アジア映画ベストセレクション 上映作品

『虹の兵士たち』 Laskar Pelangi
3月14日 土曜日 18時10分

虹の兵士たち ★ 日本初公開作品
監督:リリ・リザ
インドネシア/2008年/カラー/125分/35ミリ
記録的大ヒットのインドネシア版『二十四の瞳』。
小さな島の子どもたちと先生の物語

1970年代に世界的に有名なすずの産地として「インドネシアで最も裕福な島」になったブリトゥン島の廃校寸前の小学校。島の資源の恩恵を全く受けられない貧困層の漁師や採掘労働者の子どもたち10人が、教師とともに懸命に夢を育んでいく。インドネシアで大ヒットを記録、2009年ベルリン国際映画祭パノラマ部門での上映が決定。インドネシアで最も注目される監督であるリリ・リザ監督は、ジャカルタ・アート・インスティテュート卒業後、2000年に『シェリナの冒険』で監督デビュー。自ら脚本を手がけた『エリアナ、エリアナ』(02)は国際交流基金東南アジア映画祭で、『GIE』(05)、『永遠探しの3日間』(07)はアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された。

『ナガ・ボナール将軍2』 Nagabonar Jadi 2
3月14日 土曜日 13時30分

ナガ・ボナール将軍2 ★ 日本初公開作品
監督・主演:デディ・ミズワル インドネシア/2007年/カラー/120分/35ミリ

インドネシア独立の英雄ナガ・ボナール将軍は生きていた!
現代のナガ・ボナールと息子の父子愛の物語

スリで前科者のナガ・ボナールがオランダからの独立戦争で大活躍、一躍「将軍」と呼ばれる英雄となる。1987年につくられた映画『ナガ・ボナール将軍』は、独立戦争をコミカルに描き大ヒットを記録した。『ナガ・ボナール将軍2』は、その後日譚ともいえる作品。田舎の農園でのんびり暮らすナガ・ボナール。息子のボナガは大都市でビジネスを展開している。母親の墓がある農場を売却したいと言いだしたことからふたりの間に葛藤が起こる。インドネシア映画祭で11部門中最優秀作品賞をはじめ、6部門受賞。本作では、1987年の『ナガ・ボナール将軍』で主演したデディ・ミズワルが自ら監督を務めている。

インドネシア映画2作品『虹の兵士たち』『ナガ・ボナール将軍2』について

ここしばらく、インドネシアの芸術映画は、ガリン・ヌグロホというバロックの森に覆われているように見える。『オペラ・ジャワ』(06)で、神秘的な儀式性とコンテンポラリーアートの前衛性を融合させ、おそらく映画としてだけでなく、インドネシア現代芸術の頂点を極めたヌグロホが、映画界の中心であることはまちがいない。ちなみに娯楽映画では、ジョコ・アンワルの『禁じられた扉』(08)など、すぐれたホラーが出現している。
次の世代はどうなのか。ヌグロホ門下の俊英リリ・リザの作品は、師のように超越的ではない。卓抜なストーリーテリングの才能を武器に、鋭く歴史に踏み込んでいく。現代史の暗部を掘り起こした『GIE』、さらにはインドネシア版「二十四の瞳」ともいうべき感動的な新作『虹の兵士たち』まで、過去としての歴史ではなく、未来の歴史を創造しようという意志につらぬかれている。彼の作品を見逃すのは、インドネシア映画の現在を見逃すことだといってもいい。
独立戦争を初めてコミカルに描いた『ナガ・ボナール将軍』から20年以上たって作られた続編『ナガ・ボナール将軍2』。リリ・リザが歴史を手放さない語り手とするなら、主演も兼ねるデディ・ミズワル監督は、すぐれて神話的な語り手であると言える。つねに原初へ戻ろうとする。男として、オランダから独立を勝ち取ったインドネシア建国の神話へ。そして、返す刀で、この国の根幹にある母なるものへも、立ち返る。経済成長を遂げた現在の豊かさを背景に、独立戦争、古きよき家族、イスラム教への帰依など、インドネシアの次世代に訴えかける。
インドネシアの歴史と神話。そのビビッドな現在が、この新作二本に込められている。

梁木靖弘(アジアフォーカス・福岡映画祭ディレクター)

 

『マキシモは花ざかり』 The Blossoming of Maximo Oliveros
3月14日 土曜日 16時

マキシモは花ざかり 監督:アウレウス・ソリト
フィリピン/2005年/カラー/100分/35ミリ

ひたむきで可憐な少年マキシモ。
新しい出会いが少年を変えてゆく

12歳のマキシモはスラム街に住む少年。ハンサムな警官ビクトルに尊敬と好意を抱き始めたことから、マキシモと家族との関係に変化が生じはじめる。アウレウス・ソリト監督は1969年、マニラ生まれ。フィリピン大学で演劇を、モウェルファンド映画学校で映画を学び、『神聖なる真実の儀式』(02)は山形国際ドキュメンタリー映画祭2003で上映。自らが育った地区を舞台とする『マキシモは花ざかり』で長編劇映画デビュー、国内で大ヒットを収める。モントリオール映画祭最優秀新人監督賞、ロッテルダム映画祭NETPAC賞など、多くの映画祭で受賞歴多数。 (協力:東京フィルメックス)

