第13回バングラデシュ・ビエンナーレ

米田知子「地雷原 - 地雷が埋められたサッカー場、サラエボ」の写真 米田知子
「地雷原 - 地雷が埋められたサッカー場、サラエボ」
(『Scene』シリーズより)
2004年/C-Type Printed.5
courtesy SHUGOARTS (c)Tomoko Yoneda
須田悦弘「雑草」の写真 須田悦弘
「雑草」
2008年/painted on wood
courtesy Gallery Koyanagi (c)Yoshihiro Suda

アジアで最も長い歴史を誇る国際展
アジア、アフリカ、南米、太平洋地域の国が参加
日本からは、米田知子と須田悦弘が参加。コミッショナーは、植松由佳
テーマは、「場が物語るもの」

全体概要

会期 2008年10月21日火曜日 から 11月19日水曜日
会場 オスマニ記念ホール、バングラデシュ・シルパカラ・アカデミー、バングラデシュ国立博物館
主催 バングラデシュ・シルパカラ・アカデミー

1981年にアジア14カ国の参加を得て開始された現代美術の国際展です。バングラデシュ文化省所属の国立美術・舞台アカデミーである、バングラデシュ・シルパカラ・アカデミーが主催し、これまで、ほぼ2年ごとに開催され、現在では、アジア以外の地域も含む40以上の国・地域からの参加があります。(日本からの参加実績)

日本からの参加の概要

コミッショナー 植松由佳 (国立国際美術館主任研究員)
テーマ 「場が物語るもの」
出品作家 米田知子須田悦弘
主催 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
助成 財団法人 朝日新聞文化財団

場所の持つ記憶を浮かび上がらせる写真を制作する米田氏と、展示する場所も含めた作品制作にこだわる須田氏。二人の作品には、技法や素材の違いはあるものの、鑑賞者が見ているようで見ていない対象の存在を、はっと気づかせる契機が含まれているという点で共通項があります。今回、二人の作家は、バングラデシュ・ビエンナーレのため、新作を発表いたします。

米田氏は、バングラデシュという場所が有する歴史、そして記憶を徹底的にリサーチ。独立戦争という過去と地球温暖化が一因としても考えられている大きな水害を現在として対比させ、撮影した場所、そこに住む人々、そして鑑賞する人々の記憶を喚起する作品を制作いたします。また、須田氏は、現地調査を行ったうえで、バングラデシュ及び会場の雰囲気、佇まいを踏まえた新作彫刻を発表する予定です。

「場が物語るもの」をバングラデシュの鑑賞者がどのように受け止めるのか―。現地での反響が楽しみな企画となっています。

展示コンセプト

「場が物語るもの」 植松由佳

米田知子は、心理学者フロイトや日本人小説家谷崎潤一郎等の歴史上の人物たちが実際に使用していた眼鏡越しに、その人物ゆかりの文章や本を撮影した作品「Between Visible and Invisible」シリーズで知られるように「歴史」や「記憶」をテーマに制作を続けている写真家である。「Scene」シリーズでは、一見すると何の変哲もない海辺や市街地の光景が撮影されているが、その場所も戦場などかつて歴史的な事件の舞台となった現場が選ばれている。鑑賞者は何気ない光景に添えられたタイトルを読むことで、その美しさをたたえた場所にかつて生じた出来事を理解する。つまり歴史的な時間や記憶がその場所に流れていることを語りかけてくるのである。

美術家の須田悦弘は朴(ほお)の木を素材として、路傍にある雑草や美しく咲くバラ、椿の花といった植物を本物と見間違うかのように精巧に削り、木彫作品を制作している。その木彫作品が持つリアルさという特徴はもちろんのこと、須田が展示空間をも含めて作品としていることも重視しなければならない点である。熟慮の結果意表を突かれる場所に展示されることもあれば、時には鑑賞者が作品を探さなければならないこともある。鑑賞者はその行為を通じて、作品のみならず、作品が展示された空間も改めて認識することになるのである。

私たちは日常生活においていったいどれだけのことを見過ごしていることか。それは視線を送った先にあるのに気づかなかったもの、あるいは急き立てられるような普段の暮らしの中で、何ものかに眼差しを送るということすら滞りがちになっているのかもしれない。米田と須田による作品は、写真と木彫作品のインスタレーションという技法や素材の違いはあるものの、鑑賞者が見ているようで見ていない対象の存在に気づくよう誘う点で共通している。米田の写真に呈示された場所と須田の作品により露にされた展示空間という場所は、異なる種類の場所ではあるが、鑑賞者がその場所を認識することで作品との対話をより深めることができる。

