 
4.
大学や資格試験の受験準備のため  
12.
日本語という言語そのものへの興味  
 
5.
日本に留学するため  
13.
国際理解・異文化交流の一環として  
 
6.
今の仕事で日本語を必要とするため  
14.
父母の期待に応えるため  
 
7.
将来の就職のため  
15.
その他  
 
8.
日本に観光旅行するため   (1.〜15.から5つ選択)  
初等・中等教育/学習の目的棒グラフ 高等教育/学習の目的棒グラフ 学校教育以外/学習の目的棒グラフ
日本語教育略史
1940年代 キエフ国立大学で日本語教育が始まるが中断。その後も開始と中断を繰り返す
1990年 キエフ国立言語大学附属東洋語大学で日本語教育(主専攻)開始
(他地方を含む主要大学でも日本語教育開始)
1996年 キエフ国立大学で日本語が主専攻となり、NIS諸国派遣日本語教育事業として日本からの教師の派遣が開始(この時期、他大学および初等中等教育機関にも日本語教育が広まる)
1996年 キエフ国立大学で日本語が主専攻となり、NIS諸国派遣日本語教育事業として日本からの教師の派遣が開始(この時期、他大学および初等中等教育機関にも日本語教育が広まる)
1996年 ウクライナ日本語教師会の前身であるキエフ日本語教師会が活動を開始。第1回日本語弁論大会開催
2002年 第1回ウクライナ日本語教育セミナー開催
2005年 キエフで第1回日本語能力試験実施
2006年 ウクライナ日本センターが活動開始
2009年 第1回ウクライナ国際公開シンポジウム開催
参考文献一覧
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