日本と東南アジアのメディア・アート展「Media/Art Kitchen – Reality Distortion Field」 企画趣旨

企画趣旨 (国際交流基金)

2013年の日・ASEAN友好協力40周年を記念して、各国の若手キュレーターとアーティストの協働作業を通じて、日本と東南アジアのメディア・アート展「Media/Art Kitchen – Reality Distortion Field」を東南アジア各国で実施します。

コンピュータ技術の発展により、アートの分野において映像やデジタル技術を使ったメディア・アートと言われる作品は増加の一途を辿り、特に近年では、先端的で高額な設備の必要な狭義のメディア・アートのみならず、音や身体表現、日常の身近な現象などとコンピュータ技術が結びついた広義のメディア・アートとも言うべき注目すべき動向も表れ、メディア・アートの領域は拡張しています。日本では60年代から映像表現において様々な実験が試みられており、現在若い世代を中心に分野を横断したクオリティの高い様々な形態の作品が制作され、発表されています。

一方、昨年終了したJENESYSクリエータ招へい事業においては、アニメや映像表現に関して調査するアーティストや技術者が多いことからもわかるように、東南アジア各国においても、デジタル技術は90年代後半から積極的に取り入れられて、若いアーティストにとって主要な表現手段となっています。現在アジア各国で行われる国際展にも多くの映像作品が出品され、映像に特化したフェスティバル(「メディアシティ・ソウル」、「OK. ビデオ・フェスティバル」等)も見られ、いまや映像作品の出品されない現代美術展は有り得ないほどです。背景としては、従来の絵画や彫刻といった既存の美術の欧米中心の美術史や概念に囚われない自らのアイディアを表現する身近で簡便なメディアとして採用されたことや、美術館制度が整備されるのが遅かった東南アジア各国において発表の場所を選ばない自由があったことなどの現実的理由がありますが、近年では、東南アジア各国の順調な経済発展が、大いに技術的側面の向上を後押ししています。別の見方をすれば高額な機材と高度な技術がなければ優れたメディア・アート作品ができないのかと言えば必ずしもそうではなく、初歩的な技術のシンプルな作品であってもオリジナリティ溢れる作品は、我々の心を動かすことが多々あります。さらにまた別の見方をすれば、例えばインドネシアの伝統芸能であるワヤン・クリッ(影絵人形芝居)は民衆の中から生み出された土地固有の映像芸術であるとも言えるわけで、メディア・アートの定義と領域は、世界のアートの動向に連動すると同時に地域の事情を反映して複雑に多様化しています。一般的には科学技術によるグローバルで普遍的な表現手段としての側面が強調されますが、実際にその内実は、個人の固有のイメージとともにその個人が属する共同体の歴史、言語、文化等が現れた表現として、また身体感覚と深く結びついた表現手段として捉えることも可能なのです。

本展では、メディア・アートの分野に強い東南アジアの若手キュレーター・研究者と、日本の同世代キュレーター・研究者が調査と議論を通じて共同で展覧会のコンセプトを練り、日本と東南アジア各国を出自とする作家と優れた作品を選び、現地の諸事情にあった展覧会や関連事業を実施します。含まれるメディアとしては、フィルム、デジタル映像、アニメ、写真、音、パフォーマンス(身体表現)など領域横断的な広義のメディア・アートを対象とします。グローバル化の進む現在だからこそ、メディア・アートという表現手段を通して、日本をはじめこれら関わる国々の土地固有の文化との精神的つながりにも再び目を向けていければ、極めて今日的な共通の課題を提供できるものと考えます。
さらに、本展の実施においてはそのプロセスを含めて、今後益々発展する可能性のあるメディア・アートという新しい分野を協働作業の場として提供することを通じて、日本と東南アジアの若い世代間の未来志向的パートナーシップの醸成と次世代の人材育成の場となることが期待されます。

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