国際シンポジウム2005 「アジアのキュビスム」

アジアのキュビスム

日韓友情年2005 日韓友情年2005事業

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国際シンポジウム2005 「アジアのキュビスム」

概要
開催趣旨

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、この夏に東京国立近代美術館で開かれる「アジアのキュビズム」展の関連企画として、日本も含めたアジア各国において、キュビスムの運動がいかに展開してきたかを討議する国際シンポジウムを開催いたします。
20世紀初頭にパリで創始されたキュビスムは、近代絵画の最も重要な転換点となった芸術運動であり、様式においても、また絵画観そのものにおいても、その後の美術の展開に、地域を越えた幅広い影響を及ぼしてきました。アジアもまたその例外ではありません。キュビスムの受容の時期や内実は、当然ながらそれぞれの地域によって異なってはいますが、絵画的な視覚の革命ともいうべきこの運動が、アジア美術におけるモダニズムのあり方を考える上でも、きわめて重要な意味をもっていることは間違いないでしょう。

本シンポジウムは実証的な美術史研究の成果を踏まえつつも、より広範な視野からキュビスムという様式と思想を再検討しようとするものです。単なる一運動の実態の紹介に留まるのではなく、その背景をなす社会的、文化的な問題をも討議のテーブルに乗せ、アジアにおける西洋モダニズムの受容史を多面的に考察することを目的としているといってもよいでしょう。

このシンポジウムのもうひとつのねらいは、各国の研究者が一堂に会し、それぞれの調査結果を相互に検討し合う機会を持つことによって、これまで個別の地域ごとになされてきたアジアの近代美術史の研究を総合的に捉え直す視点を獲得することです。「西洋対アジア」といった単純な対抗関係に陥ることなく、またアジアの固有性を訴えて特殊化するのでもなく、グローバルな立場からアジアの近代を考える一契機となることが期待されているのです。アジアの現代美術が注目されている現在だからこそ、その背景をなす歴史への理解がますます重要な課題となってきているのではないでしょうか。アジアのキュビスムをテーマにした討議の場は、さまざまな立場の研究者たちが集まって活発に意見を交換し、従来の搾取と受容という言説を超えた、アジア美術についての新たなヴィジョンを形成していくための貴重な機会となるに違いありません。私たちは美術史の分野においても積極的に発言していく時期を迎えているのです。

日時 2005年9月10日(土) 10:30~17:30、11日(日) 13:00~18:00
会場 国際交流基金フォーラム
入場無料。定員200名。日本語・英語の同時通訳付。
主催 ジャパンファウンデーション
お申し込み方法

必要事項(お名前、ご住所、TelFax、ご職業、参加希望日)を明記の上、下記の宛先へFax、または郵送でお申し込みください。
※受付先着順、定員になり次第、締め切らせていただきます。

お申し込み・
お問い合わせ

ジャパンファウンデーション 芸術交流部造形美術課(担当:古市保子)
※シンポジウム当日のお問い合せ:国際基金フォーラム

プログラム

9月10日(土)10:30-17:30

10:30-10:40
主催者挨拶
ジャパンファウンデーション
10:40-11:00
基調報告
建畠 晢(国立国際美術館館長)
セッション1 メトロポリス/トランス・ナショナリズム
11:00-13:30 アジア諸国においてキュビズムは、どのような経路を通じて受容され、どのように広がっていったのか。国境を越えた伝播のメカニズムを解明する足がかりとして、本セッションでは、東京、上海、香港、シンガポール、シャンティニケターンなどの「国際都市(=ハブ・シティ)」が果たした役割について議論をする。教育あるいは情報摂取の場としての都市、出会いの場としての都市、通過点としての都市、新しい美術運動の培地としての都市、あるいは諸権力の交錯する場としての都市、具体的なケース・スタディをもとに、多角的に論点を提出しあい、各国史を前提にした従来の美術史を超える、移動と交流の美術史のヴィジョンを探る。
モデレーター 水沢 勉(神奈川県立近代美術館企画課長)
パネリスト

五十殿 利治(筑波大学芸術系教授)

瀋 揆一[シェン・クイ ](カルフォルニア州立大学サンディエゴ校教授)

ジョン・クラーク(シドニー大学教授)

