アジア演劇人によるシェイクスピア「リア」

こちらの事業は、旧機構時のページを移行したものです。

この作品の記録映像が国際交流基金で上映されます(2011年4月2日)
国際交流基金招へい・制作 現代演劇作品記録上映シリーズ
記録映像で見るアジア現代演劇―― 1990年代から2000年代へ

概要 国際交流基金アジアセンターはこれまで、アジアの現代舞台芸術、特に、現代演劇の招聘公演に力を注いでまいりました。この度、当センターでは、これまでに培ってきたアジアの演劇人との共同作業により、国や劇団を超えた作品制作に取り組むことになりました。

アジア6ヵ国の参加 中国、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、そして日本からスタッフ・俳優を集めての第一弾は、シェイクスピアの「リア王」を下敷きにした「リア」。演出には、斬新な感覚が国際的な注目を集めるシンガポールの若手演出家オン・ケンセン、脚本には、独特の様式的な文体で物語性を展開する岸田理生、作曲には、アジアン・ミュージックの旗手として国際的に活躍するシンガポールのマーク・チャンと、インドネシア・現代ガムラン音楽の第一人者ラハユ・スパンガを迎えます。

シェイクスピアの読み替え 本「リア」は、「リア王」を下敷きにしてはいますが、娘による父殺し、さらには、原作には登場しない"不在の母"による救済の物語として読み替えていきます。その背後には、権力闘争、新旧世代の交代、さらには老いの問題といった、今日のアジアが抱えるさまざまな問題が読み取れることになるでしょう。

多様で個性的なキャスティング リアに能の梅若猶彦、リア殺しの長女に京劇の江其虎と、伝統演劇を核にしつつ、片桐はいり、シンガポールの個性派マルチ・タレント、ナジフ・アリをその対極に置く個性的なキャスティング。その間を、インドネシア伝統武術の名手、タイ現代舞踊のダンサー、シンガポール・マレーシアの実力俳優たちが埋めていきます。また、長女、次女(原作の三女)、長女の影法師といった女性役をいずれも男性俳優が演じますが、これも、女形という、アジア演劇の伝統を意識したものです。

言葉 本作品は言語的にも音楽的にも、極めてユニークな手法をとっています。梅若は日本語で能、江は中国語で京劇と、それぞれの言語と伝統的な発声、マレーシア陣はマレー語、タイ陣はタイ語、シンガポール陣は英語と、各自の根差す言語と発声を用います。

音楽 また、マーク・チャンとラハユ・スパンガ作曲による音楽はインドネシアの音楽家たちによって演奏されますが、マーク・チャン自身がリアの音の精霊として、また琵琶の名手・半田淳子が長女の音の精霊として舞台に立ちます。ナジフ・アリのラップも聞かせどころです。

公演日程等

  1. 1.企画・制作 / 国際交流基金アジアセンター
  2. 2.共同制作 / Bunkamura
  3. 3.主催 / 国際交流基金アジアセンター/ 朝日新聞社 / Bunkamura(東京公演)/
    大阪21世紀協会他(大阪公演)/ 福岡市他(福岡公演)
  4. 4.公演日程
1997年9月
9日(火) 午後7時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
10日(水) 午後7時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
11日(木) 午後7時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
12日(金) 午後7時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
13日(土) 午後2時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
午後7時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
14日(日) 午後2時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
15日(祝) 午後2時 東京・Bunkamuraシアターコクーン
19日(金) 午後7時 大阪・門真市民文化会館・ルミエールホール
20日(土) 午後2時 大阪・門真市民文化会館・ルミエールホール
23日(祝) 午後1時 福岡・福岡市西市民センター
23日(祝) 午後6時 福岡・福岡市西市民センター

5.チケット

東京
S席¥6,000、A席¥5,000、コクーンシート¥3,000(予約券のみ)
Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999
大阪
前売り¥3,000、当日¥3,500 チケットぴあ 06-363-9999
福岡
前売り¥2,000、当日¥2,500 チケットぴあ 092-708-9999

