サンパウロ・ビエンナーレ 26回 2.国別参加部門への日本からの参加概要

日本コミッショナー 水沢 勉氏(神奈川県立近代美術館企画課長)(略歴)
出品作家 宮崎 進氏(略歴出品作品)
出品作品 VOICES OF SIBERIA

出品趣旨

水沢 勉氏

作品そのものから発せられる「声」、作品相互が呼び交わす「声」、作者である画家その人の「声」、過去からの、現在の、そして未来からの「声」・・・集ってくる複数の「声」。会場がその綾なす集合体をつくりだす。

宮崎進の作品に触れるとき、その寸法の大小、技法の差異などにかかわらず、私たちは、なによりもまず物体としての作品そのものから発せられる一種の「声」に圧倒される。分厚いドンゴロスの肌触り、こびりついた絵具、飛び散る石膏の飛沫、光を内部に深く沈めたような蜜蝋。それらは一見荒々しく処理されているかのようにみえるが、注意するならば、きわめて周到に「チューニング」され、多彩で、輻輳する「声」を発していることに気づかされる。しかし、そこにこめられた鎮魂の思いによって、「他者」の「声」がそこには混ざっていることも私たちは聞き取ることになる。そして、それはさらに描かれている大地、人間たちの「声」にも広がっていくだろう。多くの声が虚空へと孤独に消え去ったことも、宮崎進の作品は、想起させる力を備えている。これらの無数の「声」に包まれて、私たちは、非人間的なるものを、既成の境界を越えて、あくまでも人間的な態度で直視する、揺るがぬ勇気をあたえられるのだ。

1922年に山口県徳山に生まれた宮崎進は、1967年に《見世物芸人》で第10回安井賞を受賞して、日本での画家としての地位を確立している。しかし、1942年から49年の従軍、シベリア抑留という時間は、この画家に造形的に反芻されるべき多様なモチーフを提供することになった。それはこの画家の途切れることのない地下水脈であり、近年ではそれこそがこの画家の創造にとって最重要な部分として迸り出ている。「声」は、この酷薄な体験を絵画的に反復し、深化することによって、圧倒的な広がりと深みを獲得したのである。

今回の展示では、もっとも過酷な運命に直面した世代を代表する日本人画家のもっとも本質的な部分が語り出される作品が、現在もなお衰えることを知らない創作力を示す新作を中心に展示される。

日本コミッショナー・水沢 勉氏 略歴

1952年生まれ
慶応義塾大学大学院修士課程修了(美学美術史学)
神奈川県立近代美術館学芸員を経て現職

1993年 第6回バングラデシュ・アジア芸術ビエンナーレ日本コミッショナー
1995年 「萬鉄五郎展」キュレーター
1997年 第8回バングラデシュ・アジア芸術ビエンナーレ日本コミッショナー
1998年 「モボ・モガ展」キュレーター(シドニー ニューサウスウェールズ美術館へ巡回)
2003年 「ヴィルヘルム・レームブルック展」キュレーター

著書
『この終わりのときにも』(思潮社、1989年)、『点在する中心』(共編著、春秋社、1995年)、『美術館は生まれ変わる』(共編著、鹿島出版、2000年)、『モダニズム/ナショナリズム』(共編著、2003年)など

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