平成19(2007)年度中高教員交流(招へい)事業 第2グループ同行記 #2

青木 公(ジャーナリスト/筆者紹介

オリエンテーション冒頭の写真
オリエンテーション冒頭

07年12月7日。国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の国際会議場で、26カ国からの85人の教師は3つの組に分けられた。A,B,Cグループの3列の机に着席。席順は、アジア、オセアニア、中南米、西欧、東欧、アフリカと地域別に縦列で。

開講式。基本的な日本の教育事情のレクチャーで、日本勉強の始まりだ。総合司会は、基金職員2年生の三富章恵さん。「時間厳守」で知られる日本流で時間表通り進行させる。

自己紹介の写真
自己紹介

英語が共通言語で、自己紹介は85人が10分間で済んだ。オハヨウと日本語で始め、それから自国語なまりの英語で続ける教師もいて、会議場はなごんだ。

各グループの地方プログラムに随行する職員、世話係りのエスコート、そして筆者ら事業評価委員も紹介された。机の上には、日英対訳の3冊の参考図書が置かれていた。

最初の講師は文部科学省国際課の人物交流専門官、川畑順一氏だ。文科省は英語略称でMEXT、英文25ページの資料をもとに日本語で語り、ひと区切りごとに通訳が分り易いテンポで訳していく。生徒の立場になった諸国の教師たちには、英語力にばらつきがあるからだ。

川畑順一氏レクチャーの様子の写真
川畑順一氏レクチャー

「教育は大きく役立ってきたが、今や環境は変わった」と、教育基本法が60年ぶりに改正され、改革のただ中にあると具体例を挙げて、日本の課題を解説。ニートから不就労者まで、また少子高齢化で学校数は減りつつある、と述べた。

各講義は大学なみに90分。質疑の時間は限られ、司会者は3問に限定した。(1)生徒の成績評価はどうする、(2)時間割や学年暦について、(3)予備校や学校外教育。アジア、中南米、欧州の教師から質問・・・。昼食の時間は迫る。日本流の時間管理術で正午に終えた。

和洋折衷のランチ・ボックス。この招へいプログラムを支える国際交流サービス協会の担当者が、もっとも気を使うところだ。85人のなかで、菜食主義6人、モスレム食の5人には、工夫をこらした別メニューで対応。

ランチの写真
ランチ

エスコートは、食事もそこそこに、午後の講義会場への移動に備える。地下鉄でも移動可の近距離だが、85人がエレベーター、エスカレーター、電車で移動となると・・・貸切バスしかない。

午後の講師は、国際大学(新潟県南魚沼市国際町)の大学院国際関係研究科、ジョン・B・ウェルフィールド教授。在日25年のオーストラリア人。大学近くにそびえる名峰、八海山(はっかいさん)にちなんで「八海山人」と英語で自己紹介。

テーマは「日本現代史」。日本国憲法、軍と民の関係、日本のアイデンティティーと外交について、かなり詳細にレクチャーした。来日教師の多くは、日本の伝統と近代化の共存、経済開発モデル、技術大国に関心がある、と国際交流基金への事前アンケートに答えている。

ウェルフィールド教授の講義は、日本人の筆者が聞いても新鮮なほど。薩長土肥による明治維新、アジアへの侵攻、歴史認識。明治憲法と、新憲法への改憲の動き。聖徳太子から徳川時代に至る広範な内容だった。通訳なしだから濃密で、3問の質問者は、(1)どうしてそんなに長く日本にいるのか、(2)日本の未来は、(3)日本の誇りとは・・・と問いかけた。白熱して5分間、終了時間は延びた。

ジョン・B・ウェルフィールド教授レクチャーの写真
ジョン・B・ウェルフィールド教授レクチャー

国際大学は、日本の企業、団体などが出資して82年開学。在籍者250人の大学院大学で、51カ国の留学生が学び、日本人は少数派。ウェルフィールド教授は、国際関係史ほかを担当している。

日本の教育についての基礎講義は、12月8日も続いた。3人目の講師は国際基督教大学の藤田英典教授。中央教育審議会の臨時委員でもある。英語で、パワーポイントを活用。講義を受ける各国の教師たちには、聴き易いスタイルといえよう。

「80年代から国際的な教育改革の流れがあり、日本は西欧をモデルにしてきた」と。OECDの学力調査での順位低下にも触れ、日本はやや慌てていると述べた。自分(教授)は、政府による改革には批判的な立場にある、とレクチャーを進めた。

藤田英典教授レクチャー後の写真
藤田英典教授レクチャー後

これまで日本の教育システムが比較的うまくいった理由、どう改革しようとしているかを、パワーポイントを効果的に使って分析。公立校と私立校の競合、英語教育、学校外教育(学習塾)にも触れ、「改革の担い手は、教師である」と持論で締めくくった。先進国からの一部の教師は、立ち上がって拍手を送った。

質疑の時間が25分あるので、5問。(1)生徒同士、生徒による教師への評価について、(2)なぜ日本は生徒、学生の犯罪率が低い、(3)国際学力テストでフィンランドの好成績をどうみる、(4)教師の社会的地位と労働条件、(5)地域社会との連携、政治の人事介入。

3人の内外の講師の人選は妙をえていた。2日間の講義は終わった。さあ、修学旅行だ。羽田空港へのバス3台に飛び乗った。

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