国内上映事業 アラブ映画祭2007 シンポジウム アラブ映画は一枚岩ではない オリエンタリズムとヨーロッパの影響力

「アラブ映画祭2007」

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アラブ映画祭2007 「アラブ映画シンポジウム」採録

アラブ映画は一枚岩ではない
アラブ映画シンポジウムの写真
2007年3月11日、赤坂・OAGホールにて

  • ゲスト:
  • アブドゥッラー・アル=ムヘイセン(サウジアラビア/『沈黙の影』監督)
    ナーセル・カミール(チュニジア/『バーバ・アジーズ』監督)
    アハセイン・ビンゼラーリ(アルジェリア/『インターネットの扉』主演)
    佐野光子
  • 司会:
  • 石坂健治(国際交流基金)
  • 通訳:
  • ナジーブ・エルカシュ

オリエンタリズムとヨーロッパの影響力

*日チェコ国交回復50周年、日スロバキア国交回復50周年事業
エルカシュ:

ナジーブ・エルカシュ ナーセル監督は先ほど、アラブ世界で最も保守的な社会であるペルシア湾岸地域の経済力、資金力、またアラブ映画への影響についてお話いただきました。そのためエジプト映画は映画らしくなくなってしまったけれど、その反面「真面目」と言われる映画を作ろうとしている監督たちは、フランスやヨーロッパから資金を得て映画を作っています。それは全く問題がないと思われますか。評論家によってはオリエンタリズム、つまりアラブ文明をとても美しい描き方をすることによって、逆に現実的ではないアラブ人のイメージを植えつけ、アラブ人の存在をもっと遠くしてしまうという批判もあります。ヨーロッパからの資金で製作をなさっているカミール監督は、どう思われますか。

カミール: 私の意見では、北アフリカのほとんどの映画監督は、いわゆる左派の知識人で、自分自身の社会の問題に触れようとしていると思います。たとえばアルジェリア、モロッコ、チュニジアの映画もまさに社会問題を取り扱っている作品が多いですし、今までタブーとされてきた触れられなかった問題、同性愛や女性の権利などという問題にも触れていると思います。

私の映画がオリエンタリズムではないかという話も、しばしば聞きます。たとえば黒澤映画について話すとき、過去についての物語だからあまりおもしろくない、という話になるでしょうか。『乱』(85)に描かれているのは、現代の日本ではありません。でも伝統や歴史を外したら、今の日本は存在しない。日本の心がなくなる。それと同じことではないでしょうか。私たちも自分の文化を描かない限り、映画はただのマーケット、商業になるだけです。

イスラームの美学について語ることはたくさんあります。まず、原理主義者たちがイスラーム文明の考え方を非常に狭い考え方にしようとしているので、その危険な傾向と戦わなくてはならない。私にとっては、映画の中で美しさを生み出すことは抵抗そのものであると思います。もちろん植民地と戦う国の歴史について映画を作ることもできます。血が流れるような映画を作ることも。ですが、そういうことばかり語っていると、私たちが持つ1700年ものイスラームの歴史を無視することにもなります。
ビンゼラーリ: 確かにヨーロッパのプロデューサーは、時々条件を付けようとします。ですが、アラブ側の監督たちは結構プライドを持って抵抗していると思います。  最近、こんなことがありました。アルジェリア人のアフマド・アッラシディ監督にとって、「ア フリカのレオ」という小説の映画化は、最大の夢でした。これはフランス文学の最高賞ともいうべきゴンクール賞も受賞した、フランス在住レバノン人作家のアミーン・マールーフの小説です。その「アフリカのレオ」映画化という大きなプロジェクトのため、アッラシディは長い間出資者を探していた。ついにフランスのプロデューサーが現れ、やっと夢を叶えられると思った矢先、条件が出されました。それはフランスの観客向けに出された条件で、監督の条件には合わなかった。小説の一部を変更するようにと言われ、プロジェクトは中止になりました。

要するに監督たちは、犠牲を払ってでも、自分の言いたいことは意識しながら前に進んでいる。もちろんもっと小さな条件、たとえばフランス人観客のためにこのフランスの俳優を使ってくれとか、フランスの技術者を使えくらいのことなら仕方ないとは思っていますが、それ以上のことについては、私たちは抵抗しています。
アル=ムヘイセン: 私の意見は少し違います。私も過去に何度かヨーロッパの国と協力しようとしましたが、まず私たちがアラブ人として普通に作った番組をそのまま受け入れてもらえることはありませんでした。共同作品の提案をしても、製作者はどうしてもヨーロッパの見方、ヨーロッパの視点でアラブを見ようとしているので、支援がもらえるのは、全てヨーロッパの見方に従った作品だと思います。
司会: 実に興味深い質疑でした。アジアでも多国籍の映画作りは進んでいますが、皆さんの地域のほうが先を行っている。日本は、なまじ黄金時代が昔あったので、多国籍での映画作りを苦手にしてきたものですから、今後そういった問題が起きてくるのではないかと、興味深く伺いました。では質疑応答に移ります。

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