
2010年7月4日日曜日、日本語能力試験が実施され、日本を含む世界14の国・地域 注1 で、約22万人が受験しました。今回の試験は、2005年から始まった日本語能力試験の改定作業を終えて初めて実施された、「新しい日本語能力試験」です。日本語能力試験が、どのような背景のもとに、どのように変わったかについて紹介します。
|
|
日本語能力試験を改定したのにはいくつかの理由があります。第一に、世界中で日本語を学ぶ人が増え、日本語能力試験を受験する目的も多様になったことです。国際交流基金が3年ごとに実施している「日本語教育機関調査」によると、海外の日本語学習者数は、1979年には約12万7千人でしたが、2009年には約365万人になりました。日本語能力試験の受験者数も、試験が始まった1984年には約7千人でしたが、日本語学習者数と共に増えて、2009年には約77万人になりました。それに伴って、日本語能力試験の受験目的も、実力の測定だけでなく、就職、昇給・昇格、資格認定への活用など多様になり、そのような目的のために役に立つ試験が期待されるようになりました。
では、「新しい日本語能力試験」(新試験)は、どのような試験になったのでしょうか。
第一に、言語によるコミュニケーション能力をより重視した試験になりました。新試験では、①日本語の文字や語彙、文法についてどのくらい知っているかだけではなく、②その知識を実際のコミュニケーションで使えるかも大切だと考えます。そこで、①を「言語知識(文字・語彙・文法)」、②を「読解」と「聴解」という試験科目によって測ります。新試験は、これらの組み合わせにより、総合的に日本語のコミュニケーション能力を測る試験になりました。
また、2009年までの試験(旧試験)のレベルは4段階(1級、2級、3級、4級)でした。新試験では、レベルがひとつ増えて5段階(N1、N2、N3、N4、N5)になり、より自分に合ったレベルが選べるようになりました。

図3 新旧試験のレベルの対応
新試験では、受験者の日本語能力をより正確に測るため、得点の出し方を変えました。
旧試験では、「何問正解したか」をもとに得点を計算していました。これを「素点」といいます。試験問題は、どんなに注意して作っても、毎回少しずつ難しさが変わります。素点では、試験が難しかったときと易しかったときとで、同じ能力の人でも得点が違ってきます。
新試験では、受験者一人一人がどのような問題にどのように解答しているか(正解したかまちがったか)を調べて得点を計算します。これを「尺度得点」といいます。尺度得点では、試験が難しかったか易しかったかに関係なく、どの回の試験でも、同じ能力であれば同じ得点になります。それにより、試験を受けたときの日本語能力をより正確に、そして公平に、得点に表すことができます。
また、試験結果の通知の際には「参考情報」をつけることにしました。これは、尺度得点の区分が、「言語知識(文字・語彙・文法)」のように、複数の要素で構成されている場合に、その要素(文字・語彙と文法)ごとの正答率 注2 をA〜Cの3段階で表示するものです。これにより受験者は、何がどのくらいできたかがわかり、今後の日本語学習の参考にすることができます。

図4 合否結果通知書(見本:N1〜N3)
さらに、新試験では、試験の結果を解釈するための参考資料として、「日本語能力試験Can-doリスト」(仮称)を提供します。
このリストは、各レベルの合格者が、実際に日本語を使って、どのようなこと(読む・話す・聞く・書く)ができると考えているかを調査して、その結果をレベルごとにまとめたものです。このリストを見ると、受験者やまわりの人々は「このレベルの合格者は、学習・生活・仕事などの実際の場面で日本語を使ってどんなことができそうか」のイメージが持てるようになります。
現在、新試験の受験者にアンケート調査を行っており、その結果をまとめて、2011年3月にまずN1、N2、N3レベルのリストを発表する予定です。
試験の改定に合わせて、新たに、日本語能力試験のロゴタイプを定めました。一般公募して集まった、825作品の中から選んだものです。このロゴタイプを使って、新しいデザインのポスターを作り、公式ウェブサイト(www.jlpt.jp)をリニューアルしました。公式ウェブサイトには、新試験についてもっとくわしい説明がのっています。新試験のレベル別問題例や日本語教師向けの資料集などもありますので、ぜひ利用してください。
「新しい日本語能力試験」が、新しいロゴタイプやウェブサイトと共に、いっそう親しまれ、活用されていくことを願っています。