本資料に関するお問い合わせ
国際交流基金アジアセンター

スタッフ・キャスト

脚本
岸田理生(日本)
演出
オン・ケンセン(シンガポール)
音楽
マーク・チャン(シンガポール)、 ラハユ・スパンガ(インドネシア)
振付
ボーイ・サクティ(インドネシア)、 アイザ・レザ(マレーシア)
美術
ジャスティン・ヒル(オーストラリア/シンガポール)
衣裳
浜井弘治(日本)
照明
原田保(日本)
音響
井上正弘(日本)
道具
小竹信節(日本)
老人、母
梅若猶彦(日本)
長女
江其虎(中国)
次女
ピーラモン・チョムダワット(タイ)
忠義者
ザヒム・アルバクリ(マレーシア)
道化
ナジフ・アリ(シンガポール)
片桐はいり(日本)
老人の音の精霊
マーク・チャン(シンガポール)
長女の音の精霊
半田淳子(日本)
長女の家来
アブドゥル・ガニ (シンガポール)
長女の影法師:野望
ロー・キーホン(シンガポール)
長女の影法師:不測
タン・フークェン(シンガポール)
長女の影法師:虚栄
ジェレマイアー・チョイ(シンガポール)
長女の家来の影法師
リム・ユーベン(シンガポール)、 ベニー・クリスナワルディ(インドネシア)
ジェフリ・アンディ(インドネシア)
地の母たち
アイダ・レザ(マレーシア)、 シャロン・リム(シンガポール)
スハイラ・スライマン(シンガポール)、 ノーリナー・モハマッド(シンガポール)
ジーン・ング(シンガポール)、 シーラ・ワヤット(シンガポール)
演奏
ロジータ・ング(シンガポール)、 ラハユ・スパンガ、ピタマン、スナルディ、
ダニス・スギヤント、スヨト・マルトレジョ(以上インドネシア)

あら筋

 嵐が熄んだ静寂の中、蹌踉とした足取りで一人の老人が現われる。「私は死の眠りを眠っていた。私は誰だったのか?」問いに答えるように、一人の娘が現われる。「私はあなたの長女。私の中には、三人の私がいます。さあ、出ておいて!」長女の三人の影法師  野望、不測、虚栄が現われる。「一人の私は従順、一人の私は清潔、一人の私は無垢。四人の私はいつでも、私の体と心をお父様にお返しします。」
 さらに一人の娘が現われる。長女は言う。「この子はあなたの次女、あなたの愛の残り滓。この子はいつも無言。心の中でどんな悪事を企んでいるかわかません。」次女は無言で微笑んだままである。

 そこへ、女と道化が現われる。女は、老人と二人の娘を見て驚く。「お城の方々は皆、死んだと聞かされていたのに、生きていなすったのかね!」
 長女は老人に言う。「どうぞ忠義者と道化を連れて、楽しい旅にお出かけください。玉座は空けておきます。」老人は、忠義者と道化を連れ、笑顔で旅に出る。老人たちの姿が見えなくなると、哄笑し、戸惑いもなく玉座に座る長女。
 次女は、亡き母に救いを求めると、母が現われ、老人との出会いを歌う。母が貧しい糸紡ぎ女だったことを憎悪している長女は玉座からその様子を見て、「私にはあなたの血など流れていない!」と母を罵倒する。

 王位についた長女はしかし、父が生きている間は安心できないと感じている。そんな長女を家来は唆す。「生者が死者に脅かされるなど、憶病者の言うこと。」長女は父殺しを決意する。

 長女の家来たちは、老人に従う忠義者を捕える。忠義者は、老人をそっとしておいてくれと長女に訴えるが、王の復権を怖れる長女は、家来に忠義者の眼をつぶさせる。
 次女は、父の身、そして姉の陰謀を哀しみ、始めて言葉を使って、「これ以上、父様をひどい目に遭わせないで!」と姉に訴える。そして次女は、子供の頃、父がどんなふうに自分をかわいがっていたかを歌う。その思い出のない長女は、「思い出を殺して!」と叫び、家来に次女を絞め殺させる。「父様を救って」と言い残して死んでいく次女。それと共に、長女の影法師の虚栄が倒れる。「あなたの中の虚栄は死んだ。でもあなたは気づかない。」
 次女の死を知った老人は、憤怒の詩を叫び、激しく舞う。「怒りの神がましますならば 我のこの身に降りてくれ 雷(いかずち)の神よ 我と共に轟け 地を揺るがせ 海を鳴らし 邪悪な娘を怖れさせてくれ!」