  小休憩
  討論/質疑応答
13:30-14:30 昼食
セッション2 脱-植民地化状況
14:30-17:00 アジアにおいて近代美術は、つねに両義的な受容をされてきた。一方では、各国内の旧体制からの解放、つまり個人主義的美学の象徴として受けとられ、他方では、それが西洋から輸入されたものであるために、コロニアルな心性を反映する反動的なものとして次世代から批判されるという具合に。その両極の間を揺れ動きながら、アジアの「キュビスト」たちは、本家ヨーロッパでは想像できないような、キュビスムの自分たちなりの転用を多方向に試みている。ヨーロッパでは都市的なものとして機能したキュビスムがなぜか農村風景に移植されたり、近代的な個人主義の符牒であるはずが宗教図像に使用されたり、また、旧体制と対決する表現の自由を主張するための様式になったり、あるいは戦争やテクノロジーの悲惨を示唆するために活用されたり、それぞれの国あるいは地域に特有の政治的・イデオロギー的諸力をうけとめて変容していく様子は、様式とその解釈の政治学の位相において多角的に考察されなければならない。それを通じて、逆に、アジア各国における近代化、脱植民地化のプロセスにおける文化変容の問題をあぶりだすような議論を展開したい。
モデレーター 林 道郎(上智大学比較文化学部助教授)
パネリスト

ジム・スパンカット(美術評論家)

パトリック・D・フローレス(フィリピン大学美術学部教)

アフマド・マシャディ(シンガポール美術館シニア・キュレーター)

  小休憩
  討論/質疑応答

9月11日(日)13:00-18:00

セッション3 身体/ジェンダー/色彩/装飾
13:00-15:00 本セッションでは、アジアにおけるキュビスム的な作品のフォーマルな特徴を分析することを起点にして議論を進める。しかしながらそれは、「フォーマリズム」的な議論をするということではない。むしろ、そういったフォーマルな特徴が、どういった諸力の拮抗の結果として生じたのかを見定めることが重要な議題となる。モチーフとしてヌードあるいは着衣の場合でも女性が多いこと、ヨーロッパのキュビスムにはない色彩や装飾的な画面処理が目立つこと、透明性のつよいグリッド・パターンが国境をこえて存在すること、あるいは、異常に長い縦長や横長のフォーマットの作品が多々あることなど、画家たちは、キュビスムを摂取することによって、近代的な目を手に入れると同時に、それを再び自分のものとして消化するために、様々な格闘をしているようだ。そういった格闘の跡を丁寧に拾い上げ、セッション2の議論の成果を見据えながら、それを単なる様式上の問題として処理するのではなく、作家たちの表現者としてのアイデンティティ形成にかかわる問題として掘り下げることを共通のテーマとして議論する。
モデレーター 松本 透(東京国立近代美術館企画課長)
パネリスト

キム・ヨンナ(ソウル国立大学美術館館長)

田中正之(国立西洋美術館主任研究官)

バート・ウィンザー=タマキ(カルフォルニア大学アーバイン校助教授)

  小休憩
  討論/質疑応答
15:00-15:30 休憩
セッション4 ナラティヴ/神話/宗教
15:30-17:30 アジアにおけるキュビスム受容の、象徴的な事例として、宗教や神話あるいは土着の伝承などを主題にした作品へのキュビスム様式の転用がある。一言で言って、物語図像へのキュビスムの転用ということになろうか。これは、キュビスムが、その起源においては、絵画の反物語化の欲求を内在させていたことを考えれば、その意図を裏切る否定的転用と言ってもいい事態であり、なぜ、どのようにそれが生じたのかを考察することは、アジアにおける受容の特質を浮き彫りにするために有効なのではないだろうか(それは、ある意味で、ヨーロッパにおけるキュビスムの二次的受容にも折り返される問題になるだろう)。形式的な問題としては、たとえば、どのようにキュビスムの切子面的な画面処理が物語表現へと転用されているかといった問題がありうるし、また、より大きな問題としては、主題化されている物語の性格はどのようなものなのか、そしてそのオーディエンスはどのような階層なのかといった、ヨーロッパの事情とはまったく異なる問題が議論の俎上に乗せられるに違いない。セッション3の成果をも踏まえながら、より普遍的な地平へとつながる議論を展開したい。
モデレーター 辻 成史(大手前大学人文科学部教授/(財)西宮市大谷記念美術館館長)
パネリスト

建畠 晢(国立国際美術館館長)

後小路 雅弘(九州大学大学院教授)

カレン・コルデロ・レイマン(イベロアメリカ大学美術史学部教授)

  小休憩
  討論/質疑応答
全体のまとめ 林道郎(上智大学比較文化学部助教授)
18:00 終了

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