ヴェネチア・ビエンナーレ 国際美術展 54回

束芋:てれこスープ
teleco-soupの画像
Credit:
Tabaimo “teleco-soup” (still) 2011, Video installation, 5'27" loop
(c) Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi and James Cohan Gallery

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)では、この度6月4日から11月27日までイタリアで開催される第54回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展日本館において、コミッショナー植松由佳(うえまつゆか)氏のもと「束芋:てれこスープ」展を開催いたします。

今回の日本館出品作家であり、国内外で活躍する束芋(たばいも)は、そのデビュー作 《にっぽんの台所》(1999)で一躍注目を集め、昭和初期の特徴的集合住宅である団地、その生活の中心の場所であった台所を舞台に、社会的モチーフを残酷なほど淡々とアニメーションにより描き出した映像インスタレーションで、作家としてのドアを大きく開け放ちました。

本展で発表する作品は、ひとつの映像作品というだけではなく、多数のプロジェクターと鏡とを使用し、吉阪隆正設計によって1956年に完成した日本館建築の特異な構造と一体化した映像インスタレーションとなります。束芋により名付けられた本展のタイトル「てれこ」とは、物事が逆転すること、あべこべのという意味を持ち、「スープ」には生命体が発生する液体のイメージが強調されています。日本館内と階下のピロティ部分に映像インスタレーションによる天空と水中の世界が展開しますが、それが逆転することで、あらゆるものに存在する境界はあいまいなものとなり、我々の価値観に揺さぶりかけます。

本展は、日本のメディア芸術の特徴的表現方法の一つであるアニメーションを、「ガラパゴス化」の中で精製しグローバル化にも成功した作家束芋の、現代社会や人間の深層を突く映像インスタレーション作品により、「超ガラパゴス化現象」の可能性を見いだそうとするものです。ガラパゴス化現象を否定するのではなく、そこからの脱却を目指すよりも現代日本に生きる私たちがその独自性を追求しつつ、海外の文化に触れ、やがては外界/他者への往還を果たしガラパゴス化現象を「超え」ようと試みています。

日本館の展示に際して束芋は、「井の中の蛙大海を知らず」という荘子のことわざに、後に日本で付加された「されど空の高さを知る」と続く一文を含め、キーワードとしてインスパイアされました。多数のプロジェクターと鏡が用いられた館内は井戸として、そしてピロティ部分は井戸から見える空として構築されています。映像のモチーフは、館内では身体を形成する微細な細胞に始まり、周辺に溢れる社会環境に繋がる象徴的なイメージが流れることにより、束芋自身そして現代日本に生きる我々の姿や日常生活、そして社会そのものが描き出されます。

「井戸の中の蛙が住む世界は本当に狭いのか?」という問いかけをもって、鏡とスクリーンによって壁一面を覆うイメージの連続性が、現代日本という井の想像以上の広がりを認識させます。またその世界は、中心部の床に存在する開口部を井戸の孔口として、そこから下方に広がるピロティ部分が、空の果てしない深さ/高さにも繋がるという反重力的な展開により、内と外の関係性にゆらぎを生じさせ、鑑賞者を自由に解き放ちます。館の内外からも鑑賞できる井戸の形状をした空は、入れ子状の存在として、内外の往還を果たそうとしています。

各国パヴィリオンが立ち並ぶヴェネチア・ビエンナーレ開催会場のジャルディーニは、まるで世界地図の縮図のようでもあります。その中に位置する日本館で束芋により展開される現代日本社会の様相が館内からピロティ部分へ、そして屋外へと広がり、どのように世界につながるか。日本館で開催される「束芋:てれこスープ」をどうぞご期待下さい。

ヴェネチア・ビエンナーレ概要

開催期間 2011年6月4日 土曜日 から 11月27日 日曜日
10時から18時、月曜休(ただし、6月6日、10月31日、11月21日をのぞく)
国別参加展 ジャルディーニ(Giardini di Castello)地区ほか
企画展 アルセナーレ(Arsenale)地区ほか
主催 ヴェネチア・ビエンナーレ財団
総合ディレクター ビーチェ・クリガー(スイス・チューリヒ・クンストハウスキュレーター、現代美術専門誌「Parkett」編集、創始者の一人、現在ロンドン・テートギャラリー「Tate etc」編集長)
総合テーマ ILLUMInazioni – ILLUMInations
公式HP http://www.labiennale.org/it/Home.html