 長女の家来は、「あなたと私の時代が来た」とさらに父殺しを誘うが、長女は「私の父殺しは私だけもの。私は私自身の王になる!」と叫び、家来の首を刎ねる。家来と共に、長女の影法師の不測が死んでいく。「あなたの中の不測は死んだ。でもあなたは気づかない。」

 そして長女は、ついに父を刺し殺す。「赤い血潮の雛嬰粟が 私の地獄に咲き誇る我は不幸の子なりけり死んでください  お父さん」
 父を、妹を、家来を亡くした長女は、夜ごと、死者たちの亡霊に悩まされ、眠れない。それでも長女は、自らに言い聞かせる。「私には王国がある。死者が私に何をできると言うの?」しかし、訪れてくる、言い様のない孤独。「孤独・・・・」という長女の呟きと共に、影法師の野望がゆっくりと倒れていく。「あなたの中の野望は死んだ。そしてあなたは、そのことに気づいた。」

 狂気に襲われたかのような虚ろな視線の長女は「母さん、救けて」と呟く。現われた母は、父殺し、妹殺し、家来殺しの罪人である長女を抱き締める。「人は人から生まれ、やがては土に還る。一緒に土に還りましょう。」

主要スタッフ・キャスト プロフィール

オン・ケンセン Ong Keng Sen ・・・・・・ 演出
 1963年シンガポール生まれ。シンガポール大学卒。1986年より、シンガポール最大の英語劇団「シアターワークス」の演出家。次々と代表作を発表し、その新鮮な感覚は"シンガポール演劇"を築き上げる大きな原動力となった。1993年から95年にかけて、ニューヨーク大学で、演劇を通したインターカルチャリズムをテーマに研究。帰国後は、シンガポールに渡ったからゆきさんを野外劇として上演した"Broken Birds"、チャイナ・タウンにある古い商家をまるごと劇場として使い、中国移民・楊一家の辿った時間を観客に追体験させた"The Yang Family"など、空間や身体の様式性を意識した作品が目立つ。今や、アジア演劇の先鋭的存在である。
 海外公演は、日本が、吉田日出子をキャストに加えた「スリー・チルドレン」と、ミュージカル「ビューティー・ワールド」(いずれも1992年)、ニューヨークが"A Language of Their Own(彼ら自身の言葉)"(1994年、於パブリック・シアター)、エジプトのカイロ演劇祭が"Lao Jiu(老九)"(1996年)、オーストラリアのパース・フェスティバルが"Lao Jiu(老九)"(1994年)、英エジンバラ・フェスティバルが"Madame Mao's Memories(毛夫人の思い出)"(1992年)。
岸田理生(きしだ・りお)・・・・・・脚本
 「天井桟敷」で故・寺山修司氏に師事し、「身毒丸」、「レミング」、映画「ボクサー」、「草迷宮」、「さらば箱船」などを共作した後、1983年、劇団「岸田事務所+楽天団」結成。「糸地獄」(1985年)で第29回岸田戯曲賞受賞、「終の栖 仮の宿」(1989年)で紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。「糸地獄」は92年にオーストラリアのアデレード、パース両フェスティバルにも参加、好評を博した。
 1993年に「岸田事務所+楽天団」を解散。昨年は、蜷川幸夫演出によって新版「身毒丸」、今年は同じく蜷川演出で「草迷宮」が上演されるなど、活躍中。「身毒丸」は今秋、ロンドン公演の予定。
 韓国との演劇交流にも力を注ぎ、李潤澤演出、韓国人俳優出演による「セオリ・チョッタ――歳月の恵み」が東京、ソウル、ニューヨーク、サンフランシスコで、同じく李潤澤演出による「旅人たち」が東京、ソウル、釜山で上演されている。
マーク・チャン Mark Chan・・・・・・音楽
