平成19(2007)年度中高教員交流(招へい)事業 第2グループ同行記 #5

青木 公(ジャーナリスト/筆者紹介

学校訪問:概要説明の写真
愛媛県立松山東高校訪問:概要説明

松山市と隣接の東温市で、Cグループ29人は四つの学校で教育現場を訪ねた。それぞれの対応と反応は後述するが、愛媛県立松山東高での教育交流は充実していた。

07年12月12日午後、松山東高の栗田正己校長らと、29人の来日教師は通訳を通して質疑、対話。1時間以上になった。

西欧とオセアニアの6カ国の男女教師が質問後、「あなた方(松山東高)からの質問はないですか」と若手の西欧の教師から逆質問が飛び出した。栗田校長は即座に応じて八つ質問、興味深いやりとりとりになった。例えば―

聞き入る訪日教師の写真
聞き入る訪日教師

栗田校長「今回、大学入試を控えている3年生のクラスの見学は、ご遠慮いただいたが、本校では自宅での1日の学習時間は1,2年生で180分、3年生は330分と指導している。(『ホーッ』と、来日教師から驚きの声)みなさんの国では、どうですか」
-「イギリスでは2時間、大学入試前は4時間、もっとやるようにしたい」
-「オーストラリアは各州で違う。私立と公立でも異なる。試験前は2~3時間、中学は30分でしょう。ミッション系は宿題ばかりでなく、地域奉仕も重んじる」
-「イタリアの公立校の科学の教師だが、授業は月~金で、朝8時半~14時半まで。宿題は書いて提出するものは、2教科以上は出さない。学力で競うよりも、年間テーマを決めてやるのがよいのでは・・・」
-「クラブ活動を興味深く見せてもらいましたが、インドでは夏休みにやります」
栗田校長「教育もグローバリゼーションに直面している。教養的な教育と、実践的で役立つ教育と、どちらがよいのでしょう。みなさんの国ではどうですか?」
-「イギリスもオーストラリアのように多民族・多文化社会に変わり、教師は忍耐力を持ってグローバリゼーションに対応しなければならない。義務教育とともに職業訓練は重要だ。特にITに対する認識は欠かせない」
-「私たちはアメリカ化している。スペイン、アメリカ、ドイツ、日本などの統治の影響を受けている。政府は5年計画で自分たちの文化、ミクロネシア文化重視の教育を目指している」
松山東高側は英語担当の教師が同席。藩校以来130年の伝統あるこのエリート校では、英語力のある教師が国際交流の窓口になっていることを示していた。ノーベル文学賞の大江健三郎氏の出身校だが、源氏物語は知っていても、大江文学を分る来日教師はいなかった。

質疑応答の写真
質疑応答

この教師同士の話し合いは、授業やクラブ活動の見学の後に行なわれた。現場の見聞をもとにした質疑となって、内容が濃かった。

これに先立って、当日午後の通常授業の参観案内図が、来日教師に手渡された。「教室後方から入って下さい。写真は自由。生徒と話してもかまいません」という自由解放式だった。大方の教師は、エスコートと通訳と共に見て回ったが、自分の関心あるクラス、施設に直行する教師もいた。筆者は個別組について回った。地学、科学の2教師は、英語が苦手で、全体の日程ではやや孤立気味だったが、地学のクラスに入ると、水を得たように生徒に接して、地球の南北と東西の大きさの差を計る実習では、うまく出来ない生徒の手をとって、計測をやってみせた。実験機材や、教師の準備室にカメラを向けて、「うちの学校にもほしいものばかり」と言った。

教室視察の写真
教室視察

書道クラスは人気の的だったが、個別に参観した教師は、漢字と平仮名、中国の有名書家の文字の違いを、書道教師から細かく聞き出した。

折からの雨のなか、スポーツ施設に興味をもった教師は、プール、体育館に足を運んだ。ロシアの教師は高校では給食がないのを知って、飲料の自販機が整備されているのと、その前にカンやビンの分別収集箱が置かれているのに関心をもち、「わが国とは違うなあ」といった表情、また、アジアの女性教師は養護室でカウンセリングの状況を質問、と多様な行動を見せた。29人の集団行動では果たせない、貴重な現場学習の実例となった。

クラブ活動視察の写真
クラブ活動視察

観光名所にもなっているキャンパス内の和風の資料館、明教館の茶室などの施設見学では、国際交流部(クラブ活動)の生徒が活躍、「部員は男女数人ですが、それなりにやってますよ」と、リーダーは慣れた対応。生徒も参加の教育交流だった。

この後、先述した栗田校長らと教師間の対話となるのだが、気になるのは、質問や発言者が英語理解力の高い個人や地域に限られることだ。日本修学旅行の参加条件のなかに、英語能力があるのだが、国際交流基金のアンケート調査票で、Good, Fair, Poor(最上はExcellent)と記した教師は、やはり英語で質問しにくいのだろう。各学校への訪問で、中南米やCIS地域から来た教師には、質疑に耳を傾けるだけの場面が少なくなかった。

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