はじめに

1998年の「エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ 1998」は、国際交流基金の主催事業としては1995年に引き続き二度目の取り組みとなりました。このプロジェクトは、音楽における、一過性ではない「継続的なコラボレーション・プロジェクト」であるところにその特徴があります。

「エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ」は、西洋文化とは異なった発展を遂げているアジアの優れた芸術・文化に触れ、アジアの音楽との関わりをもっと探求しようと生まれた「エイジアン・ファンタジィ」という音楽祭が出発点となっています。この音楽祭では、「アジアの音楽家の出会いと交流」を目的に、91年から毎年一回東京においてさまざまなテーマを設定しながら意欲的なステージが繰り広げられてきました。

1995年、戦後50周年という一つの節目にあたるこの年に、国際交流基金では、この「エイジアン・ファンタジィ」に音楽分野における国際共同制作の新しい可能性を見出し、その初の海外公演を東南アジア3カ国(シンガポール、マレーシア、インドネシア)において実施いたしました。日本をはじめアジア地域のジャンルを越えた優れた音楽家32名により構成された個性あふれる音楽集団が、訪れた各国の音楽家との共演も交えてコンサートを行なうという企画で、名称も「エイジアン・ファンタジィーオーケストラ」とし、かつてない規模による音楽公演となりました。この年はシンガポールでは独立30周年、インドネシアでは独立50周年に当たり、それぞれの国がさらに新たな発展に向けて踏み出そうとする記念の年を祝賀する事業として、その門出を多いに盛り上げました。

1998年3月、二度目の「エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ」は、舞台をインド(デリー、ムンバイ)、ベトナム(ハノイ)、フィリピン(マニラ)へと移して開催いたしました。

今回のツアーは、インド独立50周年、日本ベトナム外交関係樹立25周年、フィリピン独立100周年にあたり、各国で前回にも劣らない熱狂的な反応をもって迎えていただくことができました。また、このツアーが日本と同様、若者が欧米のポップスを志向するベトナム、フィリピンにおいては、自国固有の文化に対する再評価ということについて、何らかの貢献ができたとすればこれほどうれしいことはありません。

今回の事業は、異なる文化的背景を持ったアーティスト同士の単なる「交流」から一歩踏み込んだ「共同作業」が展開され、各人が切磋琢磨した結果が現れたものと思います。今回の事業を含め、文化交流事業の評価は長い目で行なう必要がありますが、その意味においては、今後の参加アーティストの活動、および今後さらに拡がりと深みをましていくであろう「エイジアン・ファンタジィ」について、関心を持って見守っていただきますようお願いいたします。

国際交流基金は、国際文化交流を推進する機関として1972年に設立された外務省所管の特殊法人で、設立以来さまざまな文化交流事業を手掛けていますが、舞台芸術における国際交流もその大きな柱となっています。古典から現代まで、演劇、音楽、舞踊等幅広い日本の舞台芸術を諸外国に紹介してまいりました。特に経済的な事情等により民間ベースでは実現が困難な国々において重点的に自主企画の公演事業を行なっていますが、単に日本の文化を紹介するだけでなく、海外のアーティストとの間で互いの差異を認識しつつも、その芸術性や価値観をぶつけ合うような、真の意味での交流を舞台芸術を通していかに図るかということを常に課題として抱き続けています。

この報告書は、今回の「エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ」アジア公演に参加していただいたアーティスト、制作スタッフの感想、ツアー終了後の座談会、舞台写真、そして各公演地での演奏を収録したコンパクトディスク等からなるツアー記録であり、今回のプロジェクトについて、皆様にこの事業の存在を知っていただくと共に、その意義を広く世に問う意味で作成いたしました。この報告書を手に取っていただいた方々に、現場の熱気と興奮を感じ取っていただければ幸いに存じます。

最後になりましたが、この公演事業に対しご支援ご協力いただいた、各国共催機関、関係各公館、トヨタ自動車株式会社、富士通株式会社、並びにすべての関係各位の皆様に、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

1999年4月
国際交流基金

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