フィリピンは1970年代にはアジアでも有数の映画大国であった。だが、その後ハリウッド映画の進出により国産映画のシェアは大きな打撃を受け、ブロッカ、ベルナールといった巨匠が亡くなった後はフィリピン映画が国際映画祭を賑わせることもなくなっていた。だが、ここ数年、フィリピン映画界には明らかに新しい波が押し寄せている。デジタルビデオの普及により若手映像作家たちが低予算で個性的な作品を撮り始め、その中から国際的に評価される作品が次々と出てきたのである。ベルリン、サンダンスなど世界各国の国際映画祭で上映され、東京フィルメックス2006でも多くの観客を魅了した『マキシモは花ざかり』は、この“フィリピン映画復興”の端緒となった作品だ。主人公はマニラのスラム街に生きる12歳のゲイの少年マキシモ。それぞれ小さな犯罪に手を染めている家族のために洗濯や掃除など雑務をこなすのがマキシモの仕事だ。この小さな共同体で貧しいながらも生き生きと日々を送っていたマキシモは、若い警官ビクトルに憧れ、外の世界に興味を持つが、このことは周囲に大きな波紋を巻き起こす……。本作で劇映画デビューした新進監督アウレリス・ソリトは、人々を温かい視線で見つめた日系フィリピン人ミチコ・ヤマモトの脚本を鮮やかな色彩を駆使して映画化し、スラム街をも魅力的な空間として見せてくれる。100人を超える少年の中から選ばれたネイサン・ロペスの素晴らしい演技も必見だ。
市山尚三(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

『細い目』 Sepet
3月15日 日曜日 11時30分

細い目 監督:ヤスミン・アハマド
マレーシア/2004年/カラー/104分/35ミリ

他民族国家マレーシアから新風。
マレー系の少女オーキッドと華僑少年ジェイソンの甘く悲しい初恋物語

オーキッド・シリーズのシンボル的作品。マレーシア版アカデミー賞グランプリ受賞。2005年東京国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞。ヤスミン・アハマド監督は、2003年『ラブン』で監督デビュー。その後、『細い目』、『グブラ』、『ムクシン』と少女オーキッドのシリーズ作品を展開。『ムクシン』はベルリン国際映画祭のジェネレーション部門で国際審査員賞グランプリ受賞。最新作『ムアラフ―改心』(07)は2008年の東京国際映画祭で上映された。次回作には日本を舞台にした作品が予定されている。

ヤスミン・アハマドが初めて日本に紹介されたのは、2005年の東京国際映画祭「アジアの風」部門。その『細い目』はまさに衝撃だった。マレー人少女オーキッドと“細い目”の華人少年ジェイソンの淡い恋の顛末に、さまざまな民族が暮らす周囲の環境を交えて描いたこの作品は、全くユニークな“マレーシア新潮”の誕生を高らかに告げていた。親密でユーモラスな家族の物語を基調としつつも、民族差別や女性差別といった“毒”もさりげなく盛り込まれ、しかもマレー映画史の巨人P・ラムリー、インドの詩聖タゴールから金城武、クラシック音楽に至るまで、劇中でそれらへの言及や引用を行う手さばきが実に上品で見事なのだ。『細い目』は最優秀アジア映画賞を受賞。続いて翌06年の同部門で『細い目』に『ラブン』(03)、『グブラ』(05)、『ムクシン』(06)を加えた「オーキッド四部作」が勢揃いした。これらの連作は、少女の成長のドラマを主筋に、恋人の死や主人公の結婚・離婚をはじめ、愛しい人々との出会いと別れが切なくも淡々と繰り返されていく。かつてフランソワ・トリュフォーやユーセフ・シャヒーンは作家の分身のような少年を描いて連作を続けたが、ヤスミンの少女四部作はそれらに匹敵するマレーシア映画の金字塔である。21世紀の最強シネアストのひとり、ヤスミンはすでに新作『ムアラフ―改心』(07)でポスト四部作の新たな一歩を踏み出しているが、彼女の美質の全てが詰まった原石のような『細い目』を久しぶりに東京で観なおす機会が訪れたことを大いに喜びたい。未見の方はぜひとも!
石坂健治(東京国際映画祭「アジアの風」プログラミング・ディレクター)

『世紀の光』 Syndromes and a Century
3月15日 日曜日 13時45分

世紀の光 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
タイ/2006年/カラー/105分/35ミリ 