今回の二人の作家はバングラデシュにおける場所―米田は写真の対象としての場所、須田は展示する場所―が私たちに語りかけるものを作品に呈示している。作品を通して語る言葉を私たちがいかに受容するか。その対話の内容が楽しみである。

出品作家について

米田知子(よねだ ともこ / 1965年生まれ、ロンドン在住)

「歴史」や「記憶」をテーマに制作を続けている写真家。イリノイ大学シカゴ校、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)で写真を学び、1990年代初めから作品の発表をはじめる。日本では1999年の「VOCA展」(上野の森美術館)、2001年「手探りのキッス:日本の現代写真」展(東京都写真美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)への出品や個展開催、また2005年横浜トリエンナーレ、2007年のベネチア・ビエンナーレ、イスタンブール・ビエンナーレ等への出品により高い評価を得ている。代表的な作品「Between Visible and Invisible」シリーズでは、フロイトや谷崎潤一郎等の歴史上の人物が実際に使用していた眼鏡越しに、その人物ゆかりの文章や本を撮影。また「Scene」シリーズでは、過去に戦争などで負の記憶を背負った場所の、現在では一見何の変哲もない風景を撮影し、風化されてしまったかのように見える過去の記憶を、写真を通じてもう一度浮かび上がらせようとする試みを続けている。
原美術館で大規模な個展「米田知子展―終わりは始まり」を開催(2008年9月12日~11月30日)。

須田悦弘(すだ よしひろ / 1969年生まれ、東京在住)

木彫に彩色を施し、まるで本物の植物のような彫刻を展示するアーティスト。多摩美術大学卒業後、1993年銀座の路上に設けられたコインパーキングに自作のリヤカー型作品を設置した「銀座雑草論」で一躍注目を浴びる。以後、国内外での美術館や国際展への出品も多く、2006年には個展「須田悦弘展」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)、「三つの個展」(国立国際美術館)が開催された。
何気ない雑草や美しく咲くバラ、椿の花といった植物を本物と見間違うかのように精巧に木を削り制作した作品は、その木彫作品が持つリアルさという特徴はもちろんのこと須田が展示空間をも含めて作品としていることも重視しなければならない。須田が熟慮した展示は、時に作品がどこに展示されているのか観客が探さなければならないほどである。木を彫るという技術の高みを目指し生み出された本物そっくりの木彫の植物を展示することで、その展示空間全体を作品へと変質させ、見過ごしていた空間を意識させようとしている。
熊本市現代美術館でグループ展「メモリア―まなざしの軌跡」を開催(2008年7月19日~10月19日)。

コミッショナーについて

植松由佳(うえまつ ゆか / 国立国際美術館主任研究員)

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館/財団法人ミモカ美術振興財団勤務を経て2008年10月より現職。主な企画担当展に「ピピロッティ・リスト:ゆうゆう」展(2008)、「エイヤ=リーサ・アハティラ展」(2008)、「マルレーネ・デュマス - ブロークン・ホワイト」(2007、東京都現代美術館との共同企画)、「須田悦弘展」(2006)、「やなぎみわ 少女地獄極楽老女」展(2004)、「マリーナ・アブラモヴィッチ -The Star-」展(2004、熊本市現代美術館との共同企画)、「草間彌生展 Labyrinth-迷宮の彼方に」(2003)、「ヤン・ファーブル」展(2001)、「Isamu Noguchi & Issey Miyake ARIZONA」展(1997)など他多数。

米田知子「谷崎潤一郎の眼鏡 - 松子夫人への手紙を見る」の写真 米田知子
「谷崎潤一郎の眼鏡 - 松子夫人への手紙を見る」
(『Between Visible and Invisible』シリーズより)
1999年/Gelatin Silver Printed.5
courtesy SHUGOARTS (c)Tomoko Yoneda
須田悦弘「葉」の写真 須田悦弘
「葉」
2007年/painted on wood
courtesy Gallery Koyanagi (c)Yoshihiro Suda

[お問い合わせ]

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
芸術交流部造形美術課
電話: 03-5369-6062 ファックス: 03-5369-6038
担当: 高取、鈴木

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