日本館展示概要

開催期間 2011年6月4日 土曜日 から 11月27日 日曜日
10時から18時、月曜休(ただし、6月6日、11月27日は開場)
※8月23日は会場メンテナンスの為、日本館は休館いたします。
主催 独立行政法人 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
会場 ジャルディーニ地区内にある日本館。吉阪隆正による設計で、1956年に竣工。
(所在地:Padiglione Giapponese Giardini della Biennale, Castello 1260, 30122 Venezia
コミッショナー 植松 由佳(うえまつ ゆか)
出品作家 束芋(たばいも)
特別助成 財団法人 石橋財団
特別協力 NECディスプレイソリューションズ株式会社
協賛

京都造形芸術大学 / 福武總一郎 / 公益財団法人 大林都市研究振興財団 / 伊藤澄子

日本館HP http://www.jpf.go.jp/venezia-biennale/

Blog公式ブログ「地球を、開けよう。」では、本事業に関する情報を掲載しています。

作家略歴

束芋氏の画像束芋(たばいも)1975 年兵庫県生まれ。現在長野県在住。1999 年京都造形芸術大学卒業。 1999 年、大学の卒業制作として制作した映像インスタレーション«にっぽんの台所»がキリン・コンテンポラリー・アワード1999最優秀作品賞受賞。主な個展に2003 年東京オペラシティ・アートギャラリー、2006 年原美術館(東京)、カルティエ現代美術館(パリ)、2010 年シンガポール・タイラー・プリント・インスティテュート、パラソル・ユニット(ロンドン)、「束芋:断面の世代」横浜美術館、国立国際美術館。2001年第1回横浜トリエンナーレ、2002年サンパウロ・ビエンナーレ、2006年シドニー・ビエンナーレ、2007年ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア館)など国際展やグループ展への参加多数。また随筆や本の装丁など、さまざまなジャンルでその才能を発揮している。新聞小説の挿絵をもとに構成した絵本「惡人(あくにん)」(朝日新聞出版、2010年7月)を出版。

コミッショナー略歴

植松 由佳 (うえまつ ゆか)
香川県生まれ。1993年より丸亀市猪熊弦一郎現代美術館勤務を経て、2008年10月より国立国際美術館主任研究員。主な企画担当展に「束芋:断面の世代」(2010、横浜美術館との共同企画)、「ピピロッティ・リスト:ゆうゆう」(2008)、「エイヤ=リーサ・アハティラ展」(2008)、「マルレーネ・デュマス―ブロークン・ホワイト」展(2007、東京都現代美術館との共同企画)、「須田悦弘展」(2006)、「やなぎみわ 少女地獄極楽老女」展(2004)、「マリーナ・アブラモヴィッチ -The Star-」展(2004、熊本市現代美術館との共同企画)、「草間彌生展 Labyrinth-迷宮の彼方に」(2003)、「ヤン・ファーブル」展(2001)、「Isamu Noguchi & Issey Miyake ARIZONA」展(1997)など。第13回バングラデシュ・ビエンナーレ日本参加コミッショナー、京都造形芸術大学非常勤講師。

ヴェネチア・ビエンナーレ(Biennale di Venezia)について

イタリアの島都市ヴェネチア(ベニス)の市内各所を会場とする、 芸術の祭典です。1895年に最初の美術展が開かれて以来、100年以上の歴史を刻んでいます。今では、世界各地で諸芸術の国際展覧会が開催されていますが、ヴェネチア・ビエンナーレはそれらの元祖にあたる存在です。現在、ヴェネチア・ビエンナーレには、国際映画祭、国際美術展、国際建築展、国際現代音楽祭、国際演劇祭、国際コンテンポラリー・ダンス・フェスティバルなどの部門がありますが、中でも美術展は、現代美術の最先端の状況を発表するものとして、ビエンナーレの中心的存在です。その名のとおりほぼ隔年のペースで開催され、各回ごとにビエンナーレ財団から任命された総合ディレクターが総合テーマを設定し、独自の企画展を実施するとともに、各国が自国のパヴィリオンや島内の会場などに、気鋭のアーティストを送り込んで出展しています。2009年の第53回展には、77カ国が参加し、約37万人が足を運びました。

[お問い合わせ]

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
文化事業部造形美術チーム 担当:金子美環
〒160-0004 東京都新宿区四谷4-4-1
Tel: 03-5369-6062 Fax: 03-5369-6038
広報担当:平昌子 E-mail

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