世界中から注目されるタイの“恐るべき子ども(アンファン・テリブル)”アピチャッポン監督の長編最新作

長編第1作『真昼の不思議な物体』以降、『ブリスフリー・ユアーズ』『アイアン・プッシーの大冒険』『トロピカル・マラディ』、そして本作とすべてが国際映画祭で上映され、日本でも高い人気を誇るアピチャッポン監督。『世紀の光』はふたりの医師が物語の軸となり、人々が行き交う病院のふとした日常から、消えゆく束の間の“いま”が心に迫る。2008年にはジャ・ジャンクーなどと共に連作『ストーリーズ・オン・ヒューマン・ライツ』に参加。 (協力:東京フィルメックス)

これまでに発表した長編映画ほぼすべてが国際的な賞を受賞し、映像作家としても、世界各地のビエンナーレに招待されるなど、映画界のみならず、アート界からも、21世紀の寵児として注目を集める映画監督、アピチャッポン。そんな彼の、『ブリスフリー・ユアーズ』(02)、『トロピカル・マラディ』(04)に続く2部パート構成作品の3作目に当たるのが、本作だ。似て非なる2つの病院での日常が、地方と都市、思い出(あるいは親近感)の濃淡といった対比と、実際に医師であった両親にまつわる記憶の断片とを織り成す形で描かれる。映像と音楽による幻想的な美しさは言うまでもなく、ここで特筆すべきは、そこに描かれた日常風景の「リアルさ」だ。一語一句のディテールに至るまで納得のいくセリフと、背景になじみ、役柄を感じさせない素人の演技。タイ社会の文脈のなかで、これがいかに「リアル」であったかは、本作に対するタイ政府の検閲に如実に現れている。タイ政府は、公序良俗を乱すとして、本作のうち、僧侶がギターを弾くシーン、医師がキスをするシーンなど数カ所のカットを監督に命じたが、これらのシーンは、あまたあるコメディやホラーに登場する僧侶や医師の「振る舞い」に比べれば、非常にささやかなものであった。「個人的回想をリアルに綴ってみたい」という監督個人の想いからスタートした本作のリアリティは、タイ社会内でも共振しうるほどの強度を持つに至ったのだ。そしてその強度は、バンコクあるいはコンケーンを訪れたことのない者にも、デジャヴュを感じさせるほど強烈なのである。ぜひ一度、体感してほしい1作である。
吉岡憲彦(ジャパンファウンデーション 元バンコク駐在員)

『オーム・シャンティ・オーム』 Om Shanti Om
3月15日 日曜日 16時

オーム・シャンティ・オーム ★ 東京初上映作品
監督:ファラー・カーン
インド/2007年/カラー/169分/35ミリ

スーパースター、シャー・ルク・カーンが大活躍!
インド映画大スター競演のボリウッド・エンターテイメント決定版

1970年代、そして30年後である2007年のムンバイ映画界を舞台とする娯楽作品。恋愛・復讐劇に輪廻転生を絡めるというインドならではの娯楽ストーリーで2007年インドのメガヒット作となった。2008年アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映され多くの映画ファンを魅了した。両親とも映画業界で働いていたファラー・カーン監督は、「インドのハリウッド」ボリウッド=ムンバイで生まれ育つ。1990年代から映画の振付を担当し、数々の賞を受賞した、今もっとも期待される女性監督。
(協力:アジアフォーカス・福岡国際映画祭)

インド映画は世界一の製作本数を誇り、2007年は1150本の映画を生み出した。その中心となるのが、ボリウッドと呼ばれるムンバイ(旧ボンベイ)の映画界で、本作は1970年代とその30年後のボリウッドを舞台にしている。前半では、大部屋俳優のオームが人気女優シャンティに恋して彼女と共に命を落とし、死後彼は大スターの息子オームに転生する。そして30年後の後半では、スーパースターとなったオームに前世の記憶が甦り、復讐を誓う。キング・オブ・ボリウッドことシャー・ルク・カーンがふたりのオームを上手に演じ分け、スターのオーラを存分に見せてくれるほか、新人女優ディーピカー・パードゥコーンも輝くばかりの美しさで魅力的。さらにインド映画ファンにとって見逃せないのは、前半では70年代スターのそっくりさんや復元映像が次々と登場、また後半では現在のトップスターが大挙してゲスト出演していることだ。後半の映画賞授賞式とその後のパーティー・シーンには、50人近い本物のスターやセレブが顔を揃える。舞踊監督として、『ディル・セ 心から』(98)や『家族の四季』(01)、香港映画『ウィンター・ソング』(05)等で活躍してきたファラー・カーンは、『Main Hoon Na(僕がいるだろ)』(04)に続く監督第2作の本作でさらなる演出の冴えを見せ、エンドクレジットまでエンターテインメント満載、という作品に仕上げた。インドでは大評判を呼び、2007年の興収トップとなった作品である。
松岡環(アジア映画研究者)

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