 シンガポール生れの作曲家・演奏家。アジアの伝統的な音とポップな感覚を融合した、新鮮なスタイルで、アジアン・ポップスの旗手として内外にファンを持つ。CDに"Face to Face" "Book of Dreams" "China Blue" "Nature Boy" など。「チャイナ・ブルー」と「ネイチャー・ボーイ」は日本でも発売されている。
 オン・ケンセン演出の「スリー・チルドレン」「毛夫人の思い出」「老九」など、劇音楽の作曲でも活躍。中国の笛を始めとするアジアの楽器の名手としても知られ、本公演でも、リアの<音の精霊>として舞台に立つ。
梅若猶彦(うめわか・なおひこ)・・・・・・リア
 観世流シテ方。1958年生まれ。明治維新後の能の衰退を救ったとされる梅若実を曽祖父に、能楽師初の芸術院会員・十二世梅若万三郎を祖父に、戦後の指導的シテ方と言われた梅若猶義を父に持ち、3才の時に「猩々」で初舞台。以来、能の世界に生きる。一方、神戸のカナディアン・アカデミー・ハイスクール、上智大学比較文化学科卒、さらに1991年より94年までロンドン大学で比較演劇学の研究に従事し、博士号取得と、国際派の能楽師としても知られる。
 新作能や英語能の演出・シテも多く、ジェニーン・バイチマン作「漂炎」(1985年つくば万博)、門脇佳吉作「イエズスの洗礼」(1988年、バチカン、ローマ、ベルギー、ブリュッセル等で公演)、加賀乙彦作「安土の聖母」(1991年、国際比較文学会東京大会)、久保田一竹の創作能「辻が花の舞」(1995年、ワシントン・スミソニアン美術館)の演出・シテなど。
 また、ロンドン・アルメイダ劇場の三島由紀夫作「サド公爵夫人」振付、スプリングローデット・ダンス・フェスティバルの"Qui Affinity"の作舞・演出・主演、カナダ・日本合作、アメリカ配給映画"HIROSHIMA"の昭和天皇役出演(同作品は1996年NHKより放映)、など、多方面で活躍。ロンドン大学客員講師でもある。
江其虎(ジャン・チーフー)・・・・・・長女
 京劇俳優。1963年生まれ。京劇の殿堂である中国京劇院(北京)所属。小生(若い二枚目役)のトップ俳優の一人で、国家第一級俳優の称号を持つ。他に、「全国優秀青年俳優コンクール」最優秀演技賞(1987年)、「梅蘭芳金賞コンクール」で同賞(1993年)など、受賞多数。96年に、中国とアメリカの合作によるギリシャ悲劇「バッコス」で国王パンシスと王妃アゴウェを演じ、話題を呼んだ。
片桐はいり(かたぎり・はいり)・・・・・・女
 1982年、「ブリキの自発団」入団。93年に退団するまで、主役を演じる。退団後も、「女たちの十二夜」(1993年、サンシャイン劇場)、「ベンチャーズの夜」(1994~96年全国公演)、「狸御殿」(1996年、新橋演舞場)、「マシーン日記」(1996~97年、全国公演)、「昭和歌謡大全集」(1997年、セゾン劇場)などの話題作他、個性的なキャラクターで、テレビドラマ、コマーシャル、映画でお馴染み。
 本公演で初めて、海外の演出家・俳優たちと組む。
ナジフ・アリ Najip Ali・・・・・・道化
 アジア各国で放映されている人気テレビ番組「アジア・バグース」(日本ではフジテレビで放映)の、数ヵ国語を操る、奇妙な司会者として知られるが、ダンサー、振付、歌手とさまざまな分野で異才を発揮し、シンガポール、ロンドン、東京、アジア各国を飛び回る。
 歌手としてはCD"The Best of Asia Bagus" "Born in Sin" "Oonik"。日本でも今年、ポニーキャニオンより新作をリリース予定。振付では、ディック・リーのミュージカル「ビューティー・ワールド」、「ファンテイジア」など多